第27話「迎撃」
浜之助も、もう警備ドローンを破壊するのは手慣れたものであった。
今や中型の警備ドローンの破壊に爆薬など必要とせず、電熱ナイフとレールガンの弾丸だけで処理が可能となっていた。
浜之助は後ろのフゥや自警団に襲い掛かる中型警備ドローンを、捌く。
向かってきた中型警備ドローンのオニギリは、通過する間際に後頭部へ電熱ナイフを一突き。
これだけで、オニギリはもうショートして煙を噴き上げた。
「まだまだ!」
浜之助は片手に電熱ナイフ、もう片手にサブ武器であるタクティカルハンドレールガンを握る。
そして次々と殺到するオニギリ達を、と殺場の鶏のように処理していった。
そんなオニギリの群団の中に、見慣れない機体を発見した。
それは<ランドエスケープ>と呼ばれる、人間の背よりもやや高い体高をした二足歩行の肉食竜タイプの警備ドローンだった。
見た目は恐竜のラプトルと似ていて、その機体の特徴もそれらと似ている。
常に集団で行動し、自分より弱い敵には不意打ちを行い、自分よりも強い相手からは逃走する。
生存率は使い捨てとも呼ばれるオニギリと比べて断トツに高く、AIの知能指数も高かった。
浜之助は初めて対面するタイプの警備ドローンにも驚きはせず、挑みかかる。
慣れた調子で電熱ナイフを構えると、ランドエスケープの首に腕を巻き付ける形で登った。
それにより、ランドエスケープは突然の加重によって頭を低く傾けた。
「ほいっ!」
浜之助はその瞬間を逃さず、フォールンギアの記憶を頼りに弱点である頭部を電熱ナイフで貫き、離れる。
ランドエスケープは頭部を破壊されたことで停止し、バランスを崩して前のめりに倒れこんだ。
「次は――」
浜之助はステップを踏むように着地すると、更なる獲物を狙う。
すると、目線の先に大型警備ドローンの肉食竜型がいるではないか。
浜之助は躊躇することなく、足を踏み出した。
途中にいたトカゲとサソリに似たドラゴニピオンの中央プロセッサを撃ち抜き、更に肉食竜型に接近する。
肉食竜型は浜之助に目もくれず、バリケードを薙ぎ倒そうと肩に背負った大型の銃器である、二連装機関銃の咆哮を上げようとしているところだった。
「こっちだ、こっち!」
浜之助はアサルトレールガンに持ち替え、肉食竜型の側頭部へ牽制する。
その過程で肉食竜型の片目を破壊し、肉食竜型は浜之助を敵と認識した。
このままでは肉食竜型と距離を詰める前に、浜之助は火炎放射を浴びかねない。
だが、今の浜之助は最初と戦った時と経験もスキルも違った。
「ほいっ、と」
浜之助はエクゾスレイヴのスキルであるブーストパックを噴かしながら、もうひとつのスキルであるグラップリングフックを飛ばす。
グラップリングフックが狙い通り肉食竜型の胴体に命中したのを確認して、浜之助は勢いよくグラップリングフックのワイヤーを巻き取った。
ブーストパックの加速と、グラップリングフックの引っ張る力が合わさり、浜之助の身体は高速で跳ね飛ぶ。
気づけば、肉食竜型が口の中の火炎放射を見せる間もなく、浜之助は胴体下部へ滑り込んでいた。
浜之助はその勢いのまま排熱口へグレネードを設置し、肉食竜型の後ろへ抜けていった。
――ドオオンッ!
肉食竜型の腹の奥から爆熱が貫く。
それから爆炎は金属製の喉に収納されていた可燃性の液体に誘爆。
肉食竜型は機体の至る所から炎をまき散らし、爆音と共に倒れた。
「おっと、やりすぎた」
浜之助が爆発に自警団団員たちが巻き込まれていないことを確認すると、戦闘に戻る。
「残りは……」
ただし浜之助が周囲を見回しても、そこは警備ドローンの亡骸ばかりとなっていた。
浜之助が倒した覚えのない警備ドローンも混ざっていることから、自警団達がかなり活躍したようだ。
「ひ、ひえっ!」
それでも近くのバリケードで悲鳴が上がったのを確認すると、そこにはバリケードによじ登るドラゴニピオンの姿があった。
どうやら、バリケードに登られて自警団団員が襲われているらしい。
浜之助はエクゾスレイヴのスキルであるグラップリングフックを、そのドラゴニピオンに向けて撃つ。
狙いは正確にドラゴニピオンの背中を撃ち抜き、がっちりとフックが絡みついた。
「どっせい!」
浜之助はエクゾスレイヴの力をいかんなく発揮し、ドラゴニピオンをワイヤー越しに引っ張る。
その力は重機にも相当し、ドラゴニピオンはあっさりと宙を舞った。
浜之助は勢いをそのまま、ドラゴニピオンを地面に叩きつけたのであった。
――メシャッ
ドラゴニピオンは頭から地面に激突すると、柔らかい装甲が紙のようにくしゃりと割れて、金属の華をその場に咲かせた。
浜之助はドラゴニピオンの節足が虫のようにピクリピクリとして、それ以上動き出さないことを確認してから、フックを巻き戻した。
「これで全部か」
浜之助が周りを見ると、まともに動いている警備ドローンはいない。
僅かに動いている警備ドローンも武装が破壊されるか、中央処理装置が破壊されて攻撃手段を失っていた。
後は故障した警備ドローンを破壊するか、ハッキングして修理するかのどちらかだ。
また戦闘後を見越してか、バリケードの奥では既に怪我人の有無や死者の確認をしているようであった。
「死傷者は出たか?」
浜之助は動いている警備ドローンを処分してから、救護者の確認と治療をしている場所へ近づいた。
「負傷者はここにいる全員だけです。死者は確認されていません」
「そうか、一応人数は点呼でした方がいいな。残りの作業の指揮は」
浜之助は遠くから、やっと応援にきた自警団本隊の中に、アマリの姿を見つけた。
「自警団団長に任せておくか」
浜之助は笑い、細やかな面倒ごとは全てアマリに押し付けることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます