第152話 マルボルク城・その2

 昨夜はテレムノイ宮殿で寝た。“モスクワのクレムリン”に数ある宮殿の中でもこれを選んだ理由は、この宮殿のほうがなんとなーく貴族の屋敷ぽいから選んだんだよね。照明とかは蝋燭ろうそくみたいに火を使うものでは無くて、電気?というモノ使う電灯?っていうものだった。もちろん蝋燭ろうそく台や蝋燭ろうそくはあったけど雰囲気を出すためにあるようなものだと思っちゃった。そして、モスクワのクレムリン、あーもうクレムリンだけでいいかな。モスクワって地名みたいだし。それでクレムリンをよくよく【鑑定】してみると地下のほうに原子炉?というモノがあった。それが電気を作り出しているらしい。


 それに他にも驚いたことがある。照明自体も魔道具みたいで驚いたけど、水が出る蛇口?というモノがあったり、食料とかを冷やす冷蔵庫?というモノがあったりした。まるで、魔道具の館に来たみたいで面白かった。電子レンジ?とかいうのも面白かった。ただ【鑑定】では“卵や水など一部の飲食物は危険なので温めないように”と表示された。まあ、温める方法は色々とあるから不自由はしないけどねー。


 それに各部屋の調度品や寝具もすごく良かった。特にベッドはフワフワとして弾力のある感じで、最初は落ち着かなかったけど、柔らかさになれるとすごく快適だった。おかげでぐっすり眠れたよ。しかし、どうもこのクレムリンというモノは色んな時代のモノが混じっているみたいだ。特に原子炉というモノはジョージが生きている時代よりも未来のモノらしい。マルボルク城ではそんなこと無かったんだけどねえ。ま、住みやすければいいや。


 さて、今日は奴隷のみんなを呂布隊と共にこちらに連れてくるようにしよう。陸路だから時間はかかるだろうけどね。【空間転移】を使ってもいいだろうけど、まあ、普通の旅を楽しんでほしいという気持ちもある。だから、奴隷のみんな26人分のお小遣いも用意したよ!!


 というわけで、朝食後は早速マルボルク城へと【空間転移】する。城壁に居た呂布隊の兵士に声をかけ門を開けてもらう。そのまま兵に案内してもらい呂布のもとへと向かう。ちなみに今回はクリスも一緒だ。というか、くっついてきちゃった。昨日の夜とか同衾したいと言って仕方がなかった。他の女性陣がなだめてくれたおかげで落ち着いたけど、あの目は獲物を狩る眼だった。貞操を強制的に奪われるところだった。精通していないって前も言ったはずなんだけどなあ。本には個人差もあるって書いてあったから気にしてはいないけど、これはどうかした方がいいのかなあ。


 そんなことを考えていると、呂布、高順、張遼の3人がいる部屋、執務室に着いた。ノックをして中に入ると、すぐに拝礼をしてきた。


「楽にしてよ3人とも。」


 そう声をかけると礼をやめ休めの姿勢で僕の言葉を待つ。


「さて、今回、僕が来たのは、呂布隊と奴隷たちを僕の領地に移動させるためだ。奴隷たちの仕上がり具合はどうかな?自分の身は自分で守れるくらいにはなったかな?」


「はい、ガイウス卿。幼い子供たちは流石に無理でしたが、ほとんどの者達が得意な得物の使い方を最低限習得しました。魔物相手にはわかりませんが、そこらの野盗程度には負けないでしょう。」


「それは、なによりだね。まあ、呂布たちに護衛してもらうから奴隷たちが戦うことは無いだろうけど。」


「ですな。我らで十分でありましょう。何しろ2,000の騎兵です。歩兵相手なら2万にも勝つ自信がありまする。」


「呂布隊だとできるだろうねえ。ま、そういうわけで早速だけど出立の用意をお願い。」


「御意に。高順は兵たちに、張遼は奴隷たちに準備をさせよ。奴隷たちは素人だ。時間が掛かるぞ。」


「「はっ、将軍。」」


 そう言って、駆けて退室する2人。


「呂布。僕はツフェフレの町の代官に挨拶に行くよ。この城塞を譲渡する約束をしていたからね。」


「御意に。戻られるまでに出立の用意を終わらせましょう。」


「うん、お願い。馬車も数台、馬と共に用意しておくから奴隷たちと食糧・飲料水の積み込みは忘れないようにね。」


「はっ。」


「それじゃあ、よろしくね。行こうかクリス。」


「はい、ガイウス殿。」


 執務室を出るとすぐに腕に抱き着いてくるクリスと共に門へと向かう。城門内で幌付き馬車十数台とそれを曳くフリージアンを【召喚】する。後の事はそこらへんにいた兵をつかまえて任せた。流石、呂布隊の兵と言ったところか次々とフリージアンを誘導し、馬車に繋げていく。


 僕はいつも通りの黒馬を【召喚】し、クリスと2人乗りしてツフェフレの町を目指す。速度は軽く駆けさせる程度だ。それでも、すぐにツフェフレの町の南門に着いた。列に並ばずに衛兵詰所へ向かう。すぐに数人の衛兵が出てきて、そのうちの1人が、


「ガイウス閣下ではありませんか。代官に御用事でしょうか?」


「バルブロ隊長か、久しいな。うむ、ユーソ殿に用事があってな。」


「わかりました。貴族証を拝見させていただきます。・・・。ありがとうございます。お返しいたします。では、どうぞ、お入りください。」


「ありがとう。」


 行政庁舎に着いて、門番の衛兵に貴族証を見せ用件を伝えるとすぐに秘書のカールレさんが出迎えに来てくれた。そのまま、代官執務室へと向かう。ノックと共に部屋へ入るとユーソさんと挨拶を交わし、早速本題に入った。


「例の城塞を本日、こちらに引き渡そうと思って来た次第だが、大丈夫だろうか。」


「お待ちいただけるでしょうか。カールレ、防衛隊長のラッセを至急、こちらへ呼んでくれ。例の城塞の件だと言えばすぐに来るだろう。さ、閣下。それまではお寛ぎください。」

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