俺を喚んだ者
ロネと彼女は自己紹介をしてくれた。この国の騎士団の団長をしているという。
「お疲れ様です!」
城の門前にいた騎士に彼女は敬礼をされた。本当に団長さんみたいだ。
「ほらついてこい」
ロネさんの後をついていく。すると大きな扉の前で止まった。
「ここからは謁見の間だ。くれぐれも国王に失礼のないように」
そうゆうとロネさんは扉を開けた。
謁見の間というところはとても煌びやかなところだった。高い天井からシャンデリアが下がっていて、真ん中には赤いカーペットが敷いてある。その先には玉座があった。そこに白髭の生えた男性の老人が座っていて、隣に褐色肌の女性が立っていた。
「アリスさん、アリスさん」
小声で話しかける。
「あの人ほかの人と肌が違いますけど」
褐色肌のきれいな金髪をポニーテールにした人を見てそう聞く。
「あの人はホムラ様、この国の王女様でダークエルフ。ダークエルフってのは、簡単に言うと普通の妖人種よりも魔力が高くてめったに生まれてこないの。それに半妖種でしか生まれてこないからね」
「へぇー」
すっごい珍しい体質なのか。
ガチャッ
「うわっ」
急に左右に居た騎士が武器で道をふさいできた。
「すみません。これ以上は進めません」
そう言われたので少し後ろに下がる。
「おお、やっと......やっと出会えた。人類種殿お名前を教えていただけないでしょうか?」
身を乗り出して聞いてきた。
「あ、えっと天です」
「ソラ殿お会いできて光栄です。私この国の王のエドモンド・クリムゾンと申します。この世界にはもう慣れましたか?」
「ええ、まあおかげさまで」
そう愛想笑いを浮かべたがあることに気づいた。
......ん?いまこの世界って言った?
「あのー、質問良いですか?」
「何でも聞いてください」
「なんで俺にこの世界に慣れたと?」
そもそもこの世界に人類種はもういないはずだ。だからあの団長が俺を探している時点でおかしいし、だとすると考えられる答えは、
「ええ、何故なら私がこの世界にあなたを召喚したのですから」
「は?」
あいつは今なんて言った?召喚したといったのか?
「今この星は
という俺を喚んだ経緯を説明した。
つまりあれか?俺はよくも知らないこいつのことを守るために呼ばれたのか?自分で考えようとせず?随分とまぁ他力本願な奴だな。
キレそうになったが、相手はこの星の王だ。変なことしたら速攻打ち首極刑行きなのは目に見えていたのでギリギリ踏みとどまった。
「じゃ、じゃあ質問をもう一つ。喚ぶのは俺じゃなきゃ駄目だったのですか?」
大体予想はついてる。だからここで確信を得たい。
「いえ、必ずしも貴方でなければならないと言う訳ではありません。偶然貴方が呼ばれただけです」
……知ってた。そんな気はしたよ。でもさ、選ばれし人とかならさ、まだ素直に喜べたじゃん......。
しかし、一番大事なのは次だ。
「貴方に協力したらオレは元の世界に帰れるんですか?」
帰れるならそれだけだいい。こちらも喜んで手伝おう。
しかし、
「ハッハッハ!何を仰る。喚んだ人なら帰る方法も知っているはずだと?そんな都合のいい話は有りません」
お前何言ってんの?と言うような笑い方をし、そう言って来た。
それを聞いて、頭の中でプツンッと何かが切れるような音がした。
「......ざっけんなよ。」
ゆっくりと玉座の方に歩き出した。
「こら!止まりなさい!」
周りの騎士たちがそう叫ぶが一切を無視して歩き続ける。
玉座の前に着くと、なんとエドモンドの胸ぐらをつかみキッ!と睨みつけた。
空の行動に対し周りの兵士たちは一斉に駆け寄るがエドモンドがそれを右手で止めた。
「お前!お爺様になんて無礼を!」
隣にいた褐色の女性、ホムラがそう叫ぶが、
「うるせぇ!黙ってろ!!」
空はホムラよりも大きな声で抑圧した。そのまま続けて、
「ふざけんじゃねぇぞ!いきなり知らんところに飛ばされたと思ったら異世界で、右も左もわからなくて、金はないし、飯もないし、文字も読めない......。アリスさんがいなかったら俺は死んでいたかもしれない。そん時はどう責任を取るつもりだったんだ?都合の悪いことは全部無視ってか?ひと一人の命を甘く見てんじゃねぇよ......。
それに”私は敵の国からも民からも命を狙われています。私は怖いから何もしないので何とかしてください。報酬は何もありませんがよろしくお願いします。”ってそんな都合のいい交渉があると思うなよ。てめぇ見たいな奴に誰が手を貸してやるかよ。よーく考えろ」
言いたいことを言い終えると天はパッと手を離し出口へ向かう。
「アリスさん。帰りましょう」
「え?あ、うん......」
少し戸惑った後、空を追いかけた。
ホムラがその背中を追いかけようとしたが、エドモンドに止められた。
「お爺様!なぜです?!」
エドモンドの行動に疑問を持ち反論するが、
「あの方の言うことにも一理ある。今回は私が自分の命欲しさにちゃんと考えられていなかった。私の責任だ。考えを改めてからもう一度お願いしよう」
そう言って空達が出て行った扉をエドモンドは見つめていた。
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