第34話 決着

 さて、残り9騎の竜騎士ドラグーンだが、取り敢えず地面に下りてきて貰わなければならない、だから、可哀想だが、現在、低空飛行をしている竜にちてもらうことにした。


 短槍から長剣に持ち替えて、【魔力封入】で魔力を込める。魔法剣となったそれに【火魔法】を添加する。炎が立ち上がる長剣を構え、竜騎士ドラグーンを迎え撃つ。低空飛行しながら槍突撃チャージをしてくる。僕はそれを軽くかわし、竜の翼を切り裂く。上手くいったようで、そのまま竜騎士ドラグーンは墜落した。あとは、これを8回繰り返すだけだ。


 さて、8回も竜の翼を切り裂くのをしたわけだが、思いの外苦労した。なにしろ、一瞬、脳裏に銃を【召喚】しようと思ったぐらいだ。まぁ、5分少々で済んだからヨシとしよう。あとは、空から墜ちた騎士たちだ。もう竜には騎乗していなので、恐るべき竜騎士ドラグーンではない。


 だが、彼らの戦意は落ちていない。逆に高まっている。なにせ「ここまで、やれる相手とは思わなかった。心が躍る。」「仲間の仇を取ってやろう。」「血湧き、肉躍るとはこのことか。楽しいな。」などなど、バトルジャンキー的なことを言っている。まぁ、戦いながらわらっている僕が言えたことではないが。ある意味、同類なのかもね。


 さて、残り9人か。しかも、戦意旺盛な。これは、魔法剣は使わず、普通に戦おう。その方がこの人たちも納得するだろう。【魔力封入】を解除し、長剣を元に戻すと、騎士たちは「ほう。」という顔をしたあと、笑った。「気に入った。」「あぁ、俺も気に入った。」「この人数相手に普通の長剣で向き合うその度胸。気に入らんはずがないな。」などなど好き勝手に言っている。正直、真正面から褒められと気恥ずかしい。


 しかし、そんなことも思っていられない。すでに戦闘を開始してから15分は経過している。早く終わらせて最初に傷を与えた騎士を治療しないと失血死してしまう。彼らには悪いが、手早く勝たせてもらう。


 まずは、一番遠い騎士に向かって跳ぶ。自分が最初に狙われるとは思ってなかったようで、目を見開いている。が、受け止められた。流石だ。だが、ここからはついてこれまい。一瞬で背後に周り両肩と両膝に穴を開ける。そして、剣の柄で鳩尾に一撃を入れる。「がはっ!?」と言って倒れる。


 仲間のその姿を見ていた残りの騎士たちは、戦意が落ちるどころか1人倒すたびに戦意が上がっていく。そして、最後の1人となった。彼は一旦、姿勢を正し「私はアルムガルト竜騎士団団長コンラート・バウマン。」と名乗った。僕もそれに倣い「9級冒険者、ガイウス。」と名乗った。


 名乗りが終わり、互いに剣を構える。そして、僕は跳躍し上段からの斬り下ろしを放つ。コンラート団長はそれを防ぎ、押し返す。体重の軽い僕は、そのまま後ろに下がる。下手に踏ん張ることはしない。今度はコンラート団長が突きを繰り出してきた。ふむ、折角だから避けることも防御することもせず、新しい能力の【不老不死】を試してみよう。そして、僕は、体の中心を剣に貫かれる。あっけなく僕が刺されたのを見てコンラート団長は呆気あっけに取られている。


 刺されたところが熱く、痛い。喉の奥から何かがこみ上げてくる。たまらず「ゴボッ」と吐いた。血だった。うん、意識ははっきりしているし、四肢に力も入る。【不老不死】は上手く機能しているようだ。僕は剣に貫かれた状態で、左手で剣が抜かれないようにコンラート団長の右手を掴み。右手で彼の左肩を掴む。そして、両手に力を込めていく。


 コンラート団長は驚いたようで目を見開いて、剣を引き抜こうとしているが、僕が全力で阻止している。そして、右手で掴んでいた彼の左肩から“ミシミシ”と音が聞こえてきた。さらに右手に力を込めると、彼の鎧がひしゃげると同時に骨を折ることができた。彼は痛みに顔をしかめたが、まだ終わりじゃない。その後は、僕のお得意である“膝破壊”から始まり、右肩も鎧ごと破壊した。そして、鳩尾みぞおちこぶしを叩き込む。


 コンラート団長は「見事」と言って、剣から手を放し倒れた。僕は、刺さったままの剣をゆっくりと引き抜く。刺された時も痛かったけど、抜くときも相当痛い。口と傷口からは相変わらず血があふれ出てくる。剣を完全に抜き、【ヒール】を自分に掛ける。傷口を塞ぎ終わり、周りを見渡す。立っているのは僕だけだ。これで僕の勝ちだ。その意味を込めてダヴィド様に視線を向ける。しばらくボーっとしていたけどすぐに、


「しょ、勝者、ガイウス!!・・・・。」


 と宣言した。ふう、勝った。それじゃあ、失血死する前に負傷している騎士や兵士さんたちの治療をしないとね。僕は、【ヒール】を掛けて回った。途中で辺境伯軍の衛生兵の人たちが参加し、エミーリアさんも観覧席から下りてきて手伝ってくれた。


 【ヒール】を掛けて回っていると、「【ヒールがLv.10】になりました。【リペアLv.1】を取得しました。」おぉ、【ヒール】のLvが上がった。【火魔法】や【風魔法】は上がらなかったのに。それに【リペア】という新しい能力を覚えた。さて、使い道はあるかな?

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