第125話 スタンプは存在した
僕はインドアで人見知りですが、人が好きです。
人というか、コミュニケーションができる動物が好きと言ったほうが正確かもしれません。
ヒトであれ、イヌであれ、意思疎通が可能な個体は好きだし、意図が理解できない生き物は苦手です。その意味でパリピはイヌよりも遠い存在かもしれません。だからこそ、輝いて見えたりするのですが。
じゃあ、なんで意思疎通ができると好きなのか、というと、自分が影響を与える可能性が開かれているからだと思いました。そんなことを、とあるスタンプから再発見したのです。
○
最近、切り株さんとお会いしました。以前からカクヨムで伺っており、ツイキャスでもお話ししたことがあったのですが、初対面はやはりものすごく緊張しました。
ドウェイン・ジョンソンみたいなガタイだったらどうしよう。会った瞬間、ワタオウサギのように凄まじい反射神経で逃げられたらどうしよう。そもそも切り株さんが存在しなかったらどうしよう――。
そんな不安と期待が湧いては消えます。ぷくり、ぷつり。ぷくり、ぷつり。待ち合わせに向かう電車の中は移動する水槽のようです。
電車を降り、迷宮のような駅で迷いながら、現地に到着。珈琲店の前に佇む切り株さんを確認して、やっと、息ができました。
お会いして早々「思ったより若い……」とがっかりされたのですが、実に不本意です。アリゾナの地を踏み、バイソンの血を啜ってきた僕はドウェイン・ジョンソンのような渋オジ味を隠しきれず、熟成されたワインが醸す濡れた犬のような芳醇な香りを発しているのは間違いないからです。
反面、僕はがっかりしませんでした。思ったより小柄でしたが、お声もお話も変わりません。僕の横でカップをセットしてドリンクバーのボタンを押したら、カップを置いていない注ぎ口から勢いよくドリンクが飛び出してびっくりしています。意図せず人をほっこりさせてしまうのも変わりません。知っている切り株さんで安心しました。
お会いしましたが特別なことはありません。ここでお話しするような言葉をぽつぽつと紡いでいました。
気が付けば時間は飛び去り、お開きとなります。生のAskewを接種して何らかのウイルスにやられてないか心配だったのですが、ピンピンしているようだったので少し安堵します。おそらく胃腸も元気な方なのでしょう。
会話の中で、一番驚かれたことがあります。異性のギャップは武器になると言いますが、ギャップ萌え出来たでしょうか。生のAskewに会った方は、みなさん驚いてくださいね。
――えぇっ! 血液型はA型なんですか!?!?
○
人と会うこと、お話しすることは苦手なのですが、そんな僕でもお会いした方を驚かすことができた。僕が誰かに影響を与えたという事実が嬉しいのです。
普通の友人にはしないような死生観に関わるお話しもしました。話しにくい家族の話もネタに出来ました。何気ない日常の話もしました。僕はそこにいました。誰かに影響を与える可能性が開かれていました。
想像上の存在だった
そんなことを、日々願っています。
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