第38話 人間卒業しました
ギルドに用意された超豪華な宿舎は、元の世界で言うところのスウィートルームって感じだった。すごく贅沢な部屋だ。そんなスウィートルームの真ん中で、僕は4人の女の子に囲まれて正座している。人によっては羨ましいシチュエーションなのかもしれないが、王都での謁見からこの時間まで、ほぼ休むことなく稼働していた僕からすれば、せめて椅子に座らせて欲しいところだ。
「あの……実はさ……学園停学になっちゃった……」
『『はぁー?』』
「今度は何をやらかしたのだ……」
「実習で、アレイスター先生の制止を振り切って、魔族に襲われてた同級生を助けに行った……」
「……うーん、その行為自体は褒められる事なのにね……」
「どうせ、何の説明もしないで飛び出したんでしょ」
「まぁ……アレイスターも融通きかねーからな……」
「私はアレイスターに同情するよ……」
『『他には?』』
「マイオピアが魔族の襲撃を受けた」
『『はぁー?』』
「また、1人で解決したのだろう……」
「念話使えるなら相談して欲しかったな……」
「どうせまた、無茶したんでしょ」
「すげー魔法でもぶっ放したか?」
「被害は?」
「極々少数で、済んだはずだよ……」
「それは、ハルトがいて助かったな」
『『他には?』』
「冒険者ランクがプラチナになったから聖皇国を目指したんだよ」
「おっ、ダイヤだな!」
「まあ、成果的には順当ね」
「実力的にもな」
「冒険者ランクもちゃんと上げようとしてたんだね」
「聖皇国を目指したんだけど、道中で色々あって、王国のクーデターに巻き込まれた」
『『はぁー?』』
「ちょっと待て……何故そうなる……」
「相変わらず話がぶっ飛ぶね……」
「どうせ可愛いお姫様を助けたかったんでしょ」
ルナの言葉に思いっきり動揺してしまった。
「あ、図星だ!!お前、姫までハーレム要員にするつもりだったのか!」
相変わらず酷い言われようだ。
「ま……まあ、それは置いといて、クーデターにも魔族が絡んでたんだ」
「うん?……もしかして、一連の件は繋がっていたのか?」
相変わらず、ロランは鋭い。
「まあな……つか、ロラン……何でそれだけで分かっちゃうんだよ」
「あまりにも、魔族の出現が頻繁なのと、示し合わせたようなタイミングだったからな」
「でも、なんの狙いが……」
「アンドランスって魔族と話すことが出来たんだがな……混乱のためだと言っていた。次期国王のバイルスは優秀な人物だからな、排除したかったんだと思う」
「混乱って……」
それは、サマエルの退屈しのぎだろう。
「それよりも、問題は、王国の貴族と魔族が繋がっていた事だ、皇国もヤバいんじゃないか……アバドンの件もあるし」
「そうだな……」
「皇国滞在中は警戒を絶やしちゃダメだ」
「何か、疲れる話しだね……」
「信頼し合えないなんて……それこそ魔族の思うつぼね」
「疑心暗鬼を利用するのは、魔族に限った事ではないが、一理あるな」
「片っ端からぶん殴って行けばいいんじゃないか?」
「それで何が解決するのか教えてくれ」
「喜ぶやつもいるぞ?例えば、ハルトとかハルトとかハルトとか」
「やだ、ハルトそんな趣味が……」
「悪いけど近寄らないでね……」
「もしやとは思っていたが……」
「いや……」可愛い女の子限定なら否定出来ない……
「おい、歯切れ悪いな!マジかよ!」
「それなら、相談してくれたらよかったのに……」
「うわっ……キモっ!」
「君には教育が必要だな……」
「大丈夫だ、僕はノーマルだ!」
何か自分に言い聞かせてるようだ。
「その辺にしといてやるよ!」
超したり顔のレヴィだ。
「私も聞きたい事があるのだ」
「何だ?デュランダルの事なら分からないぞ」
「デュランダルではない、あの乱戦、気が付くと終わっていた……一体何が起こったのだ?」
「あれか……(仲間には知ってもらった方が、戦いの幅が広がるか……)」
「私も気になる、気付くとハルト居なかったし」
「ウチ、なんか来た事すら知らなかった」
「あれは、インヴィンシブルと言うスキルで、一定時間、超加速出来るんだ」
『『超加速?』』
「周りが止まって見えるほど、自分が、速くなる」
「なんじゃそりゃ!無敵じゃねーか!」
「一定時間はな、でも反動がキツかった……」
「どんな反動なの?」
「まず、身体中が痛い、めちゃめちゃ痛い、フレイヤ様に頂いた他のスキルがクールタイム中は使えない」
「だから白髪になったのか?」
「いや、これは違う……きっと別の理由だ」
「その理由ってなに?」
特にルナは気になるだろうな……
「僕も、明確には分からない」
「気になるね……ハルト変わっちゃったもんね」
「本質的には変わってないよ」
「そうだな、偉そうな喋り方なのに正座だしな!」
「だ……だな」
「ま……まあそのスキルで対処したわけだな」
「ああ」
「ねえ、念話とか、まだ色々聞きたいけど、明日にしない?ハルトもお疲れだろうし、私も疲れちゃった」
「そうだな」
「実はウチも、もうそろ限界だった」
「そうね、まあ……その……とにかく……」
「今日はありがとう」
「ハルトが来てくれなかったら全滅だっただろうな」
「大規模魔法も使えない状況だったしな」
「声が届いて本当に良かった」
「どういたしまして」
「じゃぁ、また明日以降にお願いね」
「了解だ」
そんなこんなで、僕の報告会は終わったが、爵位と領地の件を言いそびれた。
シャワーを浴びて寝ようと思っていたらルナから念話が入った。
『どうした、眠れないのか?』
『ある意味そうかもね……ねえ、ハルト……あの時、私……』
『なんだよ……』
『……知りたいの、あの時何が起こったかを……』
『……助かったんだよ……それだけだ……』
『ねえ、アンタのその髪……あの時になったのよね……』
『そうだな』
『また、何か危険なことでもしたの?』
『心配するな、それは100%無い』
『そう……ならいいわ』
『ああ、でも今、ルナがそこに居る、それが真実だよ』
『分かった、ありがとう』
僕は不安だった。もし、僕が否定した、あの時の真実を告げることが……もし、それがトリガーになって、また……
もう二度とあんな想いはしたくない。
「なあ、クレイヴソリッシュ、レーヴァテイン、あの時言った「第一段階卒業おめでとう」ってなんだ?」
「人間卒業おめでとうじゃよ」
2人が実体化した。
「ん……今、人間卒業とか聞こえたけど……僕の空耳か?」
「空耳じゃねーよ、人間を卒業して神になったんだよ」
「神……何の冗談だよ、僕は何もかわっ……」
いや変わった能力も話し方も、そして外見も……
「えっ……ちょっと待って……」
「何となく察しはついておったのじゃろ?」
「いやっ……そんな……」
「まあ、正確には元々人間では無かったのじゃ」
「デミゴッドだったからな」
「え……つか、デミゴッドって何?」
「半分人間、半分神じゃ」
「なぁ……それって?いつから?」
「産まれた時からに決まってんだろ」
衝撃の事実だ……
「神である我らを人間が従えるとか不自然じゃろ?」
神……僕が神……しかも、産まれた時からだと……
「ちょっと待って……やっぱ何かの間違いじゃ」
「往生際が悪りぃな!」
「いや、だって、今の今まで人間だと思っていたんだぞ……それをイキナリ神って言われてもな……」
「そんな事言っても神は神なんだよ!受け入れろ!」
「主様が神でなかったら、あの娘は助からなかったのじゃぞ?」
「…………そっ……そうだったな……」
「事実をねじ曲げるような不条理を、神の奇跡で叶えちまったんだ……それが切っ掛けで神になった事は間違いねーよ」
「神は我儘じゃからのう」
「そうなのか……じゃぁお前達もか?」
「見りゃ分かるだろ」
「そうだな……」
「なに、神になったと言っても格式張る必要はない、今までと変わらず、気ままに生きるとええよ」
「そうか……それを聞いて少し安心したよ」
「我が主が神になったから、ワシらも実体化して、戦えるぜ」
「マジか」
「マジじゃ、今までのように剣に戻らんでも、ずっと活動できる」
「でも、お前達は美人過ぎるから、ずっと実体化だと僕が困る。人目につき過ぎるからな」
「分かってるじゃねーか」
「そう言う台詞はもっとムード出して言って欲しいのじゃ」
「褒めてもダメ出しかよ……」
「まぁ、冗談は置いといて、我が主がデュランダルを持てたのもそう言う理由じゃ」
「なるほど……」
「それと、あの勇者の娘……ルナだっけ」
「ああ」
「ちゃんと導いてやれよ、あの娘もデミゴッドになってしまったからな」
更なる衝撃の事実が伝えられた。
「な……何でだよ!」
「主様が命を与えたからじゃよ」
「ぼ……僕が」
「だから我が主が心配するような事はない、ルナに事実を告げても問題ない」
「そ……そうか」
「主様よ……主様は人として生を終える事が出来なくなった」
「やっぱ、神だからか」
「驚かないんだな、まあそう言うことだ」
「じゃが、あの娘は違う、デミゴッドなら人として生を終えることも可能じゃ、頃合いを見計らってちゃんと話してやるのじゃ」
「ああ、分かったよ」
安心と不安が同時に飛び込んできた。ルナの存在が僕が考えていたような虚ろなものでないのは嬉しいが、デミゴッドになってしまったのは想像もつかなかった……まあ僕自身も知らなかったのだが……ちょっと重たい話だが、諸々落ち着いたらルナに話そう。
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