第68話 勇者?
現在、ギルドマスター執務室にて応接机を挟んで、アンスガーさんとは対面のソファーに座っている。クリスティアーネ達3人もやってきて、ユリアさんはお茶とお茶菓子を持ってきてくれて、いつも通り扉の所に立ち、誰も入らないように【風魔法】で障壁を張っている。
なんか、空気が重い。僕が昇級試験で何かをやらかしたのはわかるが、何がやらかしに該当するのか、
「簡潔に問おう。ガイウス君。君は勇者なのかい?」
「いえ、違います。」
即答だった。そんなわけないじゃないか。僕が勇者なんて。フォルトゥナ様も僕以外の人間で勇者を決めると言っていた。だから、僕じゃないとはっきり言える。アンスガーさんはなんだかホッとしたような表情をしている。部屋を覆っていた重苦しい空気も霧散したように感じる。
「そうか・・・。勇者では無かったか。よかった。」
その代わりに“半神”で“不老不死”で“世界の管理者”ですけどねー。ん、ところで今
「よかった」って言っていたよね。どういう意味なんだろう?素直に聞こう。
「どうして、僕が勇者で無くてよかったんですか?」
「それは、もちろん、“邪神”がこの世に現れていないという事だからさ。最近の“黒魔の森”では、ガイウス君たちが討伐してきたように、魔物の上位種や魔物の動きが以前よりも頻繁だったからね。“邪神”との関係が気になっていたんだよ。」
「なるほど。それで、僕を勇者だと思ったのはなぜですか?」
「まずは、君の活躍ぶりだね。冒険者になってすぐに最上位種のゴブリンキング、オークロード、ロックウルフリーダーを討ち、
「はあ、そうなんですか。【エリアヒール】は【ヒール】の対象を範囲指定できないか試したらできただけですよ。今回の要件はそれだけなら、もう行ってもいいですか?僕は勇者じゃないので。」
「行ってよろしい。と、言いたいが、前回の【リペア】も今回の【エリアヒール】も大勢の人間が見ている。【リペア】のほうは騎士団に
「ですが、“勇者”に“聖女”は神託があるはずです。そうしたら、神託のあった国の大司祭なり大司教なりが大々的に発表するはずですよね。それに“邪神”も現れていませんし。アンスガーさんもさっきそう言ったじゃないですか。」
「そうだ。だが、もし【エリアヒール】を使える者の事が、国王陛下や大司祭様の耳に入れば、
「そして、僕は、
「そういうことだ。」
ふむ。それは困った。かといって、今回の試験に関わった全員の口封じ(物理)は現実的ではない。それに僕は、殺人鬼になるつもりはない。どうするかな。ああ、これはどうだろう。
「アンスガーさん、【エリアヒール】のできる人が複数いれば、勇者とは確定できませんよね?【ヒール】持ちの冒険者に僕が教えます。【エリアヒール】の仕方を。」
「なっ!?それは本当かい!?」
アンスガーさんが前のめりになって聞いてくる。近い近い。ドウドウとアンスガーさんを落ち着かせる。アンスガーさんは、お茶をグイッと飲み。「それで」と聞いてきた。「それでとは?」と返答すると、
「それで、ギルドが君に支払う報酬はどうすればいい?」
「はっ?」
「“はっ?”ではないよ。ガイウス君。今回の件はギルドから指名依頼と出すべき案件だ。【エリアヒール】を使える冒険者が増えるだけで、ギルドの戦力は大幅に上がる。賢い君ならこの戦力の意味がわかるだろう?」
「まぁ、簡単に考えれば、冒険者の継戦能力が上がりますよね。特に上位冒険者が
「うん、国との争いについてはいらなかったかな。まぁ、そういうことだよ。ギルドとしては大助かりだから、君への
ふうむ。どうするかな。【鑑定】を使えば、その人に【エリアヒール】を覚える芽があるかどうかを判断できるから。そうだなぁ。
「それでは、1人【エリアヒール】が使えるようになるごとに金貨50枚で。」
笑顔で伝えるとアンスガーさんが白目を
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