第122話 マッチングアプリの懊悩―マッチ率の真実


「マッチングアプリはマッチングしない」


 これは声を大にして言いたい真実です。「オレって自他ともに認めるイケメン!」という自信がない男性諸賢は、自衛のためにも「マッチングアプリに期待しない」という心構えはしておいたほうがいいと思います。


 まずは客観的な事実から述べましょう。

 マッチングアプリ利用者の男女比はおおよそ男7女3です。つまり、圧倒的に男性のほうが競争率が高いのです。「おっ、じゃあ男でも上位40%に入れば良いんだな」と思ったあなた、算数が苦手ではありませんか? 僕はそう思いました。算数は苦手です。


 しかし、ものごとはそんな単純ではありません。課金すると女性の”いいね”数がわかります。ざっと見て100~1,000いいねを貰っている方が多いです。普通に考えて、同時に100人とメッセージをするわけがありません。そのため、少なくとも”いいね”した男性の上位1~10%程度に入らないとマッチングのチャンスすらありません。


 登録者数が多いため、男性が女性から”いいね”を待つのは効率が悪い。そのため、男性の最適戦略は「マッチしてから考える」となります。よく考えず”いいね”を送って、マッチングした人の中から選ぶという戦略です。男性がそんな戦略を取るとどうなるでしょうか。


 そうですね。女性の目が肥えます。様々な人から”いいね”が来るので「(男性と比べると)相手を選べるし、候補男性の見た目平均も上がりがち」と女友達からは聞いています。「週に2~3人と会っていた」とも言っていました。男性でその頻度で会える人は、よほどのイケメンでなければ、まずいません。


 いいですか。マッチングアプリでマッチングするのは、難しいのです。

 泣きたいほどに”いいね”は返ってきません。世の中の男性の涙の多くはここで生成されていると言っても過言ではありません。フラレて泣く人は少数です。多くの男性は会えずに泣くのです。


 ○


 さて、やっとのことで写真とプロフィールスペックからマッチングを勝ち取っても、実際に会うのは相当に難しいです。僕は結果的にマッチしたのは50人ほど、そのうち会えたのは5人ほどです。多いと思うでしょうか。読み進める前に率直な印象を確認してみてください。


 実際、僕は毎日30人くらいに”いいね”を送っていました。体感1人とマッチしたら良いくらいです。11月に始めたという期間を考えても、ざっくり1,500人くらいに”いいね”を送っている計算になります。ですので、マッチング率は3.3%、会える確率は0.3%です。


 これを高いと思うか、低いと思うかは人によると思いますが、2アプリ×月4,000円を払っている僕からするとなかなか厳しい数字というのが正直なところです。


 しかし、アプリをしないとチャンスもない。彼女が欲しけりゃ、アプリを入れろ。当たり前のアフォリズムです。独身男性よ。努力しよう。


 ○


 ここまでで、僕が流してきた涙の理由も、「マッチングアプリではマッチングしない!」と声を大にする僕の気持ちも理解いただけたでしょうか。僕のプロフィールとかメッセージの内容が悪いというクレームは受け付けません。これ以上、泣かせないでください。保湿化粧液が足りなくなってしまいます。


 ただし、ひとつだけ良いことがあります。

 今まではクリスマスが近づくと「リア充、くたばれ」と湧いてくる邪念を押し留めていました。しかし、これほどの競争が可視化されてくると、「世の中の男性はこれを勝ち抜いて来たのか……」と考えられるのです。すると、不思議と穏やかな気持ちで過ごせます。過ごしたいと思います。


 邪な気持ちを持ちたくないとお考えの心の清らかな方、ぜひ、マッチングアプリを始めてみましょう。年の瀬の煩悶から逃れられるかもしれません。涙は出ると思いますが。

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