外出するときは、忘れ物がないか確認しよう
「んじゃ、行ってきまーす」
「いってらー」
ガチャッと勢いよくドアを開けていった由唯を見送った後、柊はリビングに戻り、
「じゃ、チャチャっとやっちゃいますか!」
2階の物置部屋から、掃除機とほうきを出し2階の通路、1階の通路、リビング、キッチンの順で掃除をし、ほうきを使って和室の大窓を開けてほこり等を出す。和室は漫画や小説などがたくさん置いてあるのでそれらの確認をしたあと、さっき出した二つをしまい、洗面所から持ってきた雑巾や洗剤でキッチン(今回は水道周り)をきれいにしていく。
......しばらくして、
「お?」
カウンターに朝、由唯に持たせるはずの弁当が置いてあったのに気が付いた。
「ん?......あれ?!弁当持たせるの忘れてた!」
やっっっべ!早く準備してもっていかなきゃ!......今何時?!
慌てた様子で時計を見てみると10時30分を過ぎていた。
「あーーーー!!!やらかしたぁ!」
今やってた掃除をすぐに終わらせ、リュックに弁当、財布、スマホなどを入れ、大慌てで外に出る。
ガチャッ
「ええっと、まず、由唯の事務所に行くには......駅だ!」
最寄りの駅に走って向かう。
「って、あれ?俺家のカギ閉めて無くね?......あーーーーー!!!!」
駅に向かう時よりも早い速度で、帰宅し鍵を閉めまた駅に向かって走る。
駅のホームに着くとちょうど電車が来た。
「はあ、はあ......ちょうど、電車が......来た」
膝に手をつきながら荒れた呼吸を整え、電車に乗る。
席開いてるかな。......開いてないのかよ。え?!この時間帯で?!
今回は運が悪かったとあきらめ、適当な吊革につかまる。
......スマホをいじっていると目の前の子と目が合った。
ぺこりとお辞儀をしてきたので、こちらも優しく返す。
由唯と同じ制服着ている。でも今日土曜日だよな?何しに行くんだろ?
運動部はユニフォーム着て行くし、軽音?それらしい楽器がないな。......写真部?そっか写真部かぁ!カメラはカバンの中で、制服で行くもんな。今日は集会かな?あーすっきりした!
駅に着き外に出て、
「どこ行きゃあいいんだ?」
頭を掻きながらスマホで場所を調べる。
こっち?......こっちか?
いろんなところを行ったり来たりしさらに道に迷ってしまった。
「だぁー!もう、時間ないのに!」
「あのー?」
「何!」
「ひぃ!」
後ろからかけられた声に反応すると、驚いて腰を抜かしてしまっている。手に持っていたほうきでかろうじて立っているといった感じだ。身なりを見る限りバイトをしている途中で話しかけてくれたのだろう。本屋か?
「あぁ、ごめん。少し急いでてつい」
「あ、いや......その、大丈夫です」
胸元にあるネームプレートを見ると『彼方翡翠』という名前らしい。
「それでなにかようかな」
優しく接するが、
「あ、あの.....その、うう......」
めっちゃ怖がられてる?!そりゃああんな反応されたら怖がられるよね。
「その......なんか困ってたので......」
「え?」
「えっと、私の.....できることなら、お手伝いしましょうか?」
めちゃくちゃ優しい子じゃないか!!
「ありがとう!実はこの建物を探してて......」
さっきまで見ていたスマホの画面を見せる。
「キャンパス?」
由唯がいる事務所の名前だ。
「ここって芸能事務所ですよね?」
「そうそう、ちょっとを忘れ物を届けにね」
めっちゃ不信な顔されてる。普通行く奴いないもんな。
「わかりました。すぐ近くなんで案内しますよ」
「ここです」
10階くらいあるビルに着いた。
「ここって......駅のほぼ目の前じゃねか!」
駅を出てまっすぐ前を見ればくっきり看板が見える位置に事務所があった。
あんな迷う必要なかったじゃん......。
「じゃあここで......」
「あ、うん。ありがとう」
「いえ、それじゃあ」
ぺこりとお辞儀すると、駆け足で行ってしまった。
「行っちゃった」
もし、今度会えたらお礼でもしよう。
ビルに入ると目の前にフロントがあり一人女性が眠そうにしていた。てか今にも寝そうだぞ?
「あのー」
「ふぇ?......あ!は、はい!なんでしょう?」
思った通りいい反応をしてくれた。
「アンジュってアイドルグループの七瀬由唯の兄です。あのー、忘れ物を届けに来たんですけど......」
「あ!由唯ちゃんのお兄さんですね!わかりました。少々お待ちください。......お待たせいたしました。ではこちらのカードを首に掛けていただき、そちらのエレベーターから10階まで上がっていただきますと、左手にトイレ、正面の扉が練習場所になっています。」
PTAの人たちがつけてそうな証明書みたいなものをもらった後、やたらと丁寧に説明された通りに向かう。
「やたらと静かだな......」
ガチャッとさっき説明された扉を少し開けると、
「1,2,3,4,5,6,7,8!」
トレーナーさんの気迫のある声と、足音が響いていた。
「......」
気迫に負けて、扉を閉めると、
こっわ......。いっつもあんな感じの練習なのか。すごいな。あの音が外に出てないのもすげーな。いや、気づいてないだけで実はアテレコ現場もあんな感じなのかな?
「......11時40分」
スマホを取り出し時間を確認する。
この時間で練習してるってことは、多分間に合ったんだろうし終わるまで待ってよう。邪魔しちゃあ悪いし。......怖いし。
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