第33話 蹂躙

 さて、16騎ほど無力化したところで、【気配察知】に歩兵隊の動きが引っかかった。僕は、歩兵隊のいる方向へ「ファイアランス」と唱え【火魔法】を数発放つ。少しの悲鳴と怒声が聞こえる。敵の歩兵隊には弓兵もいたけど、この煙なら誤射を恐れてれないだろう。実際、一本も矢は飛んでこない。


 しかし、煙も薄くなってきた。そろそろ完全に視界が晴れることだろう。その前にあと2、3騎は倒しておきたい。というわけで手近な騎士から手にかけていく。


 さて、煙が完全に晴れてしまった。地面に倒れ伏し血を流している騎士の数は22。馬に騎乗した騎士は0。煙が晴れる前に全員を地面にたたき落とした。さて、残り8人の騎士が全員、槍は捨て剣を構えている。まぁ、馬上用の突撃槍は大きくて使いづらいからね。さて、この8人も先に仕留めた22人同様にさせてもらおうか。


 一番近くの騎士に対して一気に間合いを詰める。「速い!?」とか驚いているけど、驚く暇があるなら、何らかの行動をするべきだ。固まっていると、ほら両肩に穴が開く。そして両膝にも。そして膝から崩れ落ちるまでに下腹部にも穴が開く。10秒もかかってないよ。そして、現状をやっと把握した、まだ立っているだけの騎士のみなさん、遅いですよ。


 若干の抵抗はあったものの竜騎士ドラグーン以外の騎士を殲滅した。みんな自分が作った血溜ちだまりに倒れ伏している。歩兵部隊はその光景に恐怖したのか、進むのをやめている。足が止まった歩兵部隊なんてただの的にすぎないのに。


 僕はすぐに弓に持ち替え、連射を始める。狙うは騎士と一緒で両肩、両膝、下腹部だ。すると、どうだろう。面白いように命中していく。まぁ、棒立ちの人間なんてただの的と一緒だからね。15秒で5人は仕留めた。もがき苦しんでいるから騎士たち同様、死んではないようだ。


 この15秒の間に歩兵部隊は陣形を整え、盾を構えながら前進してくる。正しい対処法だと思うが、僕には好都合だ。“M84 スタングレネード”を数個【召喚】し、投擲とうてきする。僕は、耳を塞ぎ、相手に背を向ける。すると、すぐに爆発音が聞こえた。恐らくは凄まじい閃光もあったはずだ。観客席を見ると目を抑えてのたうち回っている人々の姿が見える。


 そして、振り返ると歩兵部隊の全員が目と耳を抑えてのたうち回っていた。僕はちゃっちゃっと近づき、1人1人仕留めていく。「卑怯だぞ!!」と叫び続けている人がいたからその人は浅く首を切った。そしたら、叫ぶのをやめた。やはり、人を黙らせるのには命の脅威にさらすのが一番効果がある。


 半数ほど倒したところで「【LV.が37】に上がりました。【槍術がLv.19】に上がりました」と声が響いた。そして、また、短槍で仕留めていくのを続ける。歩兵部隊の兵士の生き残りは、血溜に倒れこむ騎士と仲間の姿を見て、恐慌状態に陥っている。


 僕はわらった。それを見て、さらに恐怖が増したのだろう武器を捨て逃げようとする兵士がいたが、すぐに追いつき、短槍を使わず、籠手で肩の骨を砕き、蹴りで膝の骨を砕く。勢い余って骨が飛び出てきた。それを無視し長剣で下腹部を真一文字に斬る。血を吹き出しながら“ドウッ”と倒れ伏す。


 それを見て僕はさらにわらう。笑みを深くする。もう既に歩兵部隊の仕留めていない兵士たちは戦意を失くし立ち尽くすか、すすり泣くか、逃げようとしている。僕は逃げる兵士から短槍で仕留める。そうして、模擬戦が始まって10分もしないうちに、竜騎士ドラグーン10騎を残して、地上部隊は全滅した。


 次は対空戦だ。素早く飛んで動く竜騎士ドラグーンには、ジョージの言っていた「偏差射撃」を試してみよう。まだ、上空を円を描いて遊弋している竜のうち一匹に狙いをつけ弓を引き絞り、目標の少し前方に矢を放つ。放つと同時に【風魔法】を使い加速させる。すると、思った通り胴体に命中した。


 しかし、それでもちてくる気配はない。次の矢を射ろうとすると、槍を構え向こうからやって来た。急降下による槍撃だ。僕は嫌がらせのように【火魔法】でファイアランスを撃ちまくる。命中せずとも隊列が崩れていくのがわかる。


 そして、先頭の竜騎士ドラグーンの槍がとどくという瞬間に、僕は跳んだ。彼の槍を籠手で弾きながら接近する。そして短槍を5カ所に叩き込む。血を吹きながら竜から落ちる騎士。ふむ。あれは危ない。下手すると死んでしまう。落下した彼はどうやら、うごめいているようなので、まだ生きているから良かったが。


 さて、どうするか。あと、9騎の竜騎士ドラグーンを倒すには。殺さないというのは、難しいものだなぁ。

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