第3話 蹴りたい背中と夜回・深夜廻・夜廻三

 ふとした拍子に、その世界観から投げ出されることがある。


 予想はしていた。

 きっとこの後すぐに、物語を展開させるための何かが起こる。

 無意識のうちに心構えをして、ぐっと前のめりになってストーリーに集中する。

 なのに、こんなにも身構えていたというのに、物語から投げ出され集中が切れてしまうことが、ごくたまに、ある。

 

 あまりにも予想の上を行き、衝撃が強すぎてついていけないせいだ。

 いい意味で、展開から投げ出されてしまう。

 そして思わず天を仰いで笑ってしまう……。



 例えば、ホラーゲームの『夜廻』とその続編の『深夜廻』、さらについ最近リリースされた『夜廻三』。

 かわいらしいキャラデザインに反して結構怖いゲーム内容もさることながら、チュートリアルの絶望感が半端ではなかったです。

 

 ゲームの基本操作を覚えつつ、ストーリーを教えてくれて、徐々にプレーヤーがゲームの世界に没入し始めたところで、いきなり愛着の湧きかけたキャラが、死ぬ。

 えっ、声が出てしまいます。頭の中が真っ白になって、ゲームの世界観から投げ出され、呆然としてしまう。

 なんとなくそんなことになりそうな気配はあったけれど、「こんな序盤からまっさかねーあはは」、なんて油断しているところに容赦なく、一瞬で、さらりと死ぬ。

 そう来たか、という乾いた笑いが出ます。



 例えば、『蹴りたい背中』。

 あまりにも出オチ過ぎて、一瞬読むのを止めようかとも思うくらい、驚かされました。

 ネタバレだけど、かなり序盤で蹴ってるんですよ、背中。

 割と思い切りに力を込めて。


 願望じゃないじゃん。蹴りたいけど蹴らない葛藤が云々な作品じゃないのか……?

 いや、まあ、でもこれはこれで、逆にすがすがしいの? この思い切りの良さが青春なの? これが青春なの? ちょっと待て、青春ってなんだ?

 随分と前に読んだ作品だけれど、くるくると思考が空回りして笑ってしまったのを覚えています。




 ……没入していた世界観から唐突に投げ出されると、集中力が切れるし、再び入り込むのに時間がかかるけれども、でも面白いな、と思います。

 読者やプレイヤーに対して、いい意味で心臓に悪い。

 でも、そんな心臓に悪い意外性が、何とも言えず癖になる。




 あ、タイトル出オチで思い出しましたが、『バン、バン!はい死んだ』という、見るからにタイトル出オチ臭がする小説がありまして。

 興味本位で読んでみたら、出オチでも何でもなく、とんでもなくブラックユーモアの効いた物語でした。こちらの小説は短編集ですので、少しでも気になった方がいましたら、ぜひ読んでみてください!


(相変わらずまとまりのない内容だなあ……)

(えへ!)




※※※※※



『夜廻』

『夜廻』(よまわり)は、日本一ソフトウェアのゲームソフト。2015年10月29日にPlayStation Vita用として発売され、後に様々なプラットフォームに対応。北米・欧州でも『Yomawari: Night Alone』のタイトルで2016年10月25日・28日にPlayStation VitaおよびMicrosoft Windows (Steam) 用ソフトとして発売されている。

2017年8月24日に続編『深夜廻』が発売された。2018年10月25日(日本以外では10月26日・30日)には2作をまとめたNintendo Switch用ソフト『夜廻と深夜廻 for Nintendo Switch(YOMAWARI: The Long Night Collection)』が発売。2019年1月25日にはDMM GAMESで配信。2019年7月27日からはiOS及びAndroid版が配信された。 2022年4月21日には続編の「夜廻三」が発売される予定である。

いなくなったものを探す少女が、夜の街を探索する。

キャッチコピーは「夜の怖さをおぼえていますか?」

(ウィキペディアより)


『蹴りたい背中』

『蹴りたい背中』は綿矢りさによる中編小説である。初出は『文藝』2003年秋季号。同年8月に河出書房新社から単行本が刊行され、金原ひとみの『蛇にピアス』と共に同年下半期の第130回芥川龍之介賞を受賞した。

(ウィキペディアより)


『バン、バン!はい死んだ: ミュリエル・スパーク傑作短篇集』

突き抜けた意地の悪さが痛快な、イギリスのブラックユーモアの女王、秘蔵の傑作群。ミステリあり、スラップスティックあり、ロマンティックな恋愛ありの、多彩な味わいで贈る日本オリジナル短篇集。本邦初訳多数。

( Google Booksより)

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