第39話 謎を解決しに来て増える謎

 生まれつき神だと、剣神達から告げられた僕には、一つの疑問があった。生まれつきと言うのは、波瑠悠翔として生まれた時のことを指すのか、ハルトとして生まれ変わった時のことを指すのかである。悩んでいても仕方ないのでフレイヤ様に聞くことにした。


『フレイヤ』


『お久しぶりですハルト』


『久しぶりだな、突然だけど、今からそっちに行ってもいいか?』


『私は別に構いませんよ』


 瞬間移動でフレイヤの元へ瞬間移動した。


「あら随分雰囲気が、変わられましたね」


「そういうフレイヤは変わらず美しいな」


「まあ、ありがとうございます」


「フレイヤ、僕がここに来た理由は分かってるよな?」


「もちろんです」


「早速本題なんだけど、僕がデミゴッドになってしまったのは、今の世界に転生した事が原因なのか?」


「違いますよ、ハルトは転生前からデミゴッドでしたよ」


「お……おう……マジか」


「マジです」


「なあ、フレイヤは、僕の事について、妙に詳しいよな……やっぱ、その辺りが関係してるのか?」


「そうですね」


「フレイヤは僕の知らない僕の事を知っているって事か……」


「そうですね、でも……教えてあげませんよ」


「ん……それは何故なんだ?」


「それは、あなたと交わした約束だからです……」


「おっ……おう……マジか」


「マジです」

 何だかもどかしい、目の前にある宝箱の鍵を持ってなくて開けられない気分だ。


「ハルト、自分探しを今後の生きる目標にされたら如何ですか?」


「自分探し……」


「はい、自分探しなんて、なんとなく格好良いじゃないですか」

 ちょっと厨二っぽいけど惹かれる。


「ま……まあ、確かに」


「でも、こんなにも早く、神になるとは思ってませんでした……むしろ一生ならないと思ってました」


「そうなのか」


「はい、ハルトは自身の神格とは対極な人物だったので」


「例えば?」


「ヘタレなところとか、話し方とか」


「そ……そうなのか……」


「はい、因みに、見た目と話し方の変化は神格の影響ですよ」


 見た目はあの痛みが原因だと思っていたが、違っていたのか……


「見た目は戻りません。でも話し方は昂っている気持ちが落ち着くと戻ります……でも……」


「何かあるのか?」


「ハルトの場合は今の話し方の方が、神格を強く維持できます。戻っても今のままを維持する事をおすすめします」


「話し方で、変わるのか……でもフレイヤは丁寧な喋りじゃないか?」


「私はそういうキャラの神なので、荒々しい言葉を使うと、神格が落ちてしまいます」


「なるほど……神も色々あるんだな」


「そうですね、もう一つネタバレすると、ハルトの能力は元々持っていた能力の封印を解いただけです。私が与えたものでは有りませんよ」


「お……おう……マジか」


「マジです」


「まだ他にも封印されているのか?」


「神化した事で、全ての封印は解けてますよ。神格を強くして、思い出してください」


「神格ってどうすれば強くなるんだ?」


「信者の数を増やすとか、目立つ活躍をするとか、存在感を強くする事ですかね……」


 だから邪神であるサマエルの存在感は凄かったのか……納得だ。


「いつも、色々ありがとうな……僕はいつまで経っても君に頼りっきりだ……?」


「何だ今のセリフ……?」


「あは、魂は私の事を覚えているようですね」


「そうだな……でも、無意識じゃなくても感謝してるよ。ディアナの件とか、本当に助かった。ありがとう」


「あら、その件は存じ上げませんね……」


「お……おう……マジか」


「マジです……」

 フレイヤだとばかり思っていたが、他にも僕の協力者がいると言うことか。


「ま、いっか……」


「いいのですか?」


「ああ、あれは悪意ではなかったからな」


「そうですか」

 

 謎を解決しに来て、謎がまた一つ増えた。


「さて、今日も色々ありがとう、フレイヤまた来るよ」


「はい、いつでもお待ちしています」


 取り敢えず聞きたい事は聞けた。そしてお礼を言わなければと思っていた件に、フレイヤは関わっていなかった。


 また、謎が増えてしまったが、ディアナの好意は本物だし、陰謀めいたものは感じられない。考えなくても大丈夫だろう。


 流石に今日は限界なので眠る事にした。


 そう言えばサマエルの言ってた眷族って誰の事だろう?色々有り過ぎるとやっぱり何が漏れてしまう。その辺は神も人間も変わらない。


 ___翌日、疲れているはずなのに早く目覚めた。でも何だか気分がスッキリしていたので、ホルダーを散歩する事にした。


「あれ、ロラン」


「ハルト……」


 ロビーのカフェにロランがいた。


「早いな」


「君こそ」


「何か、スッキリ目覚めちまってな……つか、ロランの方が早いじゃねーか」


「私は眠れなかったのだ……」


「勇者になっちまったからか?」


「……そうだな……」


「もしかしてあれか、責任感に押し潰されそうになってるとかか?」


「わかるか……」


「ああ、僕なら逃げ出してしまうような重圧だろうからな」


「あれ程の成果を上げておいて、よく言う」


「僕は、ルナやロランみたいに立場がないから、気楽なんだよ」


「そんな物なんだな……今までと同じ事をするだけなのに、立場が変わると言うだけでこのザマだ……ルナはこんな重圧の中、よくやっていたと思う」


「そうだなルナは強いな……でも僕から言わせればロランもエイルもレヴィも強い……お前らのパーティーに掛かっている期待は相当だからな……そんな中で活躍している皆んな凄いよ」


「そんな事はないだろう……」


「じゃあ重圧に押しつぶされたいのか?」


「馬鹿なことを言うな!」


「なあ、ロラン……お前は純粋な剣技だけなら、恐らく世界一だ。ルナだって敵わない。そのお前が聖剣を手にしたんだぞ?もっと自信を持てよ」


「し……しばらく会わない間に君は随分変わったな……」


「昨日も言ったが口調だけだ、基本的には変わってないさ」


「言葉が与える印象なのだろうな、私は今みたいに強く言われた方が効くようだ」


「そうか、この口調も役だって幸いだよ」


「しかし口調が変わってしまうような現象など、私は聞いた事がないぞ」


「僕もない……でも気持ちの昂りがそうさせているんだから、不思議だよな」

 実はもう落ち着いているがフレイヤに言われた事を実践している。そのおかげでロランを勇気付けれた。


「じゃあ、僕は散歩に行くけどロランはどうする?」


「ハルトの言葉で少し落ち着けたよ、まだ早いから、少し部屋で休んでおくよ」


「了解だ、また後ほどな勇者様」


「もう!やめるのだ!」

 ロランは照れ臭そうだが、まんざらでもない、いい表情だった。


「いい顔してるぞ、ロラン」

 僕は宿を後にした。


 僕は散歩がてら、探知を町中に張り巡らせ、魔族の反応を調べた。だが魔族の反応は見つからなかった。ブロエディ卿のように、魔族の反応が出てくれた方が、ある意味分かりやすくてよかったのだが、簡単には行かないようだ。


 しかし聖剣らしき聖なる反応を見つける事が出来た。そう言えばルナとエイルから聖皇国にはエクスカリバーがあると聞いていた。恐らくその反応だろう。当然ルナとロランの位置も把握できる。案外便利な機能かもしれない。


 僕は下見を兼ねて広場からホルダー城へ繋がる大通りへ移動した。早朝だから殆ど人通りはなかったのだが、前方から仰々しい集団が近付いてきた、誰かの護衛をしているようだ。


「待ってほしいです」護衛されている女の子に呼び止められた。


 レヴィに負けないぐらいロリ顔でレヴィをはるかに凌駕する巨乳だ。ロリ顔巨乳美少女は修道服を纏っている。アバドンの件があるから教会関係者とは関わり合いたくないのだが……


「あなたは、導師様なのです?」


「違うぞ、いきなり何なんだアンタ」


「貴様、聖女様になんて口の利き方を!」

 察しはついていたがロリ顔巨乳の美少女は聖女だったらしい。それよりも護衛の者の態度に苛立ってしまった。今までの僕ならそんな事あり得なかったのだが、つい……


「つーか、突然人を呼び止めておいて上からか?テメーらは何様なんだ?」

 タンカを切って険悪ムードにしてしまった。


「やめるのです!」

 すかさず聖女が仲裁に入る。


「この者の非礼を詫びるのです。どうぞお許しくださいです。」

 なんかふざけた喋り方だが可愛いから許そう。


「分かったよ、で、まだ用があるのか?」


「貴様、また!」「やめるです!」


「止めないで下さい、この狼藉者、懲らしめないと気が収まりま!うばばばばば」

 面倒なのでウォータージェイルに閉じ込めた。


「テメーは気が短過ぎるんだよ、頭冷やしてろ」


「何をしたのですか?……」


「魔法だ、溺れたら出してやるから誰か介抱してやれよ」


「見た事ない魔法です……」


「僕のオリジナルだからな、用がないならもう行くぞ」


「あ、待って欲しいです……あの、あなたから何故そんなにもフレイヤ様の存在を感じるのです?」


「うん?フレイヤの存在が分かるのか?」

 いい頃合いなので、ウォータージェイルを解いてやった。


「はいです!……私はフレイヤ様の啓示を受ける仕事をしていますので……です」


「そうなのか……」

 昨日フレイヤと会ったばかりで、また絶妙なタイミングだ。


「昨夜フレイヤと会ったばかりだからかな?」


「へ……」


「あの、今フレイヤ様とお会いになられたと、聞こえたです……」


「そう言ったからな」


「ええええええええ!」


「何故です!何故です!何故です!何故会えるです!」


「本人は僕の保護者と言っていたが、どうなんだろうな……今度啓示があった時に本人に聞いてみろよ」


「いやいやいやいやいや、恐れ多いです!」


「フレイヤは気さくな女性ひとだ、気にしなくていいと思うぞ」


「気……気にしますです!」

 気にするべきところは他にある。


「もういいか?」


「え、あ、はい……」


「すみません、やっぱり待ってほしいです」


「今度は何だ……」


「あの……あなたのお名前を聞かせて欲しいです」


「ハルトだ」


「ハルトさんですね、私はシェラです。以後お見知り置きを」


「ああ」

 

 王国では、プロエディが最初から魔族と繋がっていると分かっていたが、聖皇国では情報収集からスタートだ。聖女とは言え距離感を間違えると、今後の活動に支障がでる。


 取り敢えずはフラットな関係構築からスタートだ。

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