第2話 あいつの狙い
一夜が明けた。
あたしは彼女の写真をずっと見ながら夜を過ごした。制服の上はボロボロ。ブラのホックも壊され、下着の意味を無くしてしまった。もう取っちゃおう。ブラは無くても大丈夫だよね。あたし、そんなに大きくないし。
今日は先ず、所持品の確認をしよう。昨日は軽いパニックで考えなかったけど、大事なことだもん。
えっと・・・
財布と、携帯電話(圏外だよ)、桃の飴が五つ、ハンカチ、ティッシュ、あと・・・彼女の写真。
小さいバックだからそんなに入ってないね。ん?これなんだろ。黒い石みたいなのが入ってる。こんなの入れた覚えないけど、まっ、いっか。
次は小屋の中を見てみよう。
ロープ、ランタン(使えるかな?)、ロウソク10本(やった!これは使えそう)、プラスチックの大きい桶と小さい桶、かなり汚れているタオル数枚、ガソリンか灯油かが少し入った缶、竹で編んだ籠、薪割り用の斤。そして昨日使ったライターだ。
うん!使えそうなものいっぱいあるね。とりあえず桶に水を溜めておこう。身体拭きたいし。
一通り生き延びる算段を立てたあたしは、昨日に引き続き魚を取りに行く。
ああ・・・冷たくて気持ちいい。
川に足をつけると暑さが少し和らいだ。よし、魚だ魚だ♪
この川はすごいんだよ。簡単に魚がとれるんだ。それともあたしの腕かいいのかな?えっへん!
魚を二匹捕まえ、それを小屋で見つけた籠に入れて持ち帰った。今日も昨日と同じ、焼き魚だよ。
魚をむさぼり食べて、日陰で休むあたし。なるべく体力は温存しておかないとね。
ゆっくり休んだあたしは小屋に戻る。もうそろそろ夜が来るからだ。あっでもその前に水を桶に入れておこう。危ない危ない、忘れてた。夜、身体拭きたいからね。大事大事。
小さな桶に水を汲み、それを小屋の中の大きな桶に注いでいく。それを10回位かな。大きな桶にはそれなりの量が溜まった。
よし、あとは・・・
ランタン使えるかな。
一応試してみることにした。・・・使えなかったよ。でもロウソクがある。これで夜は真っ暗にならずに済むね。
この夜、汗でベトベトの身体を水で濡らしたハンカチで拭き、彼女の写真を見ながら過ごした。
朝がきた。昨日の夜は特に何もなく、あいつが近くで見張ってることも忘れるくらい静かに過ごせたよ。
さて、今日はどうしようかな。とりあえず小屋の中は暑いし、外に出よう。
そう思って出たんだけど・・・やっぱりあいつは近くにいたみたいだ。そこら中の地面にあいつの爪痕が残ってるもん。きっとあたしに手を出せないもんだからイライラしてたんだね。
ふぅ、これはやっぱり夜は外に出ない方が良さそうだ。
そう思ってたんだけどね・・・
・・・その日の夜・・・
ううっオシッコしたい・・・
外でするのは危険だけど、小屋の中でするのも気が引けた。パッと行ってパッと帰ってくれば大丈夫だよね。
ポケットティッシュをもって、細心の注意を払いながら外に出て、小屋の裏に回る。うん、ここならいいか。
あたしはパンツを下げ、しゃがみこんだ。
ふぅ・・・スッキリ!
ガサッ
少し離れた茂みの奥から音がする。
えっ、うそ・・・
このタイミングでまさかのあいつが姿を現した。まだ距離があるけど、ちょっと待って!せめてパンツ上げさせて・・・
だけどそう都合よく待ってくれなかった。あいつはどんどん迫ってくる。あたしは立ち上がり、急いでパンツを上げてそのまま走り出した。
・・・でも捕まっちゃった・・・
あいつはあたしに覆い被さってきた。そこで初めてあいつの容姿を知る。
本来口がある場所に口はなく、左右の頬に一つづつ付いていた。目は6個。鼻は無く耳も無い。頭には瘤のような塊が7~8個隆起していた。首の中央には穴が貫通していて、筋肉質のように見えていた身体は無数の細い糸のようなもので形作られていた。なので、近くで見ると、内臓がうっすら見えている。人間のように見えていた化け物は、まんま化け物だった。
あたしは吐き気を催した。こんな化け物に喰われちゃうのか・・・
あいつは左右の口を開く。そこからは長い舌が伸び、あたしの頬を舐める。
ひぃぃぃ!気持ち悪い!
きっと味見しているのだろう。
次にその舌達は、一つはあたしの上半身に、一つは下半身に伸びていく。
えっ、ええ~~!!
お腹や首、ブラをしてないあたしの胸を丹念に舐め回し始めた。
うわぁ~、ねっとりしてて気持ち悪い~~!
しかしもう一つの舌がタチが悪かった。太もも、ふくらはぎ、足首、そして足の付け根を、念入りに、そして丁寧に舐め回しているのだ。パンツは中途半端に上がりきっていなかったけど、何とかあいつの舌がダイレクトにあそこに触れるのを塞いでくれてる。でも・・・
うわぁ、ちょ~キモい!くすぐったいからやめてよ~!
しばらく味見された後、あいつは一旦止まり次に何かをしようとする。
いよいよ食べられちゃうのかな。でもまだ諦めないよ!
ん?ちょっと待って?こいつ・・・
えっウソ・・・まさか!
あたしは慌ててあいつの顔を蹴りあげ、山小屋へと駆け出す。
でも追い付かれちゃうかもしれない!頑張れあたし!
腕をがむしゃらに振っているせいで、あたしの胸ポケットから何かが落ちた。彼女の写真だ。取りに戻りたいが出来ない。ああ、あいつに踏みつけられる!
でも大丈夫だった。そればかりかあいつ、写真の前に止まってじっと見てる。
よし、今のうちだ!
あたしは残りの体力を振り絞り、何とか山小屋の中に戻ることができた。
はぁ・・・はぁ・・・
危なかった。
あいつ・・・あたしに・・・
・・・しようとしてた?
・・・
ゾワワワッ
ヤダヤダヤダヤダ!怖い怖い怖い!気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!
あたしは勘違いしていた。最初からあいつは、あたしを食べるつもりなんてなかったんだ。あたしを・・・犯すつもりたったんだ。もしかするとあいつ、あたしに自分の子供を生ませるつもりだったのかもしれない・・・それとも、肉欲を満たすためだけの・・・
うわぁぁぁぁ!
殺されるよりも嫌だ!
ともかく、あいつのヨダレが付いたままで気持ち悪かったあたしは、昼間汲んでおいた水で身体を拭いた。特に丁寧に舐められたところは、あいつの舌の感触が今も残っているようでキショかったから、念入りに拭いた。
・・・
・・・
・・・何か頭にきた・・・
頭に来たぞ!!
あいつは女をバカにしてる。いくら化け物だからって、やっていいことと悪いことがある。
黙ってやられるもんか!!
絶対逃げ切ってやる!!
あっでも、もし、あたしがここから逃げ出せたとしても、今度は他の女性があいつの毒牙にかかるかもしれない。
あいつを野放しにはできないね・・・
あたしは決心した。
あいつは明日、あたしがここで殺す・・・
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