第56話 邪神の魔石
国民の安全、敵戦力、現状を把握するため、僕達はパーティーを分けて偵察を行う事となった。
僕とルナ、エイルチームは一旦僕が帝都に向かい、瞬間移動で迎えに行く。
一方ロラン達は魔族軍をファフがブレスで薙ぎ払いながら、おおよそ偵察らしからぬ行動で、リスティンを目指していた。
「ロラン、こんなんでええんか?」
「ああ、構わない、我々は一旦このままリスティン上空を通過してから偵察行動に移ろう」
「ロランも案外めちゃくちゃだな……」
「また来たで、あいつら数多過ぎるわ、ほんま」
「確かに、ベルゼバブ軍の勢力がこれ程までとは思ってもみなかった」
「ウチもこの規模は聞いたことない」
「昔はもっと魔族少なかったで」
「そうなのだな、この数、ハルトに出会うまでの我らなら、どうする事も出来なかっただろうな」
「でも今は違うよな!」
「ああ!」
「取り敢えず蹴散らすで!」
「よろしく頼む」
魔族軍攻撃のためファフは急降下した。だが魔族軍の様子が何かおかしい。
「ん、待ってくれファフ!」
「どないしてん?」
「少し離れた所で降りれるか?」
「オッケーや」
(あの魔族はもしかして、魔人では無いのか?だとしたらこの軍勢も説明がつく……奴らもしかして帝国軍を……)
ロラン達は魔族へ近付き、その様子を注意深く探った。魔族軍は、あの時のポレートと同じく、邪悪な魔力を纏い、帝国軍の鎧を装着していた。
「思った通りだ……あの魔族は帝国軍だ」
「あの時のポレートと同じだな」
「……どう言う意味ですか?……」
「そうかファフは知らなかったな、魔族の奴らは特殊な魔石を使って人間を魔族、つまり魔人に変体させる事が出来るんだ」
「魔石で魔人……?!」
「どうした?何か思い当たる節でも?」
「……それはもしかすると、邪神の魔石かも知れませんね」
「「邪神の魔石?!」」
「そうです。神話の時代、邪神が私達との戦いで、使徒を生み出すために使っていた魔石です」
「使徒……邪神の尖兵……」
「もしかして、帝都もやべーんじゃねーか?」
「その可能性は高いですね」
「……ファフ、魔石が使われた者を、元に戻す事は可能なのか?」
「残念ながらそれは不可能です。アーサー様も、フレイヤも色々試みましたが、無理でした」
「そうなのか……」
「時間を掛ければかけるほど、被害が拡大します。私としてはこれ以上被害が増えないうちに強行する事をおすすめします」
「まあ、妥当だろうな」
「それは私も同意だ、一旦ハルトに連絡を取る」
「それがいいでしょうね」
『ハルト今大丈夫か』
『ああ大丈夫だ、もう少しで帝都に到着だ』
『そうか、なるべく急いでくれ』
『ん……何かあったんだな』
『帝国軍が魔人に変えられていた……恐らく帝都でも同じ事が……』
『……な……なに……』
『魔人化には神話の時代に、邪神が使ってた、邪神の魔石が使われているそうだ。ポレートの時と同じだ』
『邪神……』サマエルか……。
ロランの話が本当なら、この惨劇の原因は僕だ……サマエルを仕留められなかった僕の責任だ。
サマエルと言う障害がありながらも、神の力を取り戻す事を恐れた僕の怠慢だ。
あの時、僕がサマエルを討つ事が出来ていたなら、帝国は今も平和だったかも知れない。
『ハルト?……ハルト大丈夫か?』
『あ……ああ、すまない大丈夫だ』
『これ以上を犠牲者を出さない為にも、我等は強行する』
『その結論に至ったって事は、元に戻す方法は無いんだな……』
『そう言う事だ』
『分かった、3人で大丈夫か?』
『神竜と勇者と賢者だぞ?そっちが不安なら合流してやってもいいぞ?』
『そうだったな、任せる』
「よし、ファフ、レヴィ行こう。リスティンは我等で解放する」
「分かりました」ファフが竜化する。
「帝都軍には悪いけど、手加減できひんで」
「しかし、相変わらず凄いギャップだな(喋り方が)」
「そら、人間と竜やからな!テンションもちゃうで!」
ロラン達は一直線にリスティンを目指し、途中遭遇する魔族、魔人混成軍を跡形もなく焼き尽くした。
そしてリスティンに迫った。
「ファフ、上空から生き残りはいないか確認したい、一旦街を旋回してくれ」
「オッケーや!」
リスティン上空から街の様子を確認した。魔石の埋め込みは、広場で行われているようだ。生き残った帝国軍と街の人々は広場から城にかけて集められている。リスティンにはまだ助けるべき人が残っていた。
「ファフ、正門まで戻ってブレスで吹き飛ばしてくれ」
「任しとき!」
ファフ達は正門まで戻り、城壁もろとも正門を吹き飛ばした。
「ファフ、私とレヴィは先行して広場に向かう、街はぶっ壊してもいい、ファフは暴れながら広場を目指してくれ」
「陽動作戦ってやっちゃな!オッケーや!」
(以前の私なら、何も出来なかったかも知れない、だが今の私は、聖剣に選ばれた勇者だ)
道中遭遇する魔族はロランが斬り捨て、2人は広場を目指した。
僕は常々ロラン最強説を提唱していた。元々剣技は一流だったロランが聖剣を得た事で、僕のロラン最強説が現実味を帯びる。
広場に近付いた所で、ロラン達はファフの到着待った。
ロランはファフにひと暴れしてもらい、その混乱に乗じて帝国民を助ける算段なのだ。
ファフがロランからも見える場所まで迫ってくると魔族達は慌ただしく動き出した。ファフは魔族達の注意を上手く引き付けている。
「レヴィ、今の間にロックオンを頼む」
「おう、言われるまでもないぜ」
いくらロランが強くなったとは言え多勢に無勢だ。ロランのチーム編成の妙が功を奏す。
「ロックオン完了だ!」
「よし、やってくれ」
「ファイヤープリズン!」
ロックオンを完了させたレヴィが放ったファイヤープリズンは、僕のウォータープリズンを元にレヴェイが完成させたオリジナル魔法だ。その恐ろしさはウォータープリズンの比では無い。
ファイヤープリズン発動と当時にロランは捕らえられている帝国軍、領民の解放へ向かった。監視に当たっていた魔族はレヴィのファイヤープリズンにことごとく焼き尽くされていた。僕の中でレヴィ最恐説が生まれた瞬間である。
「勇者ロラン様だ!賢者レヴィ様!」
「ロランだ!レヴィ様!」
「俺たち助かるぞ!」
人々はロラン達の登場に嬉々とした。
ロランは捕らえられていた帝国軍に領民を避難させるように指示を出した。レヴィは領民避難の護衛についた。
「あらあら、広場が騒がしいと思って出て来てみたら、神竜とあの時のお嬢ちゃんじゃない」
聞き覚えのある声にロランが振り返えった。
「魔王ベリアル……何故貴様がここに……」
「お久しぶりねお嬢ちゃん、あのイケメンのお兄さん、確か……そう、ハルト、ハルトは一緒じゃないの」
「ハルトはここには居ない」
「あら、残念」
「何故貴様がここに?!ベルゼバブと結託したのか?」
「冗談でしょ、何故私があんな辛気臭い男と」
「まさか、偶然なのか?」
「偶然と言えば偶然だけど……謀られちゃったのかもね……あの男、後で覚えてなさい……」
(謀られた……あの男……背後に魔王を動かす程の黒幕がいるのか……)
「お嬢ちゃん、お話しは終わりよ。ちょっとはしゃぎ過ぎよね」
「それは貴様だ、邪神の魔石なんて……ふざけた事をやってくれる」
「あら、邪神の魔石の事なんてよく知っていたわね、神竜に聞いたのかな?」
「そんな事は、どうでもいい!」
「そうね、確かにどうでもいいわ……そろそろ始めましょうか?」
「ああ、掛かってくるがいい」
ロランと魔王ベリアルの戦いが始まろうとしてた。
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