第2話 真の性格

 ネガティブという言葉。この時代、よく聞く言葉だ。何でも悪い方に捉える、誰かが話してると自分の悪口を言われている気がする、すぐクヨクヨ悩む、小さい事を気にする。……とにかく思考が暗いと言われるネガティブ。


 真の外見は、そんな欠片も見えない男。普通に会社に出社して、デスクワークをし、時々同僚と飲んで帰る。無難に人と接して会話もする。仕事もどちらかといえば淡々とスムーズにこなして、あまり周りに迷惑はかけない。そんな真にネガティブさを感じる人間はあまりいない。そう思われることは、真にはストレスだった。俺、そんなに出来る人間じゃないし、普通だし、俺の愚痴とか言い出したら引かれるな絶対、仕事に来てる自分なんて、外ヅラだから。なんて思いながら、本当の姿を見せれずにいる。真の性格がそうさせているのだ。学生時代、思ったことが上手く言えず、あまり上手に人と接することが出来なかったせいで、真は防衛本能として、「無難にサラッとこなせる自分」を作り出していた。


 真は一か月前に彼女と別れた。原因は彼女の心変わりと浮気。真との約束をキャンセルした彼女は他の男と会っていた。その様を真が目撃するという在り来りとも言えるシュチュエーションだった。少し言い争いになったが、真は別れることを決めた。浮気される自分、浮気した彼女、どちらも許せなかった。ただ、どちらかといえば、浮気される自分が許せなかった方が強かった。 自分の存在や価値を否定されたような気持ちになった。ネガティブな事しか考えられなかった。そんな真でも一か月も経つ今は、彼女の事を思い出してもあまり心は傷んではいなかった。暫くは彼女を作らず気楽に過ごしたいと思っていた。すぐ彼女を作ろうかなと、ポジティブな考えもあるのに、真はどうしてもマイナスな発想になる。


 こんなマイナスな気持ちが多い人間だって、一生懸命生きてる。誰にも迷惑をかけてはいない。ただ、世間がネガティブ=マイナスイメージにしたてあげているだけだ。根が真面目な人間はストレスを溜めやすい。すぐ考え込んでしまう。ただそれだけの事。真はそう思わずにはいられなかった。


 今日も一日の業務をこなし、真は仕事を終えて、朝も寄ったコンビニでお弁当を一つ、二リットルのペットボトルのお茶を1本買い、帰宅した。時計を見ると午後十九時。誰もいない部屋のドアを開け、玄関の電気をつけた。……ほっとする。この空間だけは自分だけのもの。そう思いながらリビングに向かおうとした瞬間、ふっと玄関の電気が消えて真っ暗になった。

「うわっ!なに?停電?」

すぐに窓の外の光が目に飛び込んできた。……とうとう電球切れたか。明日買ってくるか。と急に訪れた暗闇に対して気持ちを落ち着かせた。ついてないな。今日は。欲しいものは買えなかったし、変なことは思い出すし……そんな事を思い出しながら買ってきたお弁当をレンジに入れた。

「あー!箸入ってないじゃん」

ほんと、今日はついてない。続けて起こる出来事に、マイナスな感情しか生まれなかった。ほんの些細な事なのかもしれないが、真はため息をついてソファーにもたれた。


 ほんの小さながっがりが真の性格にはマイナスに感じられる。けろっとしゃーないじゃん!と笑って流せる人間が羨ましい。そうなりたいと気持ちを作る朝もある。だけど一日を過ごしたその夜は疲れきった心がまた真を弱くする。真は決して暗い性格ではないが、すぐ悩む自分の性格を自覚しているだけに自分に対して少しネガティブさを感じていた。





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