神話の戦い
コーストの二倍以上に達する巨体。
非常に体格の良い人間のようだったが、全身は白く光り輝き、背中には同じく白い翼、頭上には
その白い腕には、
その魔神は、異界の言葉でコーストに話しかけた。
一単語すら理解できないコーストに、『
『言語を
――私を呼び出したのは、貴様か?
魔神はそう言っているらしい。
『
本当になんでもありな右腕だ、とコーストは
異界のその魔神の居る地域の言葉で、コーストは
「呼び出したのは他の者だ」
正直に、コーストは答えた。
――だろうな。支配式の契約が見当たらない。
魔神は
「!」
その緩慢な動きと、魔法攻撃の速さの差に驚くコースト。
右腕が即座に掲げられ、黒槍で光の帯と拮抗させ、さらにその魔法を分解する。
『
『油断するな。
異界の者は基本的に全て、人類に敵対する者だと思え』
コーストは自身の保有魔力を半分以上失っていた。
だが、効率良く敵を
たとえ逃げ切れたとしても、この魔神は災厄となって妹や他の者がいる街を襲うかもしれない。
トランプル王国は強大な軍事国家だが、こんな辺境の街の隅々までその軍事力は及んでいない。
ここで仕留めなければ、周囲の街、人里が危ない。
あの姉弟は、
『敵の能力を解析するか?』
「頼んだぞ!
『右腕』!!」
言うが早いか、コースト『
「解析魔法発動、探知……
魔神は、自身の素性を隠すための防壁のような魔法で自身を覆っているようだった。
これにより、魔神は
さらに攻撃の気配を感じ取ったコーストが、
目が回るような高速の立体機動。
そしてじわじわと、コーストは魔神と距離を詰めていく。
遠隔攻撃魔法が使えなくなれば、あとは接近戦になる。
魔神の攻撃の予兆は簡単に分かるため、いちいち魔法攻撃を『
その黒槍は、魔神の周辺を薄っすらと覆う
「人間なら、この上なく即死だが……」
『油断するな。魔神はあの程度では死なぬ』
魔神への分析を続ける『
おそらくは昔、この『
この右腕の素性を知ろうと『
この呪詛魔法自体、なんらかの情報隠匿をされている、ということらしい。
死んだヘイストへの噂話では、トランプル王国の王宮から盗んだ秘術ということだから、色々事情があるのだろう。
貫かれた魔神が一瞬動きを止めるが、黒槍を戻したコーストに再び襲い来る。
錫杖を振るうが、コーストが右腕から放った黒槍でそれを逆に弾き飛ばす。
魔神の手から離れて吹き飛んだ錫杖は、その穂先が近場の大樹へと中途半端に突き刺さる。
それは、残りの穂先以外の重みのため、地面に落下した。
白く輝く魔神の腕から、唯一の武装がなくなった。
「いいぞ。
解析完了まで、あと二、三〇秒ほどだ」
魔神は左右の手から魔法陣を多重に展開した。
ここに来て相手もようやく、コーストと『
魔神が展開した魔法陣は、計四つ。
雷を具現化した長い身体を持つ蛇のような竜や、炎を具現化したトカゲ、サラマンダー。
魔法によって命を与えられた疑似生命体だ。
先ほどまで戦っていたトランプル王国の精鋭たちも使用していた魔法の、さらなる上級版と言えるだろう。
残り二つの魔法陣からは、地面と平行に射出される
『ここまできて厄介な』
コーストは樹上まで跳び上がり、攻撃を回避する。
魔神も翼をはためかせ、ゆっくりと上空へと飛翔する。
魔神がさらに展開した魔法陣は一つ。
ただし、先ほどよりも遥かに巨大なものだ。
発動を許せば、周囲一帯が消し飛ぶかもしれない。
確実にこちらを仕留める気だ。
さらに樹木の上から狙いを定めて攻撃するべく、魔神は上昇を続ける。
『さらなる呪いを、受け入れる気はあるか?』
右腕からの問いかけに、
「今、死ぬよりはマシかな」
と、コーストは同意した。
コーストの右腕から両肩にかけて、むず
気がつくと、コーストの上半身が黒く染まり、
『飛翔せよ!』
がっ!
とコーストの口から息が吐き出された。
コーストの身体は羽毛のように軽くなると同時に、
二つの魔法が同時に発動しているのだ。
大地を置き去りにして
『敵の解析が完了した。
脳が三、心臓が三だ』
魔神の体内に分散化されて存在する重要臓器の位置を『
即座に黒槍が魔神に突進をかける。
今までで最大の、計六本の槍が具現化し、魔神の頭と胴体を刺し貫く!
死の
「さっきの
コーストが機転を効かせ、『
コーストは最大速度で降下し一本の黒槍を伸ばして、大樹の下にあった錫杖を破砕する。
「これで、本当に終わりだ」
『
『気づかなかった。
異界の生物が、これほど生命力があるとは』
「完全な分離体と見せかけて、錫杖は脳にして心臓。
おそらくは、あちらが本体だった……」
コーストは、
幸い、馬と荷物は
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