第13話 フレイヤ様降臨

 まさかと思っていたが、本当にそのまさかだった。ウンディーネがフレイヤ様を勇者パーディーの拠点、僕たちの家に連れてきた。


「皆さん、はじめましてフレイヤです。いつもハルトがお世話になっております」


『『…………』』


 またもやみんな絶句している。それにしてもフレイヤ様……相変わらずお綺麗だ。


「は、はじめましてフレイヤ様……ルナです」

 口火を切ったのはルナだった。


「あなたは……」


「わ……私に何か?」


「あなたはハルトのど真ん中ですね!」


「なっ!」


 当たってますが、何てことを言いだすのでしょうか……


「あれ、あれ、あれれれれれれ」

 フレイヤ様がみんなを見回す。


「ルナさんだけじゃないのですね、みんなハルトのタイプですね」


「ふ……ふふ、フレイヤ様何を!?」


「なかなか楽しくやってるみたいじゃないですか」


「はじめましてフレイヤ様!レヴィです……い…今の話は本当ですか?ウチみたいのが本当にハルトのタイプなのですか?」


「そうよハルトは可愛らしい子、好きよ」


 こんなしおらしい、レヴィ、はじめてみた。


「は、はじめましてフレイヤ様!ロランと申します。本当にハルトは私のような堅物がタイプなのですか?」


「ハルトはこう見えて堅実ですからね」


 なんか質問の趣旨がおかしい。


「はじめましてフレイヤ様……エイルと言います……その……ハルトはいつもこう……女性にだらしないのですか?」


「そうですね……ハルトは女性に免疫のないヘタレですので……結果としてだらしなく感じてしまうかも知れません」


「そ……そうなんですね」


「エイルさん!このヘタレをリードしてあげてください!」


「はい!」

 謎にエイルが復活した。


 なんだろう、いつもこういう展開で傷つくのは僕のような気がする。


「なんか皆さん質問の趣旨間違えてないですか?」


「面白いからいいんじゃない?」


「ダメです!」


「私はハルトが幸せそうで安心しましたよ?」


 確かに幸せだ。


「ところでフレイヤ、ハルトはフレイヤの導師なの?」


「うーん……どっちでもいいですよ?ハルトの都合がいい方で」


「は?……じゃ何なんでハルトはこんなにも加護だらけなのよ?」


「これは、ハルトが頑張ったご褒美です。私はハルトの保護者のようなものなので」


「ちょっと意味わかんないわ……」


「過保護ですよ」


「字が違うわよ!」


「もし、ハルトが導師になりたいのなら、聖女に啓示を出しますが?」


「け……啓示ってこんな簡単に出るものなの?」

「わ……私もはじめてのことでなんとも……」

「おいおい、なんか凄いことになってね?」

「きょ……驚愕だな……」


「僕は静かに暮らしたいので遠慮します……」


「残念ながら、それは無理でしょうね」

 フレイヤ様、満面の笑みだ。


「まあ用はそれだけよ」


「わかりました、ハルトまた何かあれば知らせてください『念話』出来るはずですよね?」


 こっちに来てから試して無かった。これは嬉しい誤算だ。


「はい、ありがとうございます」


『良い仲間にめぐり合いましたね』


『はい、これもフレイヤ様のおかげです』


『でも……ハーレムはほどほどに……』


『違いますよ!』


「では、私はこれで、ウンディーネよろしく」


「わかったわ、じゃハルトまた後でね!」


 フレイヤ様の電撃訪問だった。後で気付いたのだが、フレイヤ様はさりげなく探知系のスキルを授けてくださっていた。


「フレイヤ様……綺麗だったわね……」


「綺麗だったね」


「ウチら……神様に会ったんだよな……」


「信じられん……」


「何の話してたんでしたっけ?」


『『さあ?』』


 フレイヤ様の電撃訪問で前後の話がうやむやになってしまった。


「ところで、なんで皆さんフル装備なのですか?」


「そうよ、ドラゴンの咆哮が聞こえたからよ!」


「ドラゴンが街に来たら、大変なんてもんじゃないからね」


「何かあればギルドの奴らが知らせに来るから支度してたんだ」


「いつでも出撃出来るよう、我らは待機していたのだ」


「でもハルト、アンタが退治したのね?」


「はい……」


「やっぱりドラゴンだったの?」


「シーサーペントでした」


「おい、それって伝説の怪物じゃねーか!」


「君はそんな難敵をまた1人で倒したのか……」


「結構やられちゃいましたけど……」


「私を庇わなかったら無傷だったけどね」


「ウンディーネいつの間に!?」


「そうやってウンディーネ様にもフラグをたてたのね……」


「そういうことよ」


「えぇぇぇぇ……」

 結構体を張ったのにフラグ扱い。


「ハルトと居ると退屈しなさそうね」


「勘弁してください……」


 その後、二階のリビングで報告会になった。因みにウンディーネは精霊界でおやすみになっている。


「まず、僕から良いですか?」


「いいわよ」


「今回の件とベリアルの邂逅は繋がってます」


「やはりそうなのか……」


「はい……ウンディーネに呼ばれて、アブハム湖に向かうと、今まで見たことの無い強力な魔物と遭遇しました。その魔物とシーサーペントの出現は、ベリアルが、特殊な魔石をバラ撒いた事が原因です。調査で何も発見出来なかったので、厄介なアイテムだと思います」


「マジかよ……」


「ベリアルの目的は、ウンディーネとの契約、もちろんウンディーネは断りました。その腹癒せに魔石をバラ撒かれたそうです」


「なんか、つまらない理由ね……」


「ですよね、ベリアルは3大魔王の中で最弱だそうです。ウンディーネの推測では実力を埋めるために精霊との契約を望んだのではないか、との事です」


「それだと他の精霊も危険なのではないか?」


「ウンディーネはその件についても触れていました。他の精霊は精霊界に居るらしいので、今のところは安心だそうです」


「なるほどね」


「ベリアルが力を求めているのだとすれば、その系の伝承のある場所に、ベリアルが現れる可能性があると思います」


「そうだな、この件はギルドに報告しておこう」


「僕からは以上です」


「何か……濃い内容だったわね」


「どっと疲れる話しだったね」


「私から質問いいか?」


「はい」


「ハルト、君はフレイヤ様とどのような関係なのだ、フレイヤ様は自身のことをハルトの保護者と仰言っていた。君は神なのか?」


「とんでもないです。僕は人間ですよ……フレイヤ様は僕の命の恩人なのです。それで縁があって良くしていただいているのです」

 嘘ではない、我ながらナイスはぐらかしだ。


「だけどよ、神様と縁があるなんて普通では考えられないことだよな」


「そうですね、運が良かったとしか……」


「ねえ、ハルト、フレイヤ様は「ハルトが頑張ったご褒美」って仰言ってたよね?」


「そうですね」


「何を頑張ったの?」

 その鋭いツッコミは事情を隠しながらじゃ、説明しにくいと察して欲しかった。


「ある禁忌を、僕が阻止したからです。禁忌の内容については、言えません。フレイヤ様と出会ったのもそこです、そこで失血死寸前の僕を助けていただいたのです」

 90%事実だ。我ながら頑張った。


「身を呈して、世界の危機を阻止したってことかしら?」


「結果的にそうなります……」


「ハルト、やっぱお前、カッコイイな!」


「目に見える戦いだけが、世界を救う戦いでは無いわけか……もっと視野を広く持つ必要があるな」

 ロランは堅物だが、頭が柔らかいのは良いところだ。


「ハルト、一つだけ忠告しておくわ」


「はい」


「アンタはランクの関係で私たちと行動できないこともある、でも私たちはチームよ、勝手な行動はしないで……それが危険を伴うものならもっとよ!私は今回の件怒ってるわよ」


 ルナの言う通りだ、いくら緊急だったとは言え、軽率な行動だった。


「ルナ、エイル、ロラン、レヴィ……本当にごめんなさい」

 僕は深々と頭を下げた。なんかこの世界にきて謝っていることが多い。それだけ僕が関心を持たれている証拠なんだと思う。元の世界の人間関係だと今回の件もきっとスルーされていただろう。


「今後はきちんと、話してから行動します。約束します」


「本当にお願いね、ハルトがいなくて心配したんだから」


「君がルナを心配したように、君が実力者であっても心配は心配なのだよ」


「今度やったらぶっ飛ばすから、しっかり守れよ!」


「はい」


「ハルト、私はまだ許さないわ」


「ルナ……」


「男なら、行動で示しなさい」


「わかりました」


「なんかルナって時々いいこと言うよな」


「そうだよね」


「ルナは素直じゃ無いから仕方なかろう」


「ちょっとアンタ達!」


 とりあえず今回の件は、なんとなく一件落着した。ルナに言われたチームって言葉が刺さったままで、怒られているはずなのに嬉しかった。

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