第167話 火力は正義

「次弾SMAW発射後、M32による面制圧を行い、逐次M27とM249で応戦開始。」


「「「「「了解。」」」」」


 銃火器の扱いはボブ達が一番慣れているからね。下手に口を出すよりも任せておいた方がいい。使用したのはサーモバリック弾?というやつらしい。威力が凄いね。たったの4発でホーンベアの大群の突進の勢いが落ちた。


 さて、僕もやりますか。ジョージと雑談していた時に思いついた【魔法】を試そう。【風魔法】で1mほどの空気の塊を複数作りだし、それに横方向の回転を加えていく。回転の勢いがある程度着いたら【魔力】を練り上げ、風の弾丸こと【ウィンド・バレット】を練り上げた魔力によって発射する。“ドンッ!!”と音の壁を突き破る轟音が響き、巨大な風の弾丸がホーンベアの群れに向かう。


 【遠隔監視】で映像を見ると、運よく初撃で生き残ったホーンベアの一体の胴体に着弾したと同時にホーンベアが爆ぜた。うわっ、グロテスク。【ウィンド・バレット】はそのまま100mほど何体ものホーンベアを巻き込みながら突き進み消えた。


「流石です。閣下。我々も負けておれんぞ。SMAW発射!!」


 ボブから称賛をもらい、それと同時にまた、赤い4本の矢が漆黒の黒魔の森をかけていく。そして、着弾、爆発、熱風に轟音。ホーンベアの先鋒が完全に足を止めた。ふむ、意外と早く決着がつくかなと思ったけど、そんなに上手くはいかない。


 群れの中心部から野太い咆哮ほうこうが響く。それに呼応するように先鋒のホーンベア達も咆哮ほうこうを上げて前進を始める。【遠隔監視】で最初の野太い咆哮ほうこうの主を探すと、群れのど真ん中に他のホーンベアよりも二回りは大きいホーンベアがいた。【鑑定】すると“ホーンベア・キング”と出た。この群れの頭領だ。間違いない。


 どうするかなあと思っていると、“ボンッ!!”という音ともに前進を再開したホーンベアがぜた。後ろを振り返ると、M32による攻撃を開始したようだ。小気味良いリズムでグレネード?が発射され着弾と同時にぜる。見ていて少し面白い。


 こちらも前進しながらの攻撃に切り替えるべきかもしれない。ボブにそう言うと、


「閣下、未だ相手の方が数で勝っています。慢心は危険です。と、これが通常の場合の意見具申でありますが、閣下のお力を考えれば、我々海兵10名もいますので可能でしょう。最初は様子見で10mずつ前進していきましょう。」


 ボブがそのことをみんなに指示すると歓声が上がった。呂布隊といい、島津隊といい、地球人は好戦的な人が多いのかな?この場面で攻撃しながら前進って普通だと、拒否の言葉の1つでも出るものだと思うんだけどなあ。まあ、いいや。


「それでは、海兵隊、前進!!敵を追い詰める。」


「「「「「了解。」」」」」


 海兵隊員全員の返答を聞いて、前進を始める。といってもホーンベアの戦力を削りながらの10mずつの前進なので、ゆっくりとしたペースだ。言葉で表現すると穏やかな感じだけど、実際はM27とM249の絶え間ない発射音と僕の【バレット】系の【魔法】が音速を突破する轟音が響き、ホーンベアの断末魔と共に死体が量産されていっている。遠距離攻撃方法を持たないホーンベアに対する一方的な殺戮劇だ。


 そして、ようやくホーンベアの死体の所にたどり着いた。つまり、僕たちは500m前進できたということだね。そして、さらに前進を続ける。僕は火以外の各種【魔法】を撃ち続けながらホーンベアの討伐証明部位の右手と死体を【異空間収納】に収めていく。まあ、ここらの死体は原型をとどめていないモノが多かったけどねー。上手く焼けていた肉があったから少しだけいで食べてみたらまあまあだった。しっかりと調理すれば美味しいだろうね。戦闘後に海兵隊のみんなにもすすめてみたら恐る恐る食べていたけど2枚目、3枚目と食べ進めていたから口には合ったんだと思う。


 そんなこんなで、銃弾と【魔法】の雨にさらされたホーンベアの群れは徐々に削り取られていった。そして、日付が16日水曜日から17日木曜日に変わっても戦闘は続いている。しかし、が落ちてから戦い続けたおかげでホーンベアの残りも200を下回った。そして、相対距離も縮まっている。今だと70mほどかな。


「ボブ、そろそろ、接近戦で決着をつけようと思う。」


「わかりました。総員、接近戦用意。」


 ボブの命令により、みんなが武器を銃から槍や剣に持ち替え、もう一方の手にM1911を持っている。


「準備完了、いつでもいけます。」


「よし、それでは、総員、斬り込めええぇぇぇぇ。」


「「「「「オオォォォォッ!!」」」」」


 M1911の発砲音と発砲炎がそこかしこで聞こえて見える。ホーンベアが銃弾に怯んでいる隙に槍や剣が弱点である眼や口内に刺し込まれ絶命していく。僕も【異空間収納】に収めながら、短槍と【魔法】でドンドン仕留めていく。


 そして、遂にこの時が来た。ホーンベア・キングとその取り巻き十数体のみが残った。


「逃げるとは思わなかったが、やはり逃げなかったな。」


「ええ、閣下。どうします?我々でやりましょうか?」


「いや、私がやろう。諸君らの火力と接近戦能力はよくわかったからな。」


「では、我々は逃げようとするヤツを仕留めましょう。」


「頼んだ。さて、ではるとしようか。」


 海兵隊員が散らばり包囲網を形成する。僕は1人でホーンベア・キングとその取り巻き十数体と対峙する。かぶとの中で僕は薄く笑う。【鑑定】で見たホーンベア・キングの能力値は300台、2級冒険者並みだ。取り巻き達は200台中盤、準3級・3級冒険者並み。充分に勝てる。さて、最期に地獄を見てもらおうかな。

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