-4.And then-

 コトが一段落したあとで聞いたところ、俺が「結婚」だと思っていたのは、どうやら「結魂」の間違いだったらしい。


 結婚も「二世の契り」なんて呼び方をすることもあるが、「結魂」はまさにその上を行く深い繋がり。なにせ、魂と魂の一部を結び付け、離れないようにするのだから。

 その副作用によって、俺は彼女と文字通り「生命」を共有することとなった。

 簡単に言うと、俺とゲルダの寿命が平均化されたのだ。800年近く生きるはずだった彼女は、その半分足らずしか生きられなくなってしまった。たとえて言うなら80歳まで生きる長寿の家系の人が「貴方は40歳くらいで死にます」と宣告されたようなモノだ。


 「本当に良かったのか、ゲルダ?」

 「いいのよ。私ね、ずっと思ってたの。もし私がニンゲンだったなら、あなたとずっと一緒にいられるのに、って。だから、全然後悔はしてない。

 ケインこそ、いいの? そんなに長く生きてると、普通の人間として過ごすのは、きっと難しいわよ」


 確かに、おとぎ話とかでも、不死や不老長寿を手に入れた人間は、発狂したり迫害されたり大概悲惨な末路をたどっている。けれど……。


 「ああ、お前が共にいてくれるなら、大丈夫だ」

 俺はひとりじゃない。この可愛らしく、ちょっと我がままでやきもち焼きだけど、誰よりも愛しい「妻」がそばにいてくれるなら、どんな時だって楽しく暮らせるに違いない。


 「愛してるぜ、ゲルダ」

 「! うれしい……私もよ、ケイン」

 そうして、俺達は改めて誓いのキスを交わしたのだった。


 ──と、ココで終われば綺麗なハッピーエンドなんだが。


 「ほほぅ、人がわざわざ助けに来てやれば、ちゃっかり女とイチャついてるとは……なかなか隅におけんな、ケイン」

 「げぇっ、士団長ぉ~!?」

 「小隊長ってロリコンだったんだ……」

 「ち、違う、ちっちゃい子が好きなんじゃない! 好きになった娘がたまたまちっちゃかっただけだ!」

 「こ、この視線! もしかして、私、他の人にも見られてるの!? きゃあーーー!」


 どうやら無事本陣にたどり着いたローランが、救援をよこしてくれた……のはいいとして、何故、アナスン戦士団長御大が来られるのでせう? ていうか、何だよ、このカオス!?


 ともあれ、俺はそのまま本陣に帰還。ゲルダも俺と結婚した影響で普通の人間にも見えるようになってしまった(そして実体化を解く能力を失った)ので、同じく客分として本陣へ。


 結局その戦いは俺達の国が勝利する形で幕を閉じ、比較的我が国に有利な形で10年間の休戦条約が結ばれることになった。


 しばらく大きな戦いがないと踏んだ俺は、上層部に転属願いを出して、いまの職にありついた……ってワケだ。

 辺境警備隊は、3~4年で転任するから、俺達夫婦が歳食わなくても不審に思われないからな。


 そういや、そろそろ此処も……。


 「ケイン、王都から手紙が来てたわよー」

 お、噂をすれば……どれどれ。「辺境警備隊隊長職ケイン・ニーゲン。以下の地への転任を命ずる。新しい赴任地、ルミクニガータ」……って、どこだ、ここ?」


 「あ、それ、私の故郷ね」

 は?


 「北方の辺境で、人間の数はかなり少ないかな。代わりに私達雪妖精とか雪狼フェンリルが住む里が近くにあるの。ちょうどいいから里帰りして来ようかしら」


 実は、俺とゲルダは、当時の部隊のみんなの好意で王都で人間流儀の結婚式を挙げたんだが、彼女の実家──雪妖精の家族の方には、事後報告だけで、未だ直接顔を出したことがなかったりする。


 ゲルダいわく、彼女は雪妖精の王族……に代々仕える侍女の家柄で、母親が現女官長、いちばん上の姉も女王に仕えているという、結構な名門らしい。

 そんな嫁の実家に、駆け落ち同然で一緒になった旦那(現在ほぼ無位無官)が顔を出すって──どーいう罰ゲームだよ!?


 「まぁまぁ、ここは覚悟を決めて、「娘さんを僕が美味しくいただきました!」って頭さげるトコロだと思うよ?」

 その文章はおかしいだろ!? つーか、そんな事言ったら、俺、氷漬けにされちまうぞ!!


<Happy End?>

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