第124話 カクヨムオフ会体験談――次元が上がる瞬間


 2022年12月23日の金曜日、カクヨムエッセイ仲間の黄間友香さん(※)とお会いしました。


 以前からエッセイを拝読しており、Twitterでも無理やりスペース配信に乱入させてもらったことがあります。その後、お声がけ頂き、サラリーマンが行き交う新橋で飲みに行きました。


 エッセイから感じる人柄や、スペース上での印象からも話しやすい方だと思っていましたが、お会いしてもまるで昔からの友人のようにお話しできたのがびっくりです。黄間さんの優しい配慮もあり、緊張はしていましたが、特技の人見知りが発動しなくて良かったです。


 話したことはお互いの海外経験であったり、エッセイの内容だったり、僕のマッチングアプリの嘆きだったりと、酔っ払いの他愛のない戯れ言なので仔細には書きません。そこで、今回は「オフ会はなぜ特別に感じるのか」という問いを考えたいと思います。


 ○


 古来から会ったこともない相手と仲良くなるという状況は多くありました。テクノロジーが発展する前は手紙が遠方との唯一の連絡手段であったため、知り合いに紹介されて文通をするということも多かったでしょう。空き瓶に連絡先を書いて海に流す、という古典的手法も男子中学生のロマンチックな心を揺さぶったものです。


「良いな」と思った若いみなさん、その心は大切にしまっておきましょう。清き乙女や遠い国の金髪女性から連絡が届いたことはありませんし、今では犯罪に繋がる反コンプラ行為として炎上しそうでなりません。「ネットでAskewっていう人が言っていたから」などの証言はもってのほかです。せめて「変態が言っていた」と嘘にならない証言をしてください。頼みますね。


 閑話休題

 さて、こうした状況はもう昔のことなのでしょうか。いや、まさか。まさにみなさんが生きているこの世界においても顔を知らない人と繋がり、そして会う場があります。そうです。「オフ会」です。オフ会とは、SNSやゲームなどで知り合った人が、オンライン上ではなく現実の世界(オフライン)で会合することです。


 Twitter友達とご飯に行く。ゲーム仲間とサイゼで作戦会議をする。ネットの趣味友達とお茶をしばく。プライベートに限らず、映画やアニメ声優のイベントに行く、コミケで合同誌の著者や神絵師に挨拶する、なども一種のオフ会と言ってもいいでしょう。


 これらはただ「会う」のとどうして違うのか。

 それは「次元の上がる瞬間が分かる」からだと考えています。つまり、実際に会う前に取得していた情報――文字や声などの2次元的情報――から3次元へ統合される瞬間をが、オフ会を特殊足らしめている思っているんです。


 オフ会は単に人と会うという経験とは非常に異なります。単に人と合う場合、初めてお会いした人でも、あくまでこの3次元世界のどこかにいて、今たまたま会ったという同一レベルの次元に感じませんか? もしくは、未来では会ったことのある人を初めて認識できたという意味では、4次元時空の知人という認知から現在の3次元時空への還元とも言えないでしょうか。これらの場合、次元の狭間は意識されません。


 しかし、オフ会の場合は明確に情報の次元がアップグレードされます。

 エッセイを読む、メッセージを交換する、声を聴くなどで情報の量は得ることが出来ます。そして、それをもとに人物像を作ることが出来ます。ただ、あくまでこれらは2次元的な情報であって密度が伴っていません。ですが、実際に会った場合、五感を通じて入ってくる情報の密度は確実に上がります。そこで、情報の次元の違いをまざまざと感じるとともに、生まれ出てくる新しい情報とのすり合わせに心が忙しくも、その違和感を楽しめるんですよね。


 だからこそ、オフ会は特別になるのです。

 この特別感を端的に表したことわざがあります。みなさん、思いつきましたか?


 ――百聞は一見に如かず


 研鑽された集合知は素晴らしいですね。僕が1,500文字以上かけて説明した内容がたった9文字で表現されていて、その内容も実感を伴って理解できる。脱帽です。


 ○


 ともかく趣味コミュニティでのオフ会はおすすめです。なぜなら、会話の土台が共有出来ているからです。特にエッセイ界隈では、自分の中では消化が終わっているけれど、リア友だと盛り下げたくなくてあまり話さない話題(姉の借金)とかもお構いなしで喋れます。黃間さんはちゃんと理解してツッコんでくださる方だったので気を遣う必要がなくて超ラクでした。


 それに、僕のエッセイを読んでくださっている方の場合「あの……実は変態なんです……」という緊張のカミングアウトも必要なく、「この人は相手が変態であっても大丈夫な猛者の方だ」という謎の安心感を持ってお話しできます。


 みなさん、オフ会がなぜ特別か、分かっていただけましたでしょうか。決して、謎の安心感だけが特別たらしめているわけではないのです。


 ――黒セーターの上に紺色のコートを羽織り、茶色のマスクをした変態を見たとき、黃間さんの頭の中でどのように次元が統合されたのか。聞いてみたいような、みたくないような……。






 ※戻ってこいよ私の情緒

 https://kakuyomu.jp/works/16816700426241976920

 黄間友香さん、5年書いているエッセイ群の最新作

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