革命

 コーストが知らぬ間に、トランプル王国が首都、一〇〇万人都市の王都『ヘックスプルーフ』では、軍の一部が反逆の行動を起こしていた。

 問題は、以前より起きていた。

 『呪われし右腕カースド・アーム』の調整に携わっていた主任技師が元原稿げんこううばい逃走したのだ。

 それ以外の蓄積ちくせきされた知識は軒並のきなみ破壊され、残りかすとも言うべき呪詛じゅそ魔法が残ったのだった。

 それでもわずかな残存情報を頼りに、王国は実験を行った。

 言うなれば、暗黒の儀式である。

 その後の研究で明らかになったのは、この呪詛というべき魔法は対象者が一定以上の知能を持った人間で、契約をしっかり理解しないと不発、つまりは対象者が死んでしまうということだった。

 解析は進んだが、適正がある者はなかなかいない。

 体力、精神力、保有魔力が十分な者を用意し、実験対象者の半数が死に、そして半数が成功した。

 適合者は計一三人。

 しかし、所詮は情報の足りない、有り合わせの残り滓である。

 これだけの苦痛と犠牲を出したにも関わらず、ろくな成果が出せなかったことを恨んだ、奴隷出身の騎士の青年であるセッシ・デスタッチが王の殺害と政権の奪取を敢行かんこうした。

 セッシはトランプル王国に『蹂躙じゅうりん』された小国の人間で、半ば人質扱いであった家族を助けるため、ほとんど強制的に『呪われし右腕カースド・アーム』の量産化実験を受け、その右腕に呪詛を宿していた。

 量産型のその呪詛は、容量に制限のない空のボトルのようなもので、次々に魔法を吸収していった。

 しかし、安定化が不十分なその右腕は、苦痛とともに所有者をむしばんだ。

 このままただの実験台として犬死にするくらいなら、とセッシは同じ『呪われし右腕カースド・アーム』の所有者と共に世界有数の大国に反逆した。

 セッシは最も優秀な量産型『呪われし右腕カースド・アーム』の所有者だったが、元原稿の力には遠く及ばないことも理解していた。

 そして、王宮内の戦いで衝撃の事実を知る。

 『呪われし右腕カースド・アーム』は王の力。

 それがセッシの人生を歪ませることとなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る