第70話 人が「ハマる」作品に必要なもの
前回「穴に嵌る」という起源から語義のイメージを膨らませましたが、今回は「ハマる」ための条件を考えてみたいと思います。ただし、具体的に役に立つ方法論ではありません。詳しい人は教えてください。
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「どうして物語にハマるのか?」という奥森さんの疑問に無理やり簡潔に答えると「その作品を掘れば、次々と変態の独白や、奮闘の記録というお宝が見つかるから」(超意訳)となります。
ハマるための要素は個人的に三つ。「設定」「技巧」「お宝」です。
まずは設定と技巧。「設定」は穴の中がなんか良い感じに見えるかどうか。この穴に入ろうと思えるかどうかの分かれ目です。そして、「技巧」は「ここを掘ったら何かが出てくるよ」という手がかり。
これらが上手いと、とりあえず穴に入って、掘るというところまでは行きます。もちろん、多くの場合は穴に飛び込んですら貰えないので、雰囲気と掘りやすさは開かれたものであると良いでしょう。
ただ、その先、何が「お宝」になるかは採掘者の感覚によるとしか言えないと思います。「伝説の剣だ! 最高!」となる人は多いでしょうが、僕は「ダンクルオステウスの頭骨だ!」とか「人類最古の変態の手記だ!」となった方が嬉しいんですよね。
だから、結局、最終的な必要素に絶対的正解はないと思うんです。この一番重要な「埋めるもの」は多くの人に喜ばれるものであっても良いし、一部の特殊な人たちにだけ喜ばれるものでも良い。ここだけは自由にしていい部分だと信じています。
たまに「一般ウケ」という言葉を耳にしますが、これはお宝の一側面でしかないんですね。とりあえず沢山の人に来て欲しいという目的の人なら良いお宝だと思います。
ですが、本当に埋めたいもの。そのお宝と一緒に埋めるべきものを埋め忘れてしまったら悲しくないですか。少なくとも僕は悲しい。せめて「良い感じだと思ってたら突如として連絡がつかなくなった女性との過去」くらいは埋めたい。
埋めたいものは何か。
誰かに「ハマって」もらうなら、それが一番大切だと思います。
安心して下さい。言うまでもなく、名作で埋まっているのは変態の独白などではなく本物の宝物です。
ちなみに、僕はせっせと「これが出れば嬉しいよね!」とにんまりしながら変態の一部を穴に埋めるのです。それで恍惚としてくれる人は、設定とか技巧とか関係なく嗅覚が優れている(特殊ともいう)ので、穴掘りに自信のない方はくさいものを埋めてみてはいかがでしょうか。責任はとりません。
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