第12話紹介します! ニューメンバーです!
「お前、情緒大丈夫か?」
「すいません、あまりにも嬉しかったもので……つい」
最初に流れた一粒の涙を皮切りに、いきなりギャン泣きしだしたのでセルスに1発かましてもらった。
でも、決してその涙を不快に思ったわけじゃない。泣き止まないと話が進まないので強制的に泣き止んでもらったわけだけど。
待ってやるのが優しさだとは思うがお生憎様、俺はそんなに優しくはないのです。
「そんなに嬉しいの?」
「はい。300年間、ずっと1人ぼっちでしたから……」
「300年⁈」
おいおい嘘だろ。さすが異世界ってか? 長生きしすぎだろ。しかも、その間ずっと1人だってーのかよ。性格ウサギの俺には絶対に耐えられん。
こうして俺は、ヴァルグの涙の意味を知り、理解した。
「実は、僕って親に捨てられた身なんですよね! 群れの中でもなぜだか浮いてましたし、多種族はおろか、身内にも友達すらいません!」
堂々と言い切る事じゃないと思うけど。コイツ見てると本当に悲しいんだか怪しくなってくるわ。
つまりはボッチか。生前にもボッチは少なからずいたけど、300年間ずっと1人だった奴に比べれば多少なりマシだったんじゃないかと、この世界に来て思い知る俺ちゃん。
その俺にヴァルグの言葉が続く。
「そんな僕を……本当に仲間として、配下として迎え入れて下さるのですか? 貴方は強い。
「そんなもんはどーでもいーっしょ! 俺は別に強い仲間が欲しいんじゃない、欲しい奴が欲しいんだ! それに、もしもお前が弱いなら、そん時は俺とセルスが守ってやる! だから一緒に行こーぜ!」
フッフッフッ、決まった。ナンパの成功率を上げるために努力し、手に入れた爽やかな満面の笑み。
加えて、事実に若干の嘘を混ぜる事で利益を得る詐欺師手法。
これで落ちない奴はいまいよ!
あ、ちなみに事実はヴァルグを仲間にしたいってところよ?
嘘の方は俺とセルスが守るってところな!
自慢じゃないが、俺は喧嘩は弱い! っていうか1回しか殴り合いの喧嘩をした事がない。その1回も秒でぶっ飛ばされて翔也に助けてもらったんす。
ってなわけで、いざというときはセルスに助けていただきます。
「私風情を────」
ヴァルグが口を開こうとしたその時、俺はヴァルグを止めた。
俺個人として、とても気に入らない事があるからだ。
「待て、ヴァルグ。いいか、これから仲間になるにあたって1つ注意点を言う。ノリとか、軽い会話の中でなら自分を卑下するのはいいと思う。でもな、こういう真面目な話の時に、自分を卑下するのは許さない。他の誰にバカにされても、自分で自分を貶めるな。いいな?」
話の腰を折ってしまったが、これだけは譲れない。
自分をバカにするって事は自分が今までしてきたこと、自分と関わってくれた人すらもバカにする行為だと思う。そうゆうのは、ぶっちゃけ好きじゃない。
高飛車になれとか、自信過剰になれって事じゃなく、周りの価値観とかを自分1人の思い込みで決めるのは良くないよってことね。
「分かりかました! それでは本日、今この時より! 僕……じゃなくて、私ヴァルグはルーナ様に忠誠を誓います!」
「おう! よろたろー!」
「よろたろーです! セルス様もよろたろーです!」
「私に敬称は不要です。気軽にセルスと呼んでいいですよ」
順応早いな。もう俺の挨拶についてきてやがる。
でも、なんだかんだバイブス合ってきた感あるし、セルスも仲間になった事でいつもの優しいセルスに戻ってる。
なんだか楽しくなる予感がするな。
こうして、ヴァルグは俺の仲間になったのだった。
「時にルーナ様」
「なにー?」
「これからどちらへ向かう予定でしょうか?」
ヴァルグが俺に問いかける。
確かに、気になるよな。いつまでもここにいるわけにはいかないし。どうしよう。
正直、最初は人間の街に行く予定だった。だけど転生してみたら俺は人間じゃないし、さっきの冒険者達を見てもあまり歓迎される気がしない。
行くにしても少し様子を見てからの方がいいだろう。
どこか旅に行くにもこの世界の情勢に疎すぎるし、実を言うと八方塞がりの状態だった。
「まずはこの山で地盤を築きたいな……」
「それでしたら山神様にお会いした方がよろしいかと」
「山神……だと?」
俺の顔は青褪める。冷や汗をたらし、少し震えている。
俺の中の山神のイメージはぶっちゃけも○○け姫である。具体的に言えば、猿顔の鹿。
小さい頃はあの顔が怖かったんだよなー、あれって妙に人間らしい分ホラーだと思う。
ちょっと盛ったけど、正直今も怖いです。トラウマになってます。
「はい! このホワイス山脈の守神で、かなり強大で神聖な力をお持ちだとか」
ふむふむ、ここはホワイス山脈というのか。なるほどね、どうりで崖やら森林やらしかないと思ったよ。
しかしコイツ、ちょっと気になる言い回ししたよな?
「お前、会ったことないの?」
「アハハハ、もちろん、ありませんとも!」
コイツの話は聞くだけ損かもしれないと俺は思った。
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