第15話地雷ブチぬき、要注意!

 3つ目のエンシェントスキルは、別名で古代神術と呼ばれている。強力かつ凶悪であるが故に、現代まで語り継がれる事なく消滅の一途を辿ったスキル。ゴッドスキルと同等の階級らしいが、能力によってはゴッドスキルを遥かに凌駕するものもあるらしい。

 ちゃっかり密かに継がれたモノがチラホラあるらしいので使用者はいるらしいけど、自力で発現するとなると困難を極めるものだという。


 最後に、別枠のユニークスキルだが。

 これは別名でオリジナルスキルとも呼ばれていて、使える者は1つのスキルに対して1人だけ、発現したものだけらしい。

 魂に呼応するスキルなので、模倣しようとしても絶対に成功しないという唯一無二のスキルである。

 能力に関してはピンキリで、ノーマルスキル並みの力しかないモノもあれば、ゴッドスキルやエンシェントスキルに並ぶほどのモノもあるという。

 当たり外れが激しいし、発現率もかなり低いらしいけど、俺はこれが欲しい。

 なんかガチャ回すみたいで地味にテンション上がるわけよ。


 少し長い話だったけど、これでスキルについての説明は終わった。

 ここからは、俺が今現在なんのスキルを発現してるか確認する時間だ。


 と、思って軽く背伸びをしていたら変な違和感を感じた。

 なんて事はない、ヴァルグのスピードが落ちているのだ。

 さすがに飛ばし過ぎて疲れたかなーと思って顔を覗き込むと、なんともまぁ今にも死にそうな顔でしたとさ。


「うぉい! 今度はなんだ⁈ 一回止まろう、な!」


 結構マジで心配になったので、一旦休憩をいれる事にした。

 しかし、どうしたコイツ。本来ならまだまだ全力疾走できるはずだけど……もしかして俺パチこかれたか?


「どうしたんだよ、ヴァルグ。そんなに辛かったのか?」


「す、す、ハァ、す、すいません。少し、よ、予想と違いましたもので」


 予想? ただ背中に乗せて走るだけなのになんの予想が必要なんだ?

 あ! もしかして────


「そんなにセルスが重かったのか?」


「えっ……」


 俺の言葉に反応を示したのはヴァルグではなくセルスだった。

 顔を赤らめ、自分の二の腕や腹周りをさすっている。

 俺が重いわけないし、違うとは思いつつ一応聞いてみただけなんだけど、なんか悪い事をしたな。


 空気はよめるけどデリカシーがない! 生前に梓に言われまくった言葉を思い出した俺だった。


「いえ、そういうわけではなくですね……そのー、何て言えばいんでしょ」


 少し回復して普通に話せるようになったヴァルグだが、歯切れが悪い。

 いつもみたいにキレッキレッに言葉を紡がない。

 俺とセルスを交互に見ながら言おうかどうか迷ってるらしい。

 仕方ない、ここは俺が救いの手を差し伸べてやろう。

 なんてったって、もう仲間なんだから!


「どうしたヴァルグ! 怒らないから言ってみ!」


 こうゆう時は、明るく聞くにかぎる。俺の経験則だけどね。


 そしてようやく、ヴァルグが口を開いた。


「実は……我々二角黒馬バイコーンは不純を司ると言われており、清らかなモノが苦手な種族でして……」


「からの?」


「その清らかなモノの中に、処女も含まれます」


 処女…………

 おい、おいおいおい、それってまさかの────


 チラリと後方を見ると、案の定セルスが顔を隠していた。

 さっき以上に顔を真っ赤にして。


 気まずっ!


「も、申し訳ありません! 僕が不甲斐ないばかりにセルスさんに恥をかかせてしまいました!」


 バァカ! 大声で謝るんじゃないよ! 余計恥ずかしいでしょーが!


 ほら見なよー、セルスちゃん泣いてるじゃーん。

 ちょっとそこの男子、ちゃんと謝りなよー。


 俺の脳内もプチパニックである。

 フォローすべきなんだろうけど、ヴァルグのクリティカルのおかけでセルスは今にも死んでしまいそうだ。


「だって────」


 セルスが口を開く。

 さっきまでの恥ずかしさはすでに失く、涙もない。

 ただ無表情である。

 こいつ……ヤケだな。


「だって、仕方ないじゃないですか。私は4000年間ずっと転生空間にいましたし? 神界には用もないので顔も出していませんし? 私以外の転生神も皆んな女性ですし? 異性とか別にどうでもよかったんですから!」


 落ち着け落ち着け、誰も責めてないよ。

 

 すっごい早口ので幕仕立て上げるセルスは本当に怖かった。

 しかし、今度は4000年ときたか。

 俺はあの殺風景な純白の空間を思い出しながらしみじみ思う。

 まぁ、ヴァルグと違って他の転生神と交流があったみたいだし、神界とやらにも行こうと思えば行けたと言うし、別にボッチだったわけでは無いみたいだね。それは良かったよ。


「ルーナ様は経験豊富のようですね」


「ん? まーなー、クズい事言えばその中に本気で好きな奴なんていなかったけどなー」


「それでも経験は経験です! 人間において男女の営みなど所詮は娯楽の一つに過ぎないのでしょうから!」


 おぉっと、こいつぁ手厳しい意見だな。

 まぁ実際、そう思ってる奴もいるだろうな。俺にとっては惰性に近かったけど。

 しかし、やっぱり結構価値観違うなー。

 軽い気持ちでヤった、なんて女子に言おうものなら「最低!」とか「クズだねー」とか結構辛辣な言葉が返ってくるもんだけど。

 セルスはそれを経験の一言で括るし、しまいにゃ娯楽と言っていた。純粋な意見の気もするけど、どこか冷めた感じもあるんだよね。

 こうゆうところが神と人の差ってやつなのかねー。


 なんて事を考えていたらどうやらヴァルグが復活したようだ。

 

 

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