第22話ボス戦クリア的な?
────あぁ、これはやっばいわー。ちょっとばっか無茶し過ぎたパティーンだ。体に力入んね。
ゆっくり、ゆっくりと空から地に向けて落下している。まるで前世の最後の瞬間のように。
まぁ流石に死ぬことは無いとは思うけど、このまま落ちたら間違いなく大怪我だろうな。あーヤダヤダ。
でもいいか。セルスを覆っていた結界は解けている。パッと見だけどワニも気を失っているみたいだ。これは……俺の勝ちだな。
全部のマナを使い果たしたせいなのか、それとも解放されたセルスを見て安堵したからなのか。落下するにつれて俺の意識は静かに消えていていった。
────────暗い。なんも聞こえない。なんかデジャヴだな……あれ? もしかして俺死んだ? え、また死んだん? いやいやいやいやちょっと待て。ウェイト。ストップ。
こんな時は状況整理じゃん? えーっと、ワニと闘いーの、俺勝ちーの、力失くなりーの、落下しーの、気を失いーの…………死ぬやないかい! あの高さから落ちたら普通に死ぬやないかい! うっわマジかよ、第二シーズン秒で終わってんじゃん。いとせつなし!
「……ルーナ様? 起きてらっしゃるのですか?」
ん? あ、これちげーわ、目瞑ってただけだわ。
「はーい、起きてますよー! おはようさん!」
「おはようございます、ルーナ様。お身体の方に異常はありませんか?」
最高だわ。起きたら視界には美女。しかもその美女がおはようを言ってくれるなんて……こうゆう時なんて言うんだっけ、感無量?
まぁどーでもいーや。
「うん、大丈夫! 大丈夫? あれ、なんで大丈夫なんだ?」
俺の記憶が正しければワニから受けた攻撃は擦り傷程度のが1回だけ。でもその後に紐なしバンジーして地面に叩きつけられてるはずなんだよな。
あ、でも俺レジェンドスキルで高速再生が使えるはず。あれが
そんな事を考えていた俺に、クスクスと笑いながらセルスが答えを聞かせてくれた。
「ヴァルグですよ。あの子が落下していた貴方様を地面ギリギリで受け止めてくれたんです」
なんでも魔法が使えるレベルでマナを保有している奴は、吹っ飛ばされて壁や地面に激突する際に無意識に薄いマナの膜を張るらしい。そうする事で体へのダメージを軽減するのだとか。
俺の場合は意識も無けりゃーマナも尽きていたらしいのであのまま落ちていたら良くて大怪我、最悪は即死する可能性すらあったんだと。
なるほどねー、どうりで俺の記憶の中の異世界転生者達がド派手に闘えるはずだわ。
だって、あんだけ平和な日本からいきなり化け物達がウヨウヨいるような異世界でドッタンバッタンできるわけねーもん。皆んな一緒かは知らんけど、そうゆうダメージ軽減の仕組みが無けりゃ1回吹っ飛ばされたたけで骨ボッキンいくもんなー。
いやー、よくできてるわ異世界って。
それにしても。
「へー、ヴァルグがねー。んで? そのMVPはどこいんの? ってかそもそもここどこ?」
「ヴァルグは今アールグと一緒にお風呂に行っております。そしてここは滝の裏側の洞窟になります」
「ふーん、滝の裏側ねー。ま、場所はどーでもいーか。それより風呂! いーなー、俺も入り……ちょっと待って今アールグと一緒にって言った?」
「はい。アールグと一緒に、と申しました」
えぇー、あいつらめっちゃ啖呵切り合ってたじゃん。心境の変化がエグいんだけど。ってか一緒に風呂入るって中々よな。なんで俺が寝てる間に関係築いてんだよ! 過程がめっちゃ気になるわ!
「……アールグから聞きましたが、ルーナ様は気付いていたのでしょう?」
唐突な話題転換と少し落ち着いた声音に意表を突かれたが、セルスが言いたい事はすぐに理解できた。
「んー? あー、アールグが俺たちを試してた事か?」
「やはり気付いていらしたんですね」
「まぁなー、薄らと《第六感》で感じ取ってたんだよねー」
まぁ今更な事だけどさっきのアールグとの闘い、後半はわりとお互いにガチだったけど前半の俺がイケイケの時はぶっちゃけアールグは本来の力の半分もだしていなかったと思う。
勿論、俺を試す為に。
理由はサッパリ分からんけどな。
「俺とも仲良くしてくれるかなー?」
「それに関しては全く問題ありません。あの子は卑屈な子ではありませんから。それよりもルーナ様、しつこいようですがもう一度だけ。お身体に異常はありませんか?」
「ふむ、ないな」
「では少し聞き方を変えましょう。お身体に違和感はありませんか?」
違和感? 特にないような────いや、なんか違うな。表現しづらいけどなんか違う。
「もし、無理がないようであれば1度お立ちいただければお分かりになるかと」
セルスの言葉通りに伏していた体を起こす。そして、俺の違和感は立ち上がった瞬間に理解する事ができた。
「…………俺、成長してね?」
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