第7話 お金の元を狩りに行こう!

 アオイと別れた私は、街の見学をすることにした。まずは街全体の把握からかな。とりあえず城壁の上から、どういう風に出来ているのかを確認しよっと。


 え~っと、崖の上から見た感じだと、この街は湖の中に、伊豆半島みたいな形で出っ張っている場所に出来ていたね。あ、あくまでも形が伊豆半島に似ているってだけね。大きさは本物の伊豆半島と比べるとすごく小さい。


 それで、私の今いる城壁は、伊豆半島の根元のくびれ部分、沼津~熱海にかけてのライン付近に作られている。そんな城壁には、3つの門が付いているんだけど、私が今いるのは真ん中の門の上だ。


 私のいる真ん中の門から北側を、つまり街の外を見ると、私が来た大きな崖がちらっと見える。改めて考えると、あんな遠くから1時間もかけずにこれるって、イージーにゃんこライフボディが凄すぎるね。


 今度は南側を見てみる。門のすぐ内側は、いわゆる門前広場になっていて、結構広いスペースが確保されている。そして、南に伸びる大きな道路の先には、大きなお城が建っている。お城の建っている場所は、伊豆半島に例えると石廊崎のあたりかな。優雅とか豪華っていう単語が似合わなそうなごっついお城だ。もしかしたらお城じゃなくて、要塞なのかもしれない。


 道路の左右には、お店っぽい石造の奇麗で大きな建物が多いから、きっとこの道がこの街のメインストリートなのだろう。


 そして、私のいる場所の東西を見ると、当然城壁が伸びている。どちらに行こうかな~、よし、東から行こう。


 城壁の上を歩いて、私は東へ行く。城壁の左右には、西洋のお城なんかでおなじみの、凹凸の付いた壁がずらっと並んでいる。それと、門と門の丁度中間あたりに、城壁が丸くなっている場所があって、そこに大砲みたいなものがある。外から見えた大砲はきっとこれだね。ただの大砲なのかよくわかんないけど、とりあえず今は私に関係ないのでスルーだ。


 その後も城壁の上をてくてく歩いていたんだけど、あっさり東の端に到着した。東の端は、湖の上だ。どうやら、湖の中にちょっと入るくらいのところまで、城壁が造られているようだ。


 東門からも一応北側をチェックしたけど、基本的にこの城壁は東西に伸びてるだけの城壁なので、北側の景色は変わらない。でも、南側の景色はちょっと違うね。中央の門から南に伸びる道は、真っ直ぐにお城まで伸びていたのに対して、東門から南に伸びる道は、湖のほとりの港沿いに伸びている。それと、中央の道路沿いは奇麗で大きなお店みたいな建物が多かったことと比べると、こちらの街並みは、何というか、下町感があるというか、田舎っぽいというか、そんな感じだ。


 最後に西側もチェックだ。西側も基本的には東側とあんまりかわらない。でも、西側のほうが、東側よりちょっとだけ都会っぽい感じがするかな? 日本でも、商店街になっている賑やかなメインストリートがあって、その周囲に住宅街があるっていう場所は多かったし、きっとこの街の構造も、そんな感じなのかな。


 さて、まだまだ夕方までは時間があるけど、どうしようかな。気になる建物はお城だけど、寝過ごしても悪いから、そろそろお昼寝をしようかな。


 私はアオイと集合の約束をした、真ん中の門の上でお昼寝することにした。ん~、日が当たってすごく気持ちいいね





 ぺしぺし。ぺしぺし。


 ん~、だれ? 淑女の顔を叩くなんて、失礼ね。


『いや、こんなところでへそ天で寝てて、淑女っていわれてもな』

「にゃ!?」

『やっと起きたか、声掛けても起きなかったさくらが悪いんだぜ?』

『あ、アオイ。おはようございます』

『おう、おはよう』


 どうやら私は仰向けで寝ていたようだ。猫は仰向けであんまり寝ないでしょって? しょうがないじゃない。私は元は純粋な人間なんだから。それに、この世界で目覚めた時も仰向けだったから、きっとこのキジトラボディは、そういう寝方が向いているのよ。


『寝起きだけど、動けるか?』

『大丈夫! 狩りだよね? 行く行く!』


 へそ天で寝るのが、猫的に恥ずかしいことなのか私は知らないけど、アオイがなんか気まずそうだし、ここは話題を変えることを優先すべきだろう。


『じゃ、遠慮なく出発するぜ。付いてきな!』

『うん』

『え~っと肉屋の門番はっと、見つけたぜ。じゃあ、降りるぜ!』


 アオイはそう言うと門の上から地面目がけて飛び降りた。ええ? ここ20mくらいあるんだけど!


「うわ~! 俺の頭に、俺の頭に~! って、アオイてめえこの野郎、やりやがったな!」

『あっはっはっは! 頭上がお留守だぜ、門番さん!』


 どうやらアオイは門番さんの頭に着地したみたいだ。門番さんは兜をしていたから怪我はしてないと思うけど、男の子のノリって付いていけないね。私は空中歩行でまったりと降りていく。


「にゃ~!」

「おいおい、マジか!? アオイのガールフレンド、空中歩行が使えるのかよ!?」


 とりあえず空中から挨拶してみたんだけど、やっぱり空を歩けるのって、変わってるみたいだ。今後は使う時注意しないとだね。


『よし、さくら、行くぜ!』

『うん』


 私はアオイについて森に入る。


『今日はとりあえず北に行くか。獣系のモンスターがいたら狩るから、教えてくれ!』

『うん!』


 森の中を走ること10分。早速アオイが獲物を発見した。


『さくら、獲物だ』


 アオイが見つけたのは、角の生えたウサギだ。でも、崖の上で私が食べていたのと比べると、だいぶ小さい。崖の上のは1m以上の大きさだったのに、これは30cmくらいだ。しかも、角も禍々しく捻じれてなくて、普通に尖がっているだけだ。これじゃあ普通のウサギに角が生えただけだね。


『やれるか?』

『うん』

『じゃ、やってみろ』


 私はアオイに言われた通りに角ウサギを仕留める。首をスパッと一撃だ。よくよく考えると、日本人のメンタル的にはかなり厳しいことなんだろうけど、猫ボディのときは猫の本能に引っ張られるのか、罪悪感が全然ない。むしろ、狩りが成功したことによる、高揚感すらある。


『見事だな。ってそりゃそうか、生肉食ってたってことは、その辺の獲物仕留めてたってことだもんな』

『うん!』

『じゃ、こいつを持って帰るか。サイコキネシスはどのくらいのものまで動かせる? 丸ごと持って帰れるなら丸ごとでよし、もし無理なら、値段の高い角を持って帰るのがおすすめだ』


 私はサイコキネシスを発動する。このくらいなら、まるまる持ち上げても平気そうだ。


『大丈夫、全部持っていけそう』

『お、なら大丈夫だな。あとそうだ、水魔法か氷魔法は使えるか?』

『うん、どっちも大丈夫』

『なら、サイコキネシスで浮かせた後、この場で獲物を水魔法で洗っちまえ、んでその後氷魔法で凍らない程度に冷やせ。それで最後に、氷の入れ物を作ってその中に獲物を入れるんだ』


 私は言われた通りに水魔法で獲物を洗って、氷魔法で凍らない程度に冷やす。そして、氷魔法で氷の箱を作って、その中に入れる。


『すげえじゃん。完璧だぜ』

『なんでこんなことをするの?』

『それはもちろん、肉を高く買い取ってもらうためさ。水魔法も氷魔法も下手なやつらは血抜きとかをするんだけど、一番いいのはとにかく冷やしてさっさと持って帰ることだ。覚えとけ』

『へ~、アオイって物知りなんだね!』

『こんなの常識だっての。じゃ、帰るか。帰ったら早速こいつを売って、買い物しようぜ!』

『うん!!』


 私とアオイは街に戻る、この後はついにお買い物だ。テンション上がっちゃうね!


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