第40話 この創作論の役立て方


 シャーマンキングという漫画をご存じでしょうか。週刊少年ジャンプで連載されていた武井たけい宏之ひろゆきによる作品で、霊能者シャーマンの麻倉葉が侍の霊である阿弥陀丸と共に、シャーマンの頂点を目指すというバトル漫画です。


 当時は小学生真っ只中ということもあり、漫画を読み、アニメを見て、その世界観にハマっていました。「よみがーっえーれー!!」という印象的な歌い出しで始まる林原めぐみのアニメ主題歌「Over Soul」は思い出の曲として記憶にしっかり刻み込まれ、同世代の間では葬式で流して欲しい曲として非常に人気があります。


 そのような時代背景はもとより、歴代ジャンプ作品の中でもシャーマンキングはとても有名です。それは「ファンタスティックな打ち切り」を披露した作品だったからです。


 最終決戦前、突如としてラスボス(麻倉ハオ)が女装して現れ、でかでかとしたフォントで「プリンセスハオ」と表示される圧巻の見開き。しかもそれが準レギュラーキャラの夢オチという驚愕の最終回。シャーマンキングの終焉は、連載で人気を取り続ける厳しさと市場原理の無慈悲さを年端もいかない子供に叩きこむには最適の教材となりました。(ちなみに、ラストは完全版で補完されています)


 打ち切りにはいくつか理由があります。人気の低迷、雑誌の廃刊、不祥事、引退など、当たり前ですがどれも良い理由ではありません。ただ、結果として打ち切りになったとしても、そこから得られるものはあるはずだ、と僕は信じています。


「なんとかなる」という主人公のゆるい決め台詞。それに憧れていた少年時代。最後は打ち切りになるほど人気が低迷した作品だったとしても、きっとどこかで「ひょうひょうと生きたい」という僕の理想に少なからず影響を与えているのです。


 ○


 さて、この創作論もここで打ち切りです。執筆歴1年余りの新参者が丹精込めて書いた何ものにもなれなかった創作論でしたが、案の定、皆さまの役に立つことはなかったと自負しています。それが分かっているので、胸をはってここで打ち切ることが出来ます。後悔はありません。出来ないことに挑戦してみる、というのは全てのものごとにおける第一歩ですから。有意義な創作論が書けなかったとしても、それでいいのです。出来ないことを知ることが始まりです。


 きっと、将来僕が(宇宙を股にかけて)書物を出版する段になってやっと「こんなことも書いていたな」と感慨深く失笑するネタになるのでしょう。この調子だとあと150年もあれば出版デビューも夢ではないので、その時のためにも拙い文章を残しておきましょう。


 いいですか。この創作論の内容はどうでもいいのです。ただ「何も分かっていない」ことを残すのが重要なのです。人も誰しも下手な自分を隠したくなるものです。が、先のことを考えるとどんなに恥ずかしくても、どんなに下手くそでも「やった」という証は残した方が良いです。粗削りだった自分を見直すことで成長を実感できますし、方向性を見失ったときの道しるべになったりするかもしれませんから。


 だから僕もなんにもなれなかった創作論を残します。そして将来、迷子になる方法が分からなくなった時に僕はこの創作論を役立てるのです。


 


 もうひとつだけ、この創作論の役立て方があります。それは僕には出来ません。皆さんにかかっています。これらの文章には教訓などはなにもありません。あるとしたら、なにもない所に意味を見出す皆さんの才能に委ねられています。中身のないことからいかに教訓を得るか。そうした皆さまのに大いに期待しています――。






 P.S. 6/20/2020追記

 5/16に公開したこのエッセイのあと、6/12にまさかの「シャーマンキング新作アニメ21年4月より放送決定」のニュースが流れました。なんというタイミングでしょうか。狙ったように「よみがえって」きたあのシャーマンキング。これは何だか縁を感じますね。楽しみに待っています。次こそ、すっきりしたラストシーンがあれば良いけど、プリンセスでも良い気もする。

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