新しい異世界人との邂逅

「あー......」

 八意天は店のカウンターでうつ伏せになっていた。

 王様と謁見したあの日から約二週間がたった。その間特に変わったことはなく、ずーっと店番などをしていた。

「帰るから気で頑張ってたのにいきなりあんな風に言われて目標が折れるなんて......」

「そう言ってても仕方ないでしょう」

 店の裏からヒョコっと顔を出しアリスさんがそう言った。

「他の方法を探すか、割り切ってここでずっと暮らすかそろそろ考えないと駄目じゃない?ここにはずっと居てもいいから、ね?」

 そういうとまた店裏に戻ってしまった。また研究室だろうか?

 アリスさんは優しくそう言ってくれたが、実際本当にどうしようか......。

 カランカラン

 悩んでいると店のドアが開いた。普段はエルフの客が来るのだが今回ばかりは少し違った。

 その人は金髪ショートのアリスさんとは正反対の銀髪のロングヘアで先端を軽くまとめて下げていて、その上から大きな円錐型の帽子......元居た世界で言うエナンのようなものを被っていて、右手にほうきを持っている女性だった。そうわかりやすく言うのなら魔女だ。

「アリスー!久しぶり!元気にしてたか?!......ってあれ?」

 元気よく左手を上げこの店の店主の名前を呼ぶが当然帰ってくるはずもない。でって今は俺が店番してるんだもの......。

 俺の存在に気づいたその人は、俺のことをじっと見つめて一言、

「ははぁ~ん。アイツもとうとうやったなぁ!こりゃあ赤飯炊かないとな!」

 なんか変な勘違いをされてる!ひどくなる前にアリスさんを呼んで来よう。


 アリスさんを呼んで勘違いを改めさせると、コホンと一泊おいて説明してくれた。

「えーと、ソラこの人は......」

術人種ウォーロックのミィズだ!」

 勢い良く名乗ったのに合わせて、

「で私の友達。ミィ、この子はソラ。今は住むところがなくて私が住み込みで働かせてる子。」

「ど、どうも......」

 ペコリと軽く頭を下げると、「よろしく〜」と手を振ってくれた。

「うぉーろっく?って何ですか?」

 純粋に疑問に思った事を聞いてみる。

「術人種ってのは種族の一つで、この位の小さい精霊が純血の精術種ウォーロックで、人類種サピエンティアが私たちの様に大量の魔力を持っているのが半精術種ハーフウォーロックっ言うの」

 右手の親指の爪と人差し指の爪をくっつけて輪っかを作りながら教えてくれた。

「そうゆう種族もいるんですね」

 やっぱりこの世界の人類の性癖はどうかしている。なんでそんな小さい精霊でイけると思ったのか......。

「そういえば、さっき悩んでいたようだが何かあったのか?」

 ミィズさんがこちらに向かってそう聞いてきた。

「初対面だからって遠慮する必要はないぞ!私は良い人だからな」

「そう言ってくれるのは嬉しいですけど......」

 流石に言えないでしょ。私実は人間なんです。なんて......。

 チラリと横目でアリスさんを見る。

 こちらの視線に気づくと、アリスさんは察してくれたような相槌をうち、

「そんなことより何の用でここに来たの?」

「おお!そうだった。実はな人工魔力を作ろうとしていたんだけど失敗して色々大惨事でさぁ......」

 笑いながらそう言ったミィズさんに対し冷静にアリスさんは、

「あーはいはい、大体分かったわよ。ちょっと待ってて取ってくるから」

 そう言ってアリスさんは店裏に消えていった。

 二人っきりになったときミィズさんが、

「なぁ、アリスはお前のこと知ってるのか?人類種サピエンティア......」

「?!」

 真剣な眼差しでこちらを見てくる。

「な、何の事ですか?」

「誤魔化しても無駄だぞ?」

「......何で分かったんですか?」

 ごまかし切れないと判断し逆に聞いてみる。

「簡単だ。お前から魔力が伝わってこないからだ。それに私は初対面のやつには必ず占星術を使ってどんな奴かを判断してる」

 さっきまでの雰囲気とは違う殺伐とした口調でそう言った。

「で、なぜアリスに近づいた?何が目的だ」

「なにをいったところで信じてくれないですよね」

「当然だ。私たちを裏切った種族やつらのことなんか信用するか」

 色々聞きたいことはあるがそれよりもまず自分の命優先だ。

「実は俺、異世界から来たんですよ」

「......ほう」

 こっちに来てからのこと、アリスさんに助けてもらったこと、ここの王様とあって話したこと、色々話した。

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この世界の人類はどうやら俺だけのようです。 ゆるゆる @yuruyuru1222

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