第13話行くあてなくても行っちゃいます!
「なんで会ったことねーのにいるって分かんだよ!」
「えーとですね、うーん、なんて説明したらよいのやら……」
呆れ果てた俺と、困り果てたヴァルグ。そんな俺達をただ見守るセルス。
三者三様の少し混沌とした空気感。
それを打ち破ったのは、セルスだった。
「ルーナ様。ヴァルグの言う通り、山神は存在いたします」
「あ、そーなん? オッケー、んじゃ会いに行こうか」
「なんでセルスさんの言葉そんな簡単に信じるんですか⁈」
「うるせー、ハゲ! 自分の胸に聞き腐れ!」
「我が胸よ! いったいなぜなのだ!」
「本気で胸に聞く奴があるかぁ!」
ちくしょう! 俺だってボケたいのに、完全にヴァルグのペースだぜ。天然のボケ担当はかなり厄介だ。
あー、でも生前も俺ってツッコミだった気がする。
セルスもクスクスと笑ってるし、意外とゲラかも知れないね。
ま、誰かしら笑ってくれるならそれでいーか。ボケさせるだけボケさせて、誰も笑わないという悲惨な末路だけはなんとしても避けたいし、ツッコミで良かったかも。
隙あればガンガンいくけどな!
そう決心をつけたところで本題に戻ろう。
「よし、じゃあ早速山神に会いに行こう! セルス案内よろしく!」
「それなのですが……申し訳ございません。先ほどから探しているのですが、場所が全く掴めないのです」
なに? セルスはかなり有能だ。ってか神様だしね。不可能はない、ぐらいの存在だと思っていたけど……
「山神様は
セルスの言葉にヴァルグが続く。
ヴァルグの話だと、山神は自分を封印しているのだという。
なんでも、
自分はともかくとして、周辺に生息する他の生物を案じているのだそうだ。
さすが山神。自分の身ではなく、山に住まう生命を大事にしている。随分と誇り高い生物だなと俺は思った。
それと同時に、ヴァルグと同様にボッチなのではと心配になったのだ。
「なるほどな、居場所は分からないか。……唐突だけど1つ質問いいか?」
俺はセルスに向かって問う。
「なんなりと」
「俺の寿命ってどんくらいか分かるか?」
セルスは脈絡のない俺の質問に多少驚いたようだが、すぐさま答えをくれた。
「そうですね、現段階でも100年は生きられるかと。進化を重ねれば寿命を延ばすことも可能です」
なんと、素晴らしい。こんなおチビの状態でも100年か。これは1000年生きるのもわけなさそうだな。
続いたセルスの説明によれば老化もあまりしないのだとか。
まぁ、長い年月を考えれば老化のペース自体遅くなるのは理にかなっていると言えるだろうな。
「ですが、この世界において寿命で死ぬのはほとんど人間だけなのです!」
セルスの説明をヴァルグが引き継いだ。
なんでも、人外の種族は寿命で死ぬ事があまり無いらしい。
種族間の抗争やら人間に狩られたりで死ぬのがほとんどのようだ。
元人間の俺としては、弱肉強食である事も、人間の狩りの必要性にもそれなりの理解がある。けれど、狩られる側からしたら理不尽に思うのかも知れないね。今となっては俺自身狩られる側だし。
多少話が逸れてしまったので本題に戻そう。
俺が聞きたかったのはあくまで俺の寿命だ。これさえ聞ければとりあえずはそれでいーや。
なんせ時間はたくさんある。
このまま山神を探すも自由、旅に出るのも自由なわけだしな。
「寿命があるのは分かった。人間の脅威はあるけれど、今考えても仕方ない! とりま楽しく過ごそうぜ!」
「「仰せのままに!」」
別に命令したわけでわないのだが……
本人達がいいいならいいか。
こうして俺たちは、ヴァルグの背に無断で跨がり、あての無い旅路を始めることにした。
進む道を決めるのはもちろん俺。ヴァルグの角の間に挟まる感じで頭部に乗っている。セルスはお上品に背中に乗り、ヴァルグ本人は役に立つ事が嬉しいらしく、結構スピードを出して走っている。
絶叫系のアトラクションが好きだった俺にとってはテンション爆上げだわな。
女性で、しかも長髪なセルスは嫌がるかと思ったけど、はしゃぐ俺を見て微笑んでいるし多分平気なんだろうな。
とりま道中の分岐は全部勘なのだが、元々は行くあてがあるわけではないので、酷い目にあっても誰も責めないだろう。ってか責めないで欲しい。
分岐が無ければ俺は暇なので、セルスからスキルについての説明を聞く事にした。
「よし、セルス! 出番だよー! スキルについて教えてくれ!」
「かしこまりました。それではまず、【進化の系譜】をお出し下さい」
「あいよ! あっ!」
言われたとおりに出した俺だが、なんという事でしょう。風に吹かれて飛んでいったではありませんか。
普通に考えれば当たり前だよなー。走ってるジェットコースターの上で本を読めますか? って話よ。
なんて落ち着いてる場合じゃない! 急いで拾わなければ!
「ヴァルグ! バック、バッーーーーーク!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます