第153話 譲渡
ツフェフレの町の防衛隊長のラッセさんがやって来たので、話しを進める。
「以前の誓約書の通り白金貨40枚で城塞を譲る。間違いはないかね。」
「はい、閣下。間違いはございません。それで、最初の10枚をお支払いいたします。」
そう言ってユーソさんが革袋を応接机に置く。僕は、サッと中身を確認し言う。
「確かに。さて、それでは、城塞のほうに行こうか。」
「はっ、カールレ、ラッセ行くぞ。」
そして、ユーソさん達を加えてマルボルク城へと戻る。城門前には呂布率いる黒鎧の2,000の騎馬隊が一糸乱れずに整列していた。僕の姿を認めると、呂布が下馬すると同時に全員が下馬し拝礼をする。
「我が
「うむ、短時間でよくやってくれた。ユーソ殿、ラッセ殿、知っているとは思うが彼らが今まで守備兵としてこの城塞を
「はっ、ご助言ありがとうございます。ラッセ、守備隊からはどの程度回せる?」
「残念ながら500がいいとこでしょう。流石に2,000を超えるとなると無理です。」
「辺境伯様にお願い申し上げてしばらくは領軍を回してもらうしかないか。」
「それがよいかと。」
「話に割り込んで済まんが、冒険者はどうだ?此処というかアルムガルト領で活動している者ならば実力は相当なモノであろうし、安定した収入というのは中々に魅力的ではないかな。特に家族持ちは。」
「そうですね。1から兵を
「なに感謝されるほどではないよ。思いついたことを言ってみただけだ。さて、ユーソ殿、我々はこれより、ゲーニウス領の領都ニルレブへ向けて進発するが他に問題や疑問はあるかね?」
「いえ、ございません。旅のご安全を願っております。まあ、あの黒鎧の騎馬隊に喧嘩を売るような
「好きに付けるがいいだろう。よし、呂布!!北へ向けて進発だ!!馬車の護衛はくれぐれも気を付けるように。」
「御意。張遼!!高順!!進発だ!!」
「「はっ!!将軍!!」」
ユーソさん達に見送られマルボルク城を離れる。約2,000の騎馬隊に十数台の馬車だ。当然、目立つ。街道を2列縦隊で進んでいると通行人が避けてくれる。中には頭を下げてくる人までいる。なんでだろうと思っていると、その答えはクリスが教えてくれた。
「ゲーニウス辺境伯家の家紋入りの旗を持ってきて正解でしたわね。あの旗のおかげでゲーニウス辺境伯軍と思ってくださるから。」
「そんなもんなのかな。」
「ええ、そうですよ。ガイウス殿、商人などの情報が命の方々は特にですわね。」
「なるほどねえ。」
その後もクリスと他愛ない会話をしながら歩みを進める。そろそろお腹が空いてきたなと思い時計を取り出してみると12時を過ぎていた。適当な場所を見つけて休憩しようと呂布に提案する。
「では、斥候を出しましょう。高順、人選は任せた。」
「はい、将軍。」
しばらくして、6騎の騎兵が隊列から抜けて、駆けだしていく。
「彼らが良い場所を見つけてくれるでしょう。」
呂布の言葉に頷く。しばらくすると、6人の斥候のうち3人が戻ってきた。彼らは僕と並走しながら報告をする。
「馬上よりのご報告失礼いたします。この先、馬を駆けさせ約10分程度の場所に、黒魔の森に食い込む様な形で開けてい居る場所がありました。交代で休憩を取れば問題は無いかと。」
「このままの速度だとどれくらい?」
「30分はかからないかと。」
それならいいかな。
「呂布。聞いていたね。この先30分ほどの場所で休憩をして昼食を摂ろう。黒魔の森が近いから先遣隊を派遣して周辺の制圧をお願い。」
「御意。張遼、500を率いて斥候の後に続け。そして、休憩場所となるところの制圧をしろ。一般人には手を出すな。魔物と襲って来た人間だけ殺せ。」
「はっ、将軍。」
そう言って、張遼は先遣隊の500を率いて斥候に案内されながら駆けていった。
「呂布、僕とクリスは昼休憩をとったら先にニルレブに戻っておくよ。それと、行く先々の町で困らないように書簡を用意するからね。それと、これは金貨、こっちは銀貨ね。銅貨のほうも含めると量があるから休憩場所で渡そうか。」
「お気遣いいただきありがとうございます。資金まで用意してくださるとは。」
「騎兵はお金がかかるからねえ。必要経費だよ。気にしないで。それに、街の中では泊まれず野営になるだろうから、そのかわりに美味しいモノを食べて欲しいしね。」
「良き召喚主に【召喚】され拙者たちは幸せですな。」
そう言って、呂布がニッと笑う。僕も笑い返し、
「少しでもみんなに良い環境で仕事に励んでほしいからね。持ちつ持たれつ、だよ。」
「ガイウス殿は配下の者にも気配りができる良い領主だと思いますわ。呂布殿もそう思われるでしょう?」
「そうですな。ガイウス卿のように武勇にも優れている人物の下で働けるというのは幸運でありましょうな。」
「ですって、ガイウス殿。」
「2人して、そういう話は本人がいないところでやってよ。恥ずかしいなあ。」
そう言うと、呂布とクリスは2人して声に出して笑うのだった。
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