第179話 忘れたモノは・・・

 現在時刻は・・・8時32分かー。明け方の5時少し前から約4時間近く掃除をしていることになるね。黒魔の森の浅い層はほとんど殲滅できたみたいで【気配察知】にも群れ並みの規模の魔物は引っかからない。小数の魔物はワザと取りこぼして冒険者達のかてになってもらおう。


「アントンさん、そろそろ一旦休憩しましょう。」


「ああ、そうだな。おーい、クリス嬢達休憩に入るぞ。」


 適当に木を切り倒し休めるスペースを作る。偽魔法袋から牛肉と野菜をパンで挟んだモノ(ジョージは“サンドウィッチだ”と言っていたね。)と果実水を取り出してお腹を満たす。


 それからさらに3時間ほど魔物を狩り続けて中間層から深層までの数を減らせた。まあ、しばらくしたら湧いて出てくるんだろうけどね。“邪神”が出てくるよりかはマシかな。ニルレブまでの帰還の時間を考えるとここらが潮時だね。


「みんなー、そろそろ森を出るよー。」


 【風魔法】に声を乗せてみんなへと声を届ける。すぐにみんなが集まる。すぐに【空間転移】をしてクレムリンの近くの森の浅い層へと移動する。そのままクレムリンに戻って昼食を摂って僕はエドワーズ空軍基地へと向かう。


「昼食後すぐに悪いねシンフィールド中将。」


「いえ、大丈夫ですよ。しかし、マーティン中尉とコンラッド海兵隊最上級曹長も同席させるということは、龍騎士ドラグーンと航空機の運用についてですか?」


「話しが早くて助かるよ。ボブ達の他にも教官役を【召喚】したいと思ってね。レンジャーだったかな?詳しい部隊名と基地名がわかれば【召喚】しやすいからね。それと、緊急出撃用にA-10を【召喚】しようと思うんだ。だから、搭乗員も凄腕がいいだろうと思ってね。オススメの人物はいないかな?」


「ふむ、レンジャーは第75レンジャー連隊です。連隊本部の駐屯地はフォート・ベニングという多くの部隊の本拠地となる所にあります。定数が580名の大隊を3個大隊保有しています。精鋭ですよ。それと、A-10でオススメの搭乗員となると1人しか思い浮かびませんな。」


「誰だい?」


「ハンス・ウルリッヒ・ルーデル大佐です。我々の世界で半世紀以上前に行われた世界大戦で名を馳せたエースパイロットです。“エース”とは撃墜王のことでこちらの言葉で云えば“英雄”などが当てはまるかと。」


「ならば、第75レンジャー連隊をフォート・ベニングと共に、ルーデル大佐を指揮していた部隊と共に【召喚】すれば大丈夫かな?」


「はい、大丈夫でしょう。彼らはガイウス卿の心強い味方となってくれるでしょう。」


「ありがとう、シンフィールド中将。ボブとジョージには別件で話しがあるからヘラクレイトス達の所で話そう。」


 シンフィールド中将に礼を言って基地司令官室をあとにする。龍舎まで“ハンヴィー”という自動車で移動する。運転はボブだ。


 すぐに龍舎に着いてハンヴィーから降りる。背伸びをしながらボブとジョージに伝える。


「来週の火曜日に龍騎士ドラグーン志願者の第1陣をこちらに送るからね。」


「了解。キーン上級曹長達へも伝達します。」


「了解。ですが、JTACの自分には関係のない話では?」


「あれだよ。志願者達に舐められない為だよ。」


「ふむ、了解。これでも一応特殊な訓練を受けた部隊の一員ですからね。ところで、人数は?」


「1,543人だよ。」


 人数を聞いて2人とも少し動揺したみたいだけどすぐに表情を戻す。まあ、ボブは片眉を上げたくらいだったけどね。


「レンジャー連隊の協力が得られれば精強な兵士が出来上がります。」


「うん、頼りにしているよ2人とも。さて、僕はこれからニルレブの行政庁舎で定時まで事務仕事だ。何か他に要望があったらそちらかクレムリンへお願い。ああ、それと【召喚】は明日の朝にするということを中将に伝えておいてね。」


 なーんか大事なことを忘れているような気がするけど、まあいいか。


 行政庁舎に着いて執務室で書類仕事をしているとノックの音が響いた。


「どうぞ。」


 僕の掛け声と同時にクスタ君が扉を開ける。そこには軍装したアダーモさんがいた。


「ガイウス閣下におかれましてはご機嫌麗しゅう・・・。」


「あー、ここでは、僕とアダーモさんとクスタさんしかいないので畏まらなくて結構ですよ。取り敢えずはおかけになってください。」


「それでは、お言葉に甘えて。実はボブ・コンラッド海兵隊最上級曹長からお話を聞きまして、来週の火曜日から龍騎士ドラグーン志願者達の錬成を始めるとか。」


「ええ、そのつもりですがどうかしましたか?」


「私もその錬成に参加したいのですが・・・。」


「ああ、それならジョージ・マーティン中尉の指導を受けてください。彼は士官で指揮官としての心得も実力もありますので。今、命令書を用意しましょう。それと、明日は新しく私兵を【召喚】するつもりです。彼らの指導も受けられるようにしておきましょう。」


「おお、それは有り難い。自主鍛練や黒魔の森での魔物討伐だけでは先が見えてしまって焦っていたのです。」


「今後も遠慮せずに言ってくださいね。アダーモさんには部隊を1つ率いてもらうつもりなんですから。」


「はい、誠心誠意頑張らせていただきます。そういえば、先程グイード卿とお会いした時にジギスムント卿とグイード卿、アルト卿、ロルフ卿の昇爵式典と祝いのパーティーを行うようですね。」


「ええ、そうですよ。もちろん、アダーモさんにも領軍関係者として出席してもらいますよ。」


「私の事はよいのですが、老婆心ながらアルムガルト辺境伯家には招待状はお出しになりましたか?」


「あっ・・・・。」


 あー!!クリスがそばにいるし、義兄にいさん達もいるからすっかり忘れていた。これは、マズイ。急いで招待状を準備しないと。アダーモさんに感謝だね。

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