第129話 引き寄せの法則はある、あった


 最近、引き寄せの法則と思われる事象に出会い、おもわず笑ってしまったのでエッセイに残しておきます。


「引き寄せの法則」はWikipediaではこう書かれています。


「ポジティブな思考が良い経験を、ネガティブな思考が悪い経験を、人生にもたらすという信念であり、科学という視点から見れば疑似科学である」

「倫理的な問題点も指摘されており―(中略)―宗教学者のダグラス・E・コーワンは、『もしあなたがこの理屈を信じるなら、誘拐された人やレイプされた人に何を言うことになるか、考えてみてください』と述べている」


 いや、めちゃくちゃ批判的ですやん。笑いました。

 そんなことはいいとして、唐突に最近読んだ本を挙げてみましょう。


 ●水中の哲学者たち 永井玲衣 晶文社 (2021)

 ―もっと普遍的で、美しくて、圧倒的な何か。それを追い求めて綴る、前のめり哲学エッセイ!


 ●寝ながら学べる構造主義 内田樹 文春新書 (2002)

 ―構造主義は現代思想の代表みたいにいわれるけれど、一体どんな思想なんだろう。そう思って解説書を手にとれば、そこには超難解な言い回しや論理の山。ああ、やっぱり現代思想は難しい……。そんな挫折を味わった方はぜひ本書を。


 ジャンルも年代もバラバラです。そりゃそうです、適当にラベル買いして積みKindleしていた本たちですから。一貫性なんてものを僕に求めてはいけません。


 では、なんで僕は笑ってしまったのか。それは、ジャンルも全然違うのに、同じ話題に触れていたからです。まさに僕は無意識にこれらの本をのです。


 ○


 水中の哲学者たちでは「何にもならないになってみる」と永井さんは言います。すると内田さんは「何ものであるかは行動によって決められる、という人間観が現代の構造主義の根幹になっている」と解説します。


 つまり、僕が前回「感銘を受けた!」という内容は、マルクスによってすでに「”何もしない私が存在する”と考えること自体が”何もしない”ことを正当化する現状肯定」と批判されており、構造主義と言われる現代の基幹的考えになっていると解説しているのです。


 オードリー若林の「ペットボトルのラベルを読んでいればラベルを読んでいる人になれる」という感覚がそもそも構造主義であり、現代のものの捉え方なのだから、なにもおかしくありません。永井さんはおそらく過去のマルクス、ヘーゲル、レヴィ・ストロースなどの哲学者の考えを理解し、かつ、この考えから逃れられないことを分かりながらも「抵抗」しているのでしょう。


 そして、何も知らない僕がそれを読んで感動していた、と。


 基本的に僕は能動的ニヒリスト(人生や存在に客観的意義はないが、自分で意味があると誤解できればハッピーな人)なので、僕の存在に価値があるなんて思っていません。しかし、「何もしたくない」から「何もしなくても価値がある」と思い込みたい。


 そんな怠惰な思いが溢れているから、僕はこの2冊の本をのでしょう。あゝ、素晴らしき哉、人生!


 ○


 こんな体験をしてしまったら、僕はもう引き寄せの法則を否定できません。僕は胸を張って引き寄せの法則はあると主張していきたいと思います。


 そして、引き寄せた相手には両頬を引っ叩かれるのです。

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