改革のススメ

第43話 さよならマイオピア

 グーテンベルクに拠点を移す事になった僕達は、一旦マイオピアに戻る事へした。ギルドへの報告もあるが、お世話になった人達へ挨拶回りする事が主な目的だ。因みに家は家財道具ひっくるめてそのままにしておく。マイオピアでの拠点にするためだ。


 調査団に参加したマイオピアの冒険者達は、もう少し聖皇国で羽を伸ばしたいとの事で、別行動となった。


「さて、マイオピアまでの移動だが、どうする?馬車でも調達するか?」


「ロラン、心配には及ばない、もっと時間を有効に使おう」


「ハルトには何か良い案でも有るの?」


「ああ、皆んな近くに来てくれ」


「な、何よ変な事しないでしょうね……」

「ハルトなら良いけどな!」

「いやん、朝から」

「わ、わ、私はそう言う事はもっと個人的に……」


「おい……」

 これが安定の僕達のノリだ。


「まあ、抱きしめるがな、絶対離れるなよ」


 皆んなを抱きしめて、瞬間移動で、マイオピアの家のリビングに戻った。


「もう、良いぞ」


「おっ……おおおおおおおおおお」

「これが、あの時私のところに来た瞬間移動……」

「な……なんと……」

「アンタ……本当に何でも有りね……」


「認識してる人と場所にしか行けないけどな」


「いや、それで充分だろ……」

「まあな」

「これ……各地に拠点を作っておくと便利かもね」

「それはいいアイデアだな」

「お金いっぱい稼がないとね」


「よし、とりあえず僕は、学園に顔を出してくるよ。停学がいつまでか、聞いてこないと」


「私達は……まずギルドよね……」


「報告すること、沢山有るもんね」


「すまん、そっちは任せる」


「何処で合流する?用件が終わったら家に戻るか?」


「やっぱ、カウンセルだろ!」


「そうだな、僕はアレイスター先生に日程を聞くだけだから、終わったらギルドに向かうよ、レビットにはダイヤの報告しないとダメだからな。皆んながギルドに居なかったら、カウンセルに向かうよ」


「分かったわ」

「何かあれば、念話するね」

「ああ、助かる」


 そんな感じで、僕は学園を目指した。1週間も経っていないのに、妙に懐かしく感じた。


 風貌が変わってしまった為か、誰にも声を掛けられなかった。少し寂しい。


 丁度、休憩時間なので、そのまま職員室に向かった。職員室に向かう迄に何人かの生徒とすれ違ったが、皆んな妙によそよそしかった。髪の色だけでなく、面構えも少しキツくなったって話しだから、話しかけにくくなったのかも知れない。


 コンコン「失礼します」


「アレイスター先生、久しぶり」


「……き……君は……ハルトなのか?」


「当たり前じゃねーか」


「随分と雰囲気が変わったな……」


「色々あったからな、でも中身はそんな変わって無いぞ」


「話し方が……」


「ああ、これな、気に入らないなら戻すが?」


「いや、別に構わない……」


「理解出来ないかも知れないが、この話方の方が、魔力が高まるみたいなんだ」


「それは、私も聞いた事がある」


「えっ……そうなのか?」


「魔法は強い意志、イメージが大事だから、強い口調のほうが良い魔法が使えるとな」


「なるほどな……」


「その髪の色はどうしたのだ?」


「魔王と戦った時に、パラダイムシフトが起こってな……喋り方とかも、その時の名残りだ」


「そうか……大変だったんだな」


「ああ」


「ん……待て……今、魔王と聞こえたが……」


「ああ魔王アバドンを倒した。そのうち、ギルドか皇国から発表があるはずだ」


「…………」

 アレイスター先生の意識が何処かへ行ってしまわれた。もうこれの対処にも慣れっこだ。


「おーい、センセー帰ってこーい」


「……あ、すまん………しかし、君と話していると、一つ一つ驚くのが馬鹿馬鹿しくなってくるな」


「そう言わないでくれ……そんなことより、停学はいつまでだ、色々状況が変わってな、グーテンベルクに移住することになったんだ」


「なに!……それでは学園に通うことなど出来ないではないか……」


「そうでもないさ、移動手段はいくらでもある」


「エイダと一緒に作ったエアフライボードもあるし、瞬間移動も使える」


「…………ちょっと待ってくれ……どこから突っ込んでいいのか分からない……」


「ちょっと待ってろよ」

 僕は瞬間移動でルナ達の元へ行き、レヴィを連れてきた。


「よう、アレイスター久しぶり!」


「…………」


「ま、こんな感じだ」


「お前も大変そうだな……じゃウチはまだやることがあるから、また今度な」

 レヴィをルナ達の元へ連れて帰った。


「ただいま、今のが瞬間移動だ」


「…………悪い……理解が及ばない……」


「そんなに深く考えなくてもいいさ、そんな能力だと思ってくれれば」


「……分かった……考えても分からないしな、そうさせてもらおう……」


「で、停学は?」


「あ、そうだったな……一応来週からと言うことになっている」


「分かった、じゃ、また来週に来るよ」


「ちょっと待て……そもそも、君は、学園で学ぶことがあるのか?」


「馬鹿な事言わないでくれ、まだまだ沢山ある。僕は全ての魔法をマスターしていないし、その応用方も分からない。これからもよろしく頼むよ、アレイスター先生」


「そうか……分かった」

 予鈴が鳴った。


「お、そろそろ授業だな、今度こそ、またな」


「うむ、では週明けに待っているよ」


 僕はその足で、ギルドに向かった、授業が始まったこともあり、学園では誰とも会わなかった。ギルドに到着するも、ルナ達の姿は見えなかった。


「リトン久しぶり」


「え……あれ、すみません……どちら様ですか……?」


「おいおい、マジかよ……忘れちまったのか?」


「す……すみません」


「おい、テメーなにリトンちゃんに絡んでんだ、新手のナンパか?」

 見知らぬ冒険者に絡まれてしまった。


「違いますよ!そんなんじゃないです!」リトンが慌てて仲裁に入る。


「見かけない顔だな、よそ者が粋がってんじゃねーぞ」


「よそ者でもねーし、粋がってもねーし」


「何ブツブツ言ってんだ、テメー」

 連れの男も一緒になって絡んできた。


「面倒だな……お前らは何がしたいんだ?僕をブチのめして、リトンにいい格好したいのか?」


 2人の男は顔を見合わせ「そんなところだ」と、ほざいた。お前こそ新手のナンパだろって突っ込みそうになったが、別に新手ではないし面倒なので……


「もういいから、掛かってこい」安い挑発に乗ってやった。実はこの手のトラブルは始めてだ。


「揉め事は困ります!!」

 改めてリトンが仲裁に入る。


「大丈夫だよリトンちゃんすぐに終わるから!」勢いよく2人が殴りかかってきたが、両手で彼らの拳を受け止めた。

「痛ってててっっっっっ!!放せ!!テメ!放しやがれ!!!」

 うるさいので、さらに強く握ったら、その場でへたり込んで静かになった。


「あ……あれ……もしかして……ハルトさん!」


「ああ、やっと気付いてくれたか、本気で忘れられたのかと思って、もう少しで泣くところだったぞ」


「いやいや、マイオピアの英雄、ハルトさんを忘れるわけないじゃないですか!」

 しっかり忘れていた。


「その呼び方はやめてくれ……」


「ても、随分雰囲気が変わられましたね……」


「あれから色々あってな、レビットは居るか?」


「あ、今、ルナ様達とお話中です」


「じゃぁ混ぜてもらおうか」


「はい!」


「お前らはどうする?まだやるか?」

 男達はへたり込んだままで、声も出ない様子だったので手を放してやった。


「よし、行こう、案内してくれ」


「いいんですか?あれ……」


「ああ、僕は心が広いからな、あれぐらいで怒ったりはしない」


「すみません!英雄ハルト様とは知らずに!!!」

「すみません!」素直に謝ってきた。


「許す、だがお前らはもう少し、DHAとカルシウムを摂れよ」


「「DHA?カルシウム?」」


 僕は、彼等にとっては謎の言葉を残し、レビットの執務室まで案内してもらった。


 コンコン「リトンです。ハルトさんをお連れしました」「入ってもらってもいいよね」

 レビットは相変わらず変な喋り方だ。


「久しぶりだなレビット」


「おや、色々変わったっちゃね……魔力というか雰囲気というか……なんだろうね」


「色々あったんだよ、早速だが僕の話しはこれだ」

 レビットにダイヤランクの冒険者登録証を見せた。


「やっぱりね……やっぱり君は凄いね」


「そんなことより、調査結果の続きだろ」

 僕は空いていたレビットの隣に腰を下ろした。少し視線が痛かった。


「私は失礼します」リトンは受付業務に戻った。


「もう、調査の話は終わったわ」

「今はハルトの悪口で盛り上がってたぜ」

「マジか」


「まあ真面目な話し、拠点を移す件で少し問題があってな……」


「あ、そうか、今までルナ達が請け負ってくれていた、高難易度クエストの受け先か?」


「君は相変わらず話が早いよね、つまり、そう言うことよね……」


「それなら僕が受けて、必要があれば皆んなに取り次ぐよ、だから心配するな」


「本当、それは助かるよね」


「持ちつ持たれつだ、前にも言ったが、僕はマイオピアには思い入れがある」


「私もそれでいいよ」


「あ、すまん勝手に決めてしまった」


「いや、我らもレビット殿にはお世話になっているのでな」


「じゃぁそう言うことだ、厄介なクエストは学園に報告してくれ」


「そうさせてもらうよね」


 話がまとまったので、僕たちはギルドを後にし、一旦帰宅した。


「さて、僕はひとまずグーテンベルクに行って、みんなが来ることを伝えてくるよ」


「私も一緒に行くわ」「私も」「もちろん私もだ」「ウチもウチも」


「あれ?挨拶はいいのか?」


「挨拶だけじゃ素っ気ないからって、レビットさんが今度送別会してくれることになったの」


「なるほど」


「だから、いつでもいいわよ」


「オーケー分かった、でも僕もまだグーテンベルクに行ったことがないから、王都を経由してもいいか?」


「大丈夫よ」


「了解だ、みんな離れるなよ」

 僕は瞬間移動の為に皆んなを抱き寄せた。移動ポイントは人通りが殆ど無い、ドリーと王都へ行った時に、一旦着陸したあの場所だ。


 この時僕は、あんなことになるなんて、思ってもみなかった。

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