どうも俺にはセンスがないらしい...。2!

 由唯は柊が握ったおにぎりをすべて食べた後、またベットに横たわっていた。ふとスマホで時刻を見る。時計は22時30分になっていた。

 もうこんな時間。......お風呂入らなきゃ。

 由唯は立ち上がり、机の上にあるおにぎりがあった皿をもって部屋を出る。

 廊下に出たとき、別の部屋のドアが開いていてそこから光が漏れている。

 ......兄貴の部屋だ。

 こっそり近づいてドアの隙間から、部屋をこっそりのぞいてみる。話し声がかすかに聞こえてきた。どうやら柊が自分の机でパソコンを見ながらスマホで誰かと話しているようだった。

 う~ん、もうちょっと近づかないとよく聞こえない。......このくらいかな?

 由唯はドアから首だけを少し出すと声が聞えてきた。

「う~ん、弁当の中身考えるのって結構難しいな。......うん、うん、なるほど。はぇ~そんなものもあるのか。わかった、試してみるよ。ありがと、じゃあおやすみ

 ......あ~好みとかどんなのがいいのか由唯に聞いとけばよかったかな。いや、自分でやんなきゃ意味ないだろ七瀬柊。......よし!」

 パン、パンと自分の頬を2回たたくと、パソコンに向き直りまた悩み始めた。

 マジで勉強してんのかよ。......それに会話相手はきっといのりさんだ。......やばっ!

 柊が自分の部屋のドアが開いているのに気づきこちらに来たため、由唯は速攻で顔を引っ込めドアの陰に隠れた。

「ん?......気のせいか」

 柊はドアの陰にいた由唯には気づかず、そのまま自分の部屋のドアを閉めた。

 ......あっっっっっっぶねぇ~!!!鈍感で助かったぁ。

 由唯は少し息を整えてから、再び皿をもって足音を立てないように急いで階段をキッチンに皿を置いてから風呂場に向かった。


 しばらくして由唯は湯船に浸かりながら家に帰ってきてからさっきまでのことを思い出していた。

 やっぱ、私も言い過ぎたかなぁ。

 よくよく考えれば、柊が朝、時間のない中自分のために作ってくれたものだ。あんなにきつく文句を言わなくても、もっと別の言い方があったはずだ。今更少し悪いことをしたなと思い始めてきた。

 いや、兄貴だって悪いところはあったし、それに今更なんて言えば......。

 悩みながら由唯は湯船の中に沈んでいった。


 ****


 翌朝

 いつもどおり二人は朝ご飯を食べ、学校、仕事に行く支度をした。唯一違うところを挙げるなら二人は朝一回も話さなかったというところだ。 

 由唯が学校に行こうとしたとき柊が、

「由唯、少しいいか?」

「何?」

 昨日と同じような態度で返した。

「昨日はすまなかったな。えーと、その......ほら、これ」

 柊は少し迷ったようなそぶりを見せながら包みを見せてきた。普段私のお弁当が入っている包みだ。

「今回もお前のお気に召すかはわからないけど、昨晩考えまくった自信作だぜ?兄ちゃんだってやればできんだ。これからだって頑張るからさ。だから~......その~......」

 こんな躊躇ってる兄貴は初めて見た。

 普段柊は、基本的に言いたいことは躊躇わずいうタイプなため、由唯も少し驚いていた。それによくみると柊の目の下には大きなクマができていた。その顔で仕事なんて行ったら驚かれるぞ兄貴。

「......だからこれからもお前の弁当作てもいいかな?」

 柊はくまの入った顔でにへらと笑った。

 私も言わなきゃ。

「......私こそ......ごめん」

「は?」

 柊がすっとんきょんな声を上げてくる。

「ごめんって言ってんの!......昨日は私も言い過ぎた。図々しいかもしんないけど、これからも作ってほしい」

 兄貴が笑ってるのが見える。でもそんなことより顔が熱くてハズイ......!

「じゃあ、行ってきます」

 赤くなった顔を柊にばれないようにドアに向かい出発の挨拶をした。

「ん、行ってらっしゃい」

 由唯はそれを聞くと玄関のドアを開けて駆け足で学校に行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る