第115話 インシピットへ帰還

 10万PVありがとうございます。今後も拙作をよろしくお願いします。


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「ユーソ殿、譲渡の件であるが、先にも述べた通り、引き渡しまで1カ月はかかると思ってほしい。了承してもらえるか?」


「はい、閣下。大丈夫です。」


「うむ、それでは譲渡条件に移ろう。条件は白金貨40枚でどうだろうか。」


「分割してのお支払いが可能であれば。」


「許可する。」


「では、城塞が引き渡された際に、まずは白金貨10枚をお支払いします。残りの30枚ですが、15枚ずつ、2年に分けてお支払いしたいと思うのですが、いかがでしょうか?」


「ツフェフレの財政は持つのかね?」


「ダヴィド閣下に援助をお願いします。あれほどの規模の城塞を1から建造すれば、何年の月日や費用が掛かるかもわかりませんので許可してくださるかと思います。」


「ふむ、では誓約書をしるそう。手持ちが無いのだが、此処ここにはあるかね。」


「はい、ございます。」


 そして、誓約書の本文を文官代表として秘書のカールレさんが記入する。そして、僕とユーソさんの名前をそれぞれ書いて、最後に蝋をたらし、お互いの家紋入りの印を押す。3枚作成し、一枚はツフェフレの代官であるユーソさんが保管し、もう一枚は僕用。最後の一枚は教会に預けるようだ。これで譲渡契約は終了となる。


「良い取引ができたようで、満足している。」


「こちらもです。今日は、あちらの城塞にお泊りに?」


「そこは深く追求しないでもらいたい。ただし、しばらく守備兵が2,000ほどと奴隷が26人常駐する。守備隊の指揮官は呂布という。地位は将軍で直属の部下が2人いて高順と張遼という。それぞれ隊長格だ。何か問題が起きれば頼るといい。彼らは強いぞ。」


「リョフ将軍ですね。それにコウジュン殿とチョウリョウ殿。わかりました。事前に情報があれば、こちらも接しやすいので。」


「そうだな。それでは、私はこれで失礼しよう。ああ、最後にこのような返り血にまみれた姿で申し訳なかった。」


「いえ、黒魔の森で魔物討伐をされていたのだと、思っておりましたから。」


「そうか。では、また会おう。見送りは結構だ。」


 そう言って、足早に行政庁舎を出る。結構な時間が立っちゃったなあ。もう16時30分を過ぎているよ。早く、インシピットに戻らないと。


 門を出た後は、すぐに翼を生やして飛び上がり、マルボルク城へ向かう。そこからは“シュタールヴィレ”のメンバーを集め、呂布と「あとは頼んだ。」「御意。」というやりとりをして、インシピットの近くの黒魔の森へ【空間転移】する。そして、さも、黒魔の森から還ってきましたという感じを出しながら、門で検査を受け町に入る。


 冒険者ギルドについたのは、17時過ぎになってしまった。もう少し遅ければ、夜勤シフトに変わっていて、時間が掛かったかもしれない。兎に角、エレさんにお願いし、処理・解体室のデニスさんを呼んでもらう。


「やあ、ガイウス君。今回はどんな厄介なものかな?」


 最初から厄介なものと決めつけないでほしいなあ。


「コボルトキングをはじめとした、1,000体以上のコボルトです。」


「うん、わかった。またやってくれたねえ。カウンターの中に入って。処理・解体室に行こう。」


「わかりました。アントンさん達は、適当にくつろいどいてください。」


「ああ、わかった。さ、お嬢さん方、ゆっくり待っとこうじゃないか。」


 そう言って、酒場へとシフトしつつある併設食堂に向かう。そして、僕はデニスさんと一緒に処理・解体室に向かう。正確な討伐数である1,274体を伝えると、デニスさんは笑顔を引きらせながら、「君は化け物かい?」と言ってきたので、笑顔で「まだ、人間です。」と答えると、目を合わせずに「そうあってほしいものだよ」と言った。まあ、半神だから、まだ半分は人間だからね。間違ったことは言っていないよ。


 処理・解体室に事務室から入ると、デニスさんはグレゴリーさんの所に行き、話しを始めた。こそこそと小声で話しているがチートで強化された聴力は、距離が近いこともありその内容を拾ってしまう。目には目蓋まぶたがあるけど、耳にはふたが無いからね。仕方ないね。


 曰く、僕が1,274体という化け物じみた数字のコボルトを狩ってきた。曰く、コボルトキングや上位種も含まれている。曰く、・・・。


 まあ、事実だから仕方ないんだけど、グレゴリーさんもそんな目で見ないでほしいな。全くもう、人を何だと思っているのやら。グレゴリーさんは頭を掻きながら近づいてきて、


「あー、ガイウスよ。数が数だ。今日、明日中には無理だ。死体は、全て持って来たのだろう?また、奥の方に出しておいてくれ。素材を剥ぎ取ったあとの肉はどうする?ギルドで破棄するか?」


「えーっと、肉は使い道があるので、すべて残しておいてください。」


「わかった。では、明後日までには仕事を終わらせておこう。」


「お願いします。それでは。」


 そう言って、僕は処理・解体室をあとにした。そして、今や酒場に様変わりしている併設食堂でアントンさん達と合流し、明日の予定は明日決めることにしてそれぞれの帰路についた。


 長い金曜日だったなあ。

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