第168話 帰還
半円状に包囲網を敷いた海兵隊の、この場合はなんて言ったかな?そうだ十字砲火だ。その十字砲火を浴びて取り巻きのホーンベアが倒れていく。
「閣下。今です!!」
「おう!!」
ボブの言葉を合図にホーンベア・キングに向かって突撃をかける。ホーンベア・キングは僕を迎撃しようと前脚の鋭い爪で攻撃をしてくるが、それをソードシールドで受け流す。身長160cmの僕に3mを超える自分の攻撃を防がれるとは思っていなかったのか、ホーンベア・キングの動きが一瞬だけ止まる。そして、その一瞬が命取りになった。僕の突き出した短槍は狙い違わず、左目から入り脳まで達し厚い頭蓋骨を貫通した。
短槍を抜くと、ホーンベア・キングは数秒の間、姿勢を保持していたがすぐにグラリと姿勢を崩し倒れ伏した。周囲を見回しても【気配察知】を使用してもこの群れの生き残りはいないようだ。【異空間収納】にホーンベアとホーンベア・キングの死体を収納して右手を挙げると遮蔽物に身を隠していたボブ達と巻き込まれないようにしていたルプス達が集まってきた。
「ルプス、これで終わりだよ。」
「うむ、そのようだ。ガイウスよ、感謝する。」
「いや、感謝するのは僕たち人間さ。森に入ってすぐに教えてくれて助かったよ。あのままだと人の住む場所に出ていたかもしれないからね。あの数だと防ぎきれなかっただろうしね。」
「ふむ、お互いに助かったわけだな。共助とでも言うべきか。」
「そうだね。僕としてはルプス達とはこれからも共生もできていければいいと思っているよ。」
「うむ、そうだな。さて、我々は群れに戻る。ガイウス達はどうする?」
「う~ん、ここら辺は血の臭いが濃いから移動して夜明けまで野営かな。ボブ、野営だけどどうだろうか?」
「はい、閣下。問題ありません。」
「問題ないみたいだ。それじゃあね。ルプス。」
「ああ、それではな。」
そう言って、ルプス達は森の中へと消えていった。さて、僕たちも移動しよう。
「海兵隊最上級曹長。私たちも野営地を定めて一夜を明かすぞ。」
「了解しました。海兵、行軍用意。ライフルとハンドガンだけはすぐに撃てるようにしておけ。」
「「「「「了解。」」」」」
「では、我々も行くとするかな。血の臭いに誘われて魔物どもが来る前に。」
僕の言葉を合図に僕を中心とした輪形陣を組んで行軍を開始する。大体5kmほど進んだところで野営ができそうな場所を見つけた。おそらく、他の冒険者も野営地として使ったのだろう。
【土魔法】で簡易的ながらも堅固な石壁を作成して、その中に焚火を複数おこし、簡易テントを男性用と女性用の2つを建てる。その後は、朝日が出るまで交替で見張りをすることにしたんだけど、子供はよく寝るべきだと
17日木曜日の目覚めはホーンベアと戦いの疲れも残らず、スムーズな起床だった。魔物による夜襲も無かったみたいだ。見張りの海兵たちに挨拶をして、朝食の準備をする。土魔法で石製の机と人数分の椅子を作り、【異空間収納】から食事を出して並べる。並べ終わったころには、ボブ達海兵がキッチリと整列していた。
「おはよう。みんな。」
「「「「「おはようございます。閣下。」」」」」
「今日はニルレブに帰り冒険者ギルドに寄り、その後は自由行動だ。資金は朝食後に説明しながら渡す。この世界を存分に楽しんでくれたまえ。さあ、朝食を摂ろうじゃないか。」
みんなで朝食を摂ったあとはニルレブへと戻るだけだ。【土魔法】で石壁を元に戻し、テントを片づけ火の始末をして出発する。
ニルレブの北門には10時前には到着できた。黒魔の森では来た道とは違う道を通ったけど、海兵達の行軍速度はかなり速いものだった。魔物に奇襲されないように常に全周囲警戒をしながらでもだ。本当に凄い人達だ。
門は貴族証を見せて貴族特権を利用してさっさとニルレブに入った。あ、もちろんボブ達の銃火器は【送還】済みだよ。銃火器を使っている国がどこかにあればいいんだろうけど、そんな話は聞いたことが無いし、本にも載ってなかったからねえ。
で、冒険者ギルドにやってきました。受付でホーンベアの群れを殲滅したと報告したら、すぐにギルドマスターのレンニさんがやって来た
「ここでは、話し
「わかった。皆もついてくるといい。」
「「「「「はい、閣下。」」」」」
みんなで処理・解体室へ移動をしてレンニさんに説明しながらホーンベア・キングとホーンベアの大量の死体を並べていく。
「まさか、本当にこれほどの群れがいたとは・・・。早期に対応していただき感謝します。閣下。」
「領主として、また1人の冒険者として当然のことをしたまでだ。それに、キッチリと報酬は貰うから感謝する必要はないさ。まあ、毛皮がズタボロなのが多いから期待は出来んがな。ああ、肉は全てもらう。」
「
「うん、半分は貰うつもりだった。残りはギルドで買い取ってもらいたい。」
「わかりました。それでは、明日の13時までには査定を終わらせておきますので、13時過ぎにお越しください。」
「わかった。それでは、よろしく頼む。」
依頼をして処理・解体室を出たころには11時40分前になっていた。
「海兵、今から、昼食だ。今回はギルドの併設食堂で済ませる。酒も許可する。まあ、酒に呑まれて午後の予定を不意にしないようにな。」
酒の一言でテンションが上がった海兵隊員達と供に併設食堂に向かう。食堂に着くと11人が座れる適当なテーブルについて、お任せで料理と飲み物は海兵隊員のみんなはエール、僕はジュースを注文した。飲み物が全員分来たのを確認し、
「初の討伐成功に、乾杯!!」
「「「「「乾杯!!」」」」」
と乾杯をすませる。料理もすぐに運ばれてくる。
「さて、食べながらで悪いが、この町で使用できる通貨の確認だ。上から順に白金貨、金貨、銀貨、銅貨、半銅貨とある。白金貨はほぼ使うことは無いだろう。というか、露店などだと使われたらお釣りに困る店が大半だ。金貨も同じく、露店では歓迎されん。銀貨以下が実用的な通貨となる。というわけで、金貨5枚分の銀貨と銅貨、半銅貨の入った袋だ。金貨1枚分ずつに小分けしたが、
そう言って、全員に5袋ずつ渡していく。
「閣下、よろしいのですか?」ボブが聞いてくる。
「うん?金額のことかね。気にするな。これだけあれば、何かトラブルが起きても一時的な回避ができる。それに、足りないよりも多い方が困らずに済むからいいだろう?まあ、優秀な君達だから、すぐにどの程度の価値がその革袋1つにあるか気づけるだろうさ。さあ、それよりも食事だ。折角の温かい料理が冷めてしまう。温かい料理は温かいうちに食べるべきだ。」
僕は、そう言いながらオークステーキを
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