第5話 街に行きたい!

 さて、捻挫も治ったことだし、ここは人間の街を探すためにも、周辺の探索に出ようかな。幸い、朝起きてからランニング30分と森歩き3分、それに休憩と捻挫とのバトルしかしてないから、まだまだ時間的には十分朝だしね・・・・・・。


 となると、問題はどういう風に探索するかだ。まったく自慢にはならないけど、私はこの森の中を10分も歩けば、ここに戻ってこれない自信がある。いや、猫ボディになれば大丈夫かな? そうだよね、最初のバチバチ鳥はともかく、角ウサギは森の中に入って倒したんだし、イージーにゃんこライフな猫ボディなら、迷うなんてことにはならないだろう。そうと決まれば、とりあえず猫の姿になるかな。


 ぽふん!


 うん、大丈夫だね。さっきまでぜんっぜん記憶になかったけど、猫ボディになったとたん、今まで行ったことがある場所の情報が、理路整然と頭に入ってきた。角ウサギを仕留めた場所だって、バッチリわかる!


 流石はイージーにゃんこライフボディだ。一度行っただけの場所が、こんなにもハッキリわかるなんて。でも、これなら遠出することもきっと出来る。


 それじゃあ、どっちに向かって探索しようかな。ここは、やっぱり南に行くべきかな? 日本でも、東西南北どの方向に街が多いのかって考えたら、何となく南側の印象だしね。というわけで、今日は南側に向かうことにしよう。時間は、何の手掛かりも無くても、お昼になったら引き返そうかな。


 うん、完璧な計画だ。じゃ、早速出発しようかなって思ったんだけど、ふとポーションが入ったままのすり鉢が目に入った。私はすり鉢をサイコキネシスで引き寄せる。


 量がよくわかんなくて、結局すり鉢いっぱいのポーションを作っちゃったから、まだまだいっぱい残ってる。う~ん、ここには戻ってくる予定だから、ここに置いておいてもいいのかもだけど、せっかく作ったのだし、何かあった時に役に立つかもしれないから、出来ることなら持っていきたいな。


 そういえば、猫の姿になるときに、あのキジトラ柄の迷彩服がどこかに消えるんだから、服をしまっておくなにかがあるんじゃないのかな? 出来ればそこに入れて、このポーションも持っていきたいんだけど。


 そう思っていろいろと試してみたけど、うんともすんとも言わない。人間の姿でならともかく、このイージーにゃんこライフな猫ボディでダメとなると、この世界にはゲームのような、アイテムを何でも入れれる便利機能の類はないのかもしれない。じゃああの服は何なんなのって思うけど、あの服ってキジトラ柄なんだよね。十中八九あのキジトラさんが作った服だ。キジトラさんは、このイージーにゃんこライフボディを私にくれた張本猫だし、キジトラさん製と考えたら、何でもありな気がしてきた。


 便利なアイテム収納機能に関しては諦めるとして、そうすると、あとは口で咥えて持っていくか、サイコキネシスで持っていくかの二通りしかないか。う~ん、ここは残念だけど諦めよう。とりあえず、ポーションのすり鉢には蓋を魔法で作って密閉して、寝床の桜の木の上に保管しておくことにしようかな。


 さて、他に忘れていることはないかな? ごはんは、昨日いっぱい食べたし、無理に食べなくてもいいね。もし移動中に何かいたら、それを食べるのもありかな。水は、とりあえず池の水をいっぱい飲んで行こう。


 ぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろ。


 なんでだろ? いくらでも飲めちゃうな。そういえば、バチバチ鳥も角ウサギも、どう考えても私自身の体積より大きいのに、余裕で食べれたんだよね。よくよく考えれば、食べたものがどこでどうなっているのか不思議だけど、深く考えるのは止めよう。キジトラさんの印の、このイージーにゃんこライフボディのことに関しては、考えてもきっと答えが出ない。


 さ、これだけ飲めば水の心配も無いね。それじゃ、街へ向けて、今度こそ出陣だ! 私は森の中を南へ走る。途中で出会った角ウサギを仕留めて朝ごはんを取り、順調に森の中を疾走する。


 そして、小1時間くらい走り続けた私の目の前に、突如森の切れ目が現れた。


 やった! ついに森の終わりだ。道路とかあったらいいな。


 私は森の切れ目へと近づくと、邪魔な低木を思いっきりジャンプして飛び越えて、道路へと飛び出した!


 って言いたかったんだけど、なにこれ、すっごい景色がいい。まさに大パノラマだ! 足元だって、高いところにあるガラス床みたいにすけすけだ。風もびゅ~びゅ~吹いている。


 っていうか、ここって崖!? 違う、空中だ! だって、足元にあるはずの地面が、すっごく下に見えるし。


「みぎゃ~!」


 落ちる落ちる落ちる落ちる~!


 止まって止まって止まって止まって~!


 すたっ。


 せ、せーふ。私は恐る恐る下を見てみるけど、私の体は空中に静止している。これ、いわゆる空中歩行っていう技なのかな? なんにせよ落ちなくてよかった。ここにそのままいるのは少し怖いので、崖の上まで一度戻る。私は高所恐怖症の類じゃなかったはずだけど、いまのはもし下まで落ちてたら、一発で高所恐怖症になってもおかしくない体験だった。


 改めて崖の上から大パノラマを楽しむ。空中を歩けるとわかると、崖の端っこギリギリでもあんまり怖くないね。


 崖の下にも広大な森が広がり、奥には山も見える。そこそこの大きさの河も何本か流れ、その河達は一箇所に集まって湖を作っている。そして、湖からは大河となって南へと流れていっている。きっとあの先に海があるのかな? 


 ついつい大パノラマに見とれていたけど、私の猫アイはその超重要施設を見逃さなかった! そう、湖の湖畔には、街がある。大事なことなのでちゃんと何回も確認しよう。やっぱり間違いない、街がある! 街は高い城壁に囲まれている、城塞都市っていうやつみたいだ。この辺は剣と魔法の世界の定番だね。


 まさかこんな簡単に街を発見できるなんてちょっと思わなかった。これはきっと、キジトラさんが配慮してくれたのかな? 今となっては確認する手段も連絡する手段もないけど、心の中でキジトラさんにお礼を言う。




 よし、早速街へ突撃だ。この崖は軽く数100mの高さがあるけど、空中歩行が可能な私の敵ではない! 私は街を発見したテンションそのままに、嬉々として街へ向かって走り出す。


 このまま空を走って行ってもいいのかもしれないけど、気のせいか地上を走るときと違って、ほんの少しだけど疲れた気がする? これって、もしかして空中歩行は魔力を使っているのかな? う~ん、崖から見た時に空を飛んでいる人はいなかったから、あんまり一般的な技じゃないかもしれない。余計な騒ぎは起こしたくないし、基本的には地上を走ろうかな。何か美味しそうなご飯がいるかもしれないし。


 崖から降りてさらに小1時間、美味しそうなご飯は見つからなかったけど、ついに街に到着した。桜の木から街までトータルで2時間弱なら結構近いね。崖の上では朝ごはんを食べたし、大パノラマも少し堪能してたから、実際にはもっと早く到着できるかな。



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