第115話 求む、恋愛中級者


 最近、齢30にして自分がかなりオタクなのだと気づきました。僕は熱中したらかなり入れ込むタイプで、「ストイック」と言うと響きは良いですが、要するにオタク体質です。


 モニターやスピーカーなどのガジェットを調べ始めたら楽しくてキリがなく、ゴルフのクラブやボールの性能差に悩みながら調べ尽くし、競馬の歴史を紐解きながら生まれ年のレース(ダイユウサク)をみて感動し、Youtubeのプロレッスンを見ながらスノーボードやテニスの体の使い方を研究する。そして、今までは読みもしなかった「本」なんてものを読んでいる。そんな自分がいます。


 思い返してみると、不思議なことに学生時代そこまで熱中するものってなかったんですよね。ティーンの時はあんまりオタクじゃなかった。


 昔から極端に得意なものはなく、苦手なもの(柔軟、数学など)も羞恥心と劣等感から必死に克服してきたので、全般的に人並みです。克服できないのはひねくれた性格と彼女くらいのものです。


 だからなのか、学生時代はのほほーんと過ごしていたんですね。時間を潰してました。(漫画を除く)本なんて読むこともなく、まじで何もせずベランダから景色眺めてる時間ありましたから。(ぼーっとしてるときに鼻に飛び込んでくる空気の匂いとゆっくりとした時間感覚って最高だよね)


 ところが、社会人になって時間が無くなったくせに、次々にやりたいことが出来て、そこそこ熱意を持って入れ込んでいます。


 これはなぜか。

 正直、理由は簡単です。


 ――お金があるから。


 身も蓋もないですが、お金は必要。お金があるからやりたいことが始められる。スピーカーもクラブも本も、「何を買うか」は迷うけど「買うかどうか」は迷わなくて良い。その地盤が出来たのが非常に大きいと思います。学生時代から入社4年目くらいまでは金がなさすぎて、やりたいことも躊躇してましたが、お金は勇気を後押ししますね。独身バンザイ。


 とはいえ、理由はお金だけではないのです。

 もし僕が過去にお金を持っていても、今と同じことをしていたかはわかりません。


 なぜなら、「焦り」と「経験知」がなかったからです。


「焦り」はもちろん肉体的、時間的なもの。特にスポーツをする限り、年齢(老化)はどうしようもないデメリットです。身体能力は時間が経てば逓減していきますから「今のうちに」と思うのはもっともなことです。ところが、20代前半ましてや10代には気付かないんですね。


 僕は今でもスノボで720度回転したいと思っているし、片手の指先で全体重を支えたいと思っているし、危うげなくパーをとって涼しい顔でカッコつけたいと思っています。(あわよくば可愛いキャディさんや女友達にナイスパーって言われながらハイタッチしたい)

 更には、魅力がないと批判されたら人間(である僕)の生物としての魅力を滔々と語れるようになりたいし、自分の発言に自信がないときは過去の偉人達が発明してきた哲学的論理を援用して虚飾と色をもりもりにつけたいし、何があっても詭弁を弄して困難に負けない(勝ちもしない)ように受け流す強さを手に入れたい。


 そんな野望を持っていたら自然と熱が入ってくるんですね。「早くしなければ(間に合わない)」という「焦り」が僕を動かします。

(もちろんその先の目的は「モテる」ことです。何度も言っているので、もう言う必要もないと思いますが、念のため補足しておきます)


 そして、もう一つは「経験知」です。

 何にでも共通すると感じていますが、ものごとってある程度の「経験知」がないと、楽しさがわからなくないですか?


 例えば、ゴルフだと90前半(ボールに当たる)くらいで楽しくなってくるんですね。初心者は100切りが目標になりますが、スコア100って体感的にミスだらけです。

 スノーボードなんてもっと顕著です。初心者は滑るどころか立てもしない。ゲレンデを横に突っ切って、いつになったらターン出来るのか。数日滑ってオーリーが出来たら良いくらいでしょう。個人的にスノボは板の反発を使えてからが本番だと思うので、そこまでの道のりは非常に長い。

 本だってそうです。いきなり心身問題とかディープラーニングとか読み始めても何を説明しているのかが理解できない。日本語なのに単語すら意味がわからない。単純に苦痛です。そんな状態じゃ読書が楽しくなるはずもありません。


 もちろん、ものごとを楽しむのに経験は必要ありません。初心者だってスポーツすれば気持ちいいし、読書だって楽しめる。でも、楽しさの度合いが劇的に変わってくるのは、いつだって初心者を抜けてです。(これも「経験知」です)


 つまり、本当に楽しくて仕方がないのは、未熟ながらも多少の成長と伸び代を確信している時で、それにはある程度の経験の蓄積が必要です。それは肉体的にしろ、精神的にしろ、なんでもそうだと僕は体感してきました。


 これが経験の少ない学生のときにはわからなかった。

 そして、この実感はとても重要だと今では確信しています。


 まとめますが、大人になってオタクになる理由は以下の通り。

 1. 金に余裕ができる

 2. 焦りが生まれる

 3. 経験知がたまる

 この三つの理由が大きいと考えています。


 もちろんこれは真理などではありません。だからこそ、皆さんの意見もお待ちしています。どうして僕はオタクなのか。子供より大人が広い趣味にハマるのはなぜなのか。関係なくてもいいので、ご感想楽しみにしています。



 ちなみに、僕は恋愛経験がゼロに等しいので、恋愛の楽しさのTの字もしりません。しかし、これまでの論理から行くと、恋愛中級者が一番楽しいに違いありません。本当にそうなのでしょうか。そもそも恋愛中級者ってなんでしょうか。上級者って新海作品のように時空間を飛び越えてそうですが、難しくないのかな。自称、恋愛中級者、ご意見お待ちしています。


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