第9話 完璧な人間になりたい


 ※ある意味ネタなので、マジレス(だからお前はダメなんだ系)は厳禁です。


 バレンタイン翌日の朝です。学生時代は一喜一憂していましたが、社会人になると貰ったら貰ったでお返しが大変なので、自分には関係の無い日と思いながら、やっぱりそれでもそわそわしていました。


 さて、バレンタイン。聖ウァレンティヌスが殉教した日。アメリカでは、男の人が女の人に花を贈る日です。


 遊びに誘った友達の都合が合うのがたまたまバレンタインの金曜日でした。気になっている子だったので、待ち遠しいような、嫌に緊張するような、変な感覚で当日を迎えます。ウォークインの(予約出来ない)イタリアンのお店に行き、ピザとワインを楽しみながら雑談。9時を超えると人もまばらになってきたので、近くのワインバーに移動して、飲みながらトランプとかして遊びました。

 

 夜も1時を超えたあたり。そろそろ、帰らないと……。


 正直に言うと、結構、頑張ろうと思ってたんです。

 話を聞いて、良いと思ったところを褒めて、好意を滲ませられたらなぁって。


 でも、結局この6時間で何も出来なかったんです。

 

 そして、去り際もただ「今日はありがとう」なんてどうしようもなく形式ばった言葉をなんとか残して玄関をくぐり、死にたくなるほどのやってしまった感に包まれて家のソファで爆睡しました。


 窓から差す光に寝ぼけ眼をこすって携帯を見るとカクヨムの通知。もちみいかさん、奥森さん、ねむこさんからのコメントが並んでいます。とても嬉しかったです。すぐに返事を書き始めました。


 そして、音楽紹介エッセイのスキマスイッチの曲にて、ねむこさんからの「完璧な人なんてつまらない」というコメントに返信していた時に閃きました。


 ――それでも僕は完璧な人になりたい


 完璧な人。人の機微を捉えられる人。何をしても素敵な人。何をとっても魅力のある人。

 そんな存在に僕はなりたい。


 世の中には足りないものが少なく、完璧に見える人がいます。


 かつて玉木宏がインタビューを受けていました。

 ――コンプレックスはありますか?

「そうですねぇ、土踏まずが無い所です」

 

 土踏まず!!


 おいおい、玉木さんよぉ。土踏まずってなんやねん。こちとら、身長が足りないとか、足の小指の爪が無いとか、性格が捻じ曲がっているとか、足りない所はいくらでも言えるのに、唯一出てきたのが土踏まず!!


 すげーよ、玉木宏。好き。


 と、謎の玉木愛が育ちながら、同時に、完璧な人間になりたいなぁ、と思うんです。


 完璧な人間って聞くと何故か、冷たい、合理的すぎる、人間味が薄い、みたいなイメージあるじゃないですか。いや、それ完璧な人間じゃないやん。といつも内省します。触れる人にとって素晴らしい人間であるから完璧なんですよ。嫌味、恨み、不快感なんて与えないですよ。むしろ、普通なら欠点に見える部分や取るに足りない特徴でさえ、魅力的になるのです。僕は好きです、そんな人間が。


 だから、僕の好きな人に何かを与えることが出来て、それでほっとして欲しい。可愛く出た鼻毛でも、ふわふわとした背中の産毛でもなんでもいいんです。僕の他愛無い要素が僕の大切な人達を喜ばせることが出来るような完璧な人間になりたいです。


 でも、僕のほくろは誰かを喜ばせるなんて出来ないんですよね。僕は不完全な人間です。


 それが悔しいのです。


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