お人形遊び想(一) プーリップファミリー計十五体に書斎を制圧される。
筋トレと文章書きがライフワークであるなら、お人形遊びは趣味である。
三十年近く生きてて今まで無趣味だった。
この趣味を初めてまだまだ浅いのだが、ランゲルハンス島シリーズを記すにあたって必要不可欠な趣味になってしまったので今回は記そうと想う(筋トレ? ちゃんとやっとうよ)。
二年前の正月を過ぎたあたりの事。文章の道を志す者として再び一本小説を記した儂は作中人物を凝り固めたい、と改めて設定を作ろうとしていた。試しに絵を描いてみるがどうもしっくり来ない。模写なら得意なんだけど、絵をゼロから掘り起こすの苦手なんだよね。従ってどうするべきか悩んでしまった。
どーすりゃいいのさ。なんか手は無いか。
……と、鼻クソほじりつつショッピングサイトのアプリを眺めて現実逃避していたらある商品が眼にとまった。
プーリップ(お人形さんの種類)の素体セットである。
ここからは儂みたいな浅い経験者や初めての人に向けて記そうと想う。
玩具売り場で売ってるリカちゃんやらジェニーちゃんを先ずは想い出して欲しい。顔があるのは勿論、髪生えてるのは当たり前、服も着てるし靴もちゃんと履いてる。
しかし素体はね、早く言っちゃえばハゲでマッパでのっぺらぼうなのよ。つまり『おどれが顔描けや』ってな状態。
おおおおお! これなら好きなようにコーディネイト出来るではないか! 作中人物を絵じゃなく立体で表現できるなんて! これで設定がはかどるぞ! 折角だからニエ(ランゲルハンス島シリーズに登場する女の子の一人)作るっぺや!
と、ぐふぐふ笑いつつ勢いに任せて購入してしまった。
さて買ったは良いものの、どうすれば良いか。手許に届くのは髪が生えた可愛いお人形さんでは無く、量産型ハゲマッパである。弄くって可愛いお人形さんに変えるのは儂である。責任重大。お家に帰りたいよう。
幸いな事に既に素体ではないプーリップを一体所有していた(プーリップの主流は素体ではない。お顔がちゃんとついた物……つまりその手の道楽者から言えば『メイクをした』物が主流。儂もその手の道楽者だが)。恐れ多くて服を引ん剝けなかったもののお人形さんのポージングやら触る時の力加減などは多少の心得がある。今回はお絵描きして組み立ててれば良いだけだ。それだけの事をクリアすりゃいいだけ。そう思ってネットで素体の組上げ方やメイクの仕方、必要な道具を調べてみた。
この手の事は検索すりゃ直ぐに出て来る事なのでこちらでは記さない。野暮なのもあるし面倒だからな。
施術する日には少し緊張した。しかし案ずるより産むが易し。浦安市。薄いメイクって事が良い方に働いた所為か、初めてにしては結構巧くいった。行程を雑に纏めるとのっぺらぼうに粉末状のソフトパステルやアクリル絵の具でアイシャドウやチークを叩き、眉や睫毛を書いて組み立ててカツラ乗っけるだけなのだ。巧い下手の差はあるだろうが、作業としては何ら難しいものではない。多分小学校高学年の子供でも出来ちゃう作業だと想う。
ニエを作った儂は今までになく浮かれて作中に登場する服に似た服を買って着せてやったり、部屋を片付けて写真をとって遊んだ。
味を占めた儂は『そんなに労力割かない作業ならもう一体作ってみっか!』と新たな素体を購入した。
この時点で頭の中から『作中人物を絵じゃなく立体で表現できるなんて! これで設定がはかどるぞ!』なんて殊勝な考えは消え去っていた。そう、お人形さん自体にハマってしまったのである。
……一体で止めておけば良いものを、ユウ、アメリア、カナ、パンドラ、シノブ、コマキ、ヘカテ……と、どんどん増えて行く始末。
今じゃプーリップファミリーだけで十五体は書斎に生息している。んもう書斎だか人形ジャングルだか訳分からない状態である。『フィギュアを一体買うとその一体が仲間を呼ぶ』と聞くが、人形もそれと同じ。一体だけじゃ寂しそうだから、とついついもう一体用意して差し上げてしまう。……恐ろしいな。
そんな恐ろしい罠に引っかかってしまった所為で書斎は人形に制圧されたが、儂の人生に漸く趣味らしい趣味が出来た(それまでは反復横跳びが趣味だと信じ込んでた)。
こんなに人形を持っていて呆れられると想うが実はプーリップ十五体だけではない。布人形やレジンキャストドールと言う種類の人形もプーリップ以上に所有している。
……頭がイかれてるんだよ、儂は。それくらいお人形さん好きなの。
しかし飾っているだけではない。儂のツイッターを読んで下さってる奇特な方ならご存知かもしれないが(まあ居ないわな)小説掲載の宣伝の際に作中人物を模した人形を撮影して共に掲載しているのである。文章だけのツイートよりも彩りがあるので眼にとまり易いらしい。少しはプラスの効果があるので助かっている。
次回あたり、お人形の服を通して知った、一から人形を作ってしまう偉大なる巨匠のお話を記そうと想う。
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