第180話 魔王降臨(もしくはリアル・チート)

 無事にアルムガルト辺境伯家にも招待状を送付することができた。というか、僕が直接持って行った。ヘラクレイトスに乗って。流石は飛龍王ワイバーンロード、最高速度は飛行機には負けるけどそれでも一日で往復できた。あ、返信もすぐ貰えたよ。アライダ様とドーリス様が来られるみたいだ。んー、お義母かあ様とお義祖母ばあさまと呼んだ方がいいのかな?


 明けて15日木曜日午前6時。シンフィールド中将とボブ達海兵隊員、ジョージを伴い僕はエドワーズ空軍基地の北端に来ている。フォート・ベニングと第75レンジャー連隊を【召喚】するためだ。


「フォート・ベニング及びアメリカ陸軍第75レンジャー連隊【召喚】」


 巨大な魔法陣と多量の光があふれる。光が収まるとそこには町とズラリと整列した兵士の姿があった。


「第75レンジャー連隊連隊長ハロルド・レドモンド大佐以下2,534名、着任しました。」


 レドモンド大佐が敬礼すると彼の後ろに整列した兵士達も一斉に敬礼した。僕はそれに答礼しながら出迎えの言葉を言う。


「地球からエシダラへようこそ。第75レンジャー連隊の諸君。私はこのゲーニウス領を治めるガイウス・ゲーニウス辺境伯と申す。私の隣にいるのは目の前に広がるエドワーズ空軍基地の司令官ドゥエイン・シンフィールド中将、教官として【召喚】したボブ・コンラッド海兵隊最上級曹長達、そして、JTACのジョージ・マーティン中尉だ。君たちと同じ時間軸とは限らないので齟齬そごが生じていても驚かないでほしい。さて、諸君は非常に優秀な人材達だと聞いている。まず諸君らに頼みたいのは出自がバラバラの1,543名の龍騎士ドラグーン志願者の訓練だ。ボブ達を手伝ってやってほしい。異論はあるかね?」


「はい、ガイウス卿。異論はありません。命令に従います。しかしながら、我々は戦闘のプロでありますからその力を活かせることも・・・。」


「みなまで言わなくても大丈夫だよ大佐。君たちのこの世界での初陣はしっかりと用意しよう。」


「ご配慮ありがとうございます。それと、もう1つお願い申し上げたいことがあるのですが・・・。」


「ん?なんだい?言ってみてくれたまえ。私にできることなら応えようじゃないか。」


「はっ、部隊の広域への即時展開のためにヘリコプター部隊を【召喚】していただければと思います。」


「RF-4CやP-8とは違うのかね?」


「あれらは航空機の中でも固定翼機という部類に入ります。ヘリコプターは回転翼機という部類です。」


「回転翼・・・。翼が回るというのかね?う~む、想像がつかんなあ。飛龍ワイバーンや鳥は翼を羽ばたかせるが、回転・・・。」


 大量の?で頭が埋まっているとシンフィールド中将が助け舟を出してくれた。


「ガイウス卿、今度お時間のある時に資料映像をお見せしましょう。それを見て有用だと感じましたら【召喚】してくだされば大佐も納得するかと。そうだな、大佐。」


「はい、閣下。」


「だそうですよ。ガイウス卿。」


「うむ、わかった。それでは、第75レンジャー連隊の諸君はそのまま楽な姿勢になってくれたまえ。今度はA-10とハンス・ウルリッヒ・ルーデルを【召喚】する。」


 すると、レンジャー連隊の隊員達が一瞬ざわめいた。何か変なこと言ったかな?「魔王」とか「シュトゥーカ大佐」とか聞こえたけど、まっいいいか。


「A-10及びハンス・ウルリッヒ・ルーデル【召喚】」


 2つの魔法陣と光が現れる。それらがなくなると巨大なA-10と1人の男が立っていた。彼は右手を掲げながら踵を鳴らして、


「ドイツ空軍第2地上攻撃航空団(SG2)司令官、ハンス・ウルリッヒ・ルーデル大佐であります。」


「ルーデル大佐。私はアメリカ空軍エドワーズ空軍基地司令官のドゥエイン・シンフィールド中将だ。この世界ではナチ式の敬礼ではなく通常の敬礼で大丈夫だ。そうしないとガイウス卿が混乱してしまう。」


「ふむ、了解した。ご指摘どうもありがとう中将閣下。」


「理解してくれたようで何よりだ。ガイウス卿、出過ぎた真似をして申し訳ありませんでした。」


 シンフィールド中将が謝罪してくる。あの最初の敬礼の何が悪かったかわからないけどシンフィールド中将が上手く指摘してくれたようだ。僕は頷きながら、


「私の為に行ったことであろう?ならば、謝罪することなどないさ中将。私のほうから礼を言いたいぐらいだ。さて、ハンス・ウルリッヒ・ルーデル大佐、私はガイウス・ゲーニウス辺境伯だ。君の上官にあたる。これからよろしく頼む。」


「はい、ガイウス卿。」


 お互いに敬礼でやり取りする。


「さて、皆揃ったことであるし、この口調も疲れてきたな。・・・ゴホン。改めてガイウス・ゲーニウスという。君達の最高司令官になる。これからよろしく。さて、レンジャー連隊のほうはボブ達海兵隊に任せたよ。シンフィールド中将とジョージはルーデル大佐にA-10のことを教えておいてね。確か彼と活躍する時代が違うんだよね?」


「はい、その通りです。ガイウス卿。まあ、基地の施設で話しをしておきます。」


 ジョージが答える。それを少し無視するような感じでルーデル大佐はA-10に近づき、


「ほう、この機体はA-10というのかね。愛称ペットネームは?固定武装は機首のガトリングか。なかなか大きい口径だな。30mmはあるか?プロペラ推進ではないのか。ジェット機かね?」


 ルーデル大佐が矢継ぎ早に尋ねる。


愛称ペットネームはサンダーボルトⅡです。P-47“サンダーボルト”に由来しています。他にはウォートホッグなどとも呼ばれていますね。お好きなようにお呼びください。性能は変わりませんから。固定武装はGAU-8“アヴェンジャー”30mmガトリング砲です。装弾数は1,100発程度で毎分3,900発撃てます。有効射程は1,200mほどです。そして、推進機関はご推察の通りジェット推進になります。主翼と尾翼の間に配されている2基のターボファンエンジンで飛行します。最大速度は750km/hです。ちなみにこれは最新型のA-10Cですね。詳しい搭載可能兵装や操縦法は基地施設のほうで説明しますよ、大佐。」


 ジョージがスラスラと答える様子を見てルーデル大佐は頷きながら、


「ありがとう。君は優秀な士官だな。西部前線が押し込まれるのも納得できる。」


「お褒めの言葉有り難く。さあ、大佐、ガイウス卿と中将閣下がお待ちですので。」


「ああ、上官を待たせてしまっていたな。申し訳ありません。ガイウス卿、閣下。」


 そのまま、僕と中将、大佐、ジョージはハンヴィーに乗り込み基地施設へと向かう。途中でA-10Cを牽引するための牽引車とすれ違う。A-10Cは格納庫の前で【召喚】すればよかったね。残りのA-10Cはそうしよう。


 A-10Cに関するある程度の知識と操縦法を会得えとくしたルーデル大佐は早速出撃したいと言ってきた。どうしようかな。僕はジョージに頼んでRF-4CやP-8、P-8AGSによる偵察飛行により黒魔の森の深層に巣くう魔物たちの集落や群れをマッピングしたモノを持ってきてもらった。


「この中で最新の情報は何処の集落かな?」


「こことここですね。P-8が補足した後にRF-4Cで偵察し写真を撮りました。こちらになります。」


 ジョージが写真を見せてくる。最初はその精密さに驚いていたけどもう慣れちゃった。


「ふむ、ゴブリンとオークの集落か・・・。規模としては小規模だけど深層だから手が出しにくいね。大佐、距離があるけどいけるかい?」


「ええ、大丈夫でしょう。取り敢えず、増槽にMk77とハイドラロケット弾を搭載できるだけ搭載していただければ2つの集落を潰せます。赤のブリキどもに比べれば楽な目標ですな。しかし、戦果判定のために随伴機が欲しいですね。」


「P-8AGSはどうかな?中将はどう思う?」シンフィールド中将に尋ねる。


「よろしいかと。航続距離も十分です。速力もA-10Cに合わせられます。」


「それでは、それで出撃準備をお願い。」


「了解。」


「最終確認。大佐は義足だけど本当に操縦は大丈夫なんだよね。」


「無論です。」


「わかったよ。・・・ゴホン。それでは、ハンス・ウルリッヒ・ルーデル大佐。貴官はこれより2カ所の敵集落を単機で攻撃。これを殲滅すること。何か質問はあるかね?」


「逃げるモノはどうしますか?」


「魔物にかける慈悲は無い。徹底的にやりたまえ。」


「了解です。黄金柏葉剣付ダイヤモンド騎士鉄十字勲章が伊達では無いことをお見せしましょう。」


 ルーデル大佐はニヤリと笑い敬礼をして駐機場へと向かって行った。


「ねえ、ジョージ。ルーデル大佐って結構ヤバい人?」


「ええ、かなり。」


 ワーオ。

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