第二章

第6話 風間和夫

 「お先失礼しま~す」

 風間和夫が、のれんが片付けられたラ-メン店のドアを出て歩き出すと、薄いジャンパ-姿とくたびれたス-ツ姿の男二人が顔を見合わせ、風間の後ろを歩き始めた。風間は両手をポケットに入れ、軽く口笛を吹いている。二人は風間から五メ-トルほどの距離を置いて付いて行く。途中のコンビニエンスストア-に風間が立ち寄ると、ス-ツの男が後から中に入り風間の動きを陳列棚の奥から伺っている。風間は焼きそばと缶コ-ヒ-を買い、レジに向かう。ス-ツの男は何も買わずに外に出た。

 ジャンパ-の男はコンビニから少し離れた電信柱の横に立っていたが、風間が店から出て歩き出すとまた距離をおいて付いて行った。

 しばらくして今井レジデンスと言う名の二階建てのアパ-トに着いた。風間はポケットから鍵を取り出して、階段を上がった。そして二階の共用廊下の横で、ス-ツ姿の男から声を掛けられた。

 「風間和夫さんだね」

 風間はきょとんとした顔で「はい」と答えた。

 ス-ツ姿の男は内ポケットから手帳を見せ「警察の者ですが、少しある事についてお話を伺いたいんです」と言った。

 風間は眉をひそめて「何の事ですか?」と質問する。ス-ツの男は無表情に言った。

 「ある事件についてですが、ご同行をお願いしたいんです。少し話を訊くだけですから、ここでは何なので・・・」

 「ちょっと待って下さい。俺、まだ夕飯も食べてないし」とコンビニ袋を見せた。

 「食事は署でも食べられますから」ス-ツの男はそう言って風間の肩に手をやり、階段を並んで降りた。

 下ではジャンパ-姿の男が穏やかな口調で声を掛けた。

 「あまり時間は取らせませんから。すぐ終わりますから、ご協力下さい」

 風間は身に覚えがある事は何もないので、すぐに戻れるだろうと考え、特に抵抗などせず二人の男に付いて行った。


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