第3話 出会い1

帝都を出発してから、1週間が過ぎた。森林に住むと言っても、広大な面積を誇る森である。闇雲に探しては見つかるものも見つからない。エヴァは、情報収集をしながら、一旦森の西側を迂回しつつ北を目指していた。この世界の人間の移動手段は馬が主流だ。慌ててはいないが、悠長にしている意味もない。馬が疲れない程度のペースを保ちつつ、移動距離を稼ぐ。

「森に住むなら、流れ村で何か聞ける…か」

エヴァが言う流れ村とは、森で調達した品々を卸したり、交換などをする村で、トットルバがそれにあたる。こうした村はいくつもあるが、団員となってからは、訪れる機会がほぼなくなっていた。僅かな記憶を頼りに、覚えている流れ村を探すことにした。


ーーー


フェイは基本森の恵みとなる木の実や植物を主食としている。タンパク質は、たまに動物の自然死などに遭遇したときに拝借して頂く。そのため、希少な木の実や植物、鉱石などを卸しに村に出向く。と言っても、あまりお金には困らない。お金で調達するものと言えば、食用植物の種や、調味料などぐらいだ。種はフェイが住処にしている近くのに畑を作っているので、そこで育てている。そのため、お金でのやり取りというよりは、物々交換をすることが多い。取引相手からすれば、非常に助かる相手として、重宝?されている。


通称流れ村、トットルバ。規模や面積は大きくないものの、物品の交換所や、大小さまざまな宿屋、数こそ少ないがいくらかの住居、情報交換などの場にもなってる大きめの酒場がある。西部劇にでも出てくるような質素な町だが、人もそれなりにいるし、活気もある。


昼過ぎに着いたフェイは、今日泊まる宿屋に予約に向かう。さすがにとんぼ返りには無理があるからだ。予約のついでに宿屋の食堂でお腹も満たす。一段落ついた後、交換所に今回の品を持っていく。今回は少しの鉱石と、食用だが、頼まれていた少し珍しいキノコ類などだ。調味料と少しのお金を交換する。品物にしてはお金が少なく見えるが、宿代だったりの滞在費は既に差し引かれている。これはフェイお決まりのいつものことだからだ。


そうこうしているうちに、辺りは暗くなっていた。交換する量はそこまで多くないが、様々な卸先用に小分けにしていく作業があるため、無駄に時間がかかるのだ。

最後に酒場の主人に頼まれていた、お酒にあう果物や、おつまみ用の木の実を直接私に行く。これは公式の取引とは関係ないが、まぁそこは顔馴染みとしてと言ったところか。

「酒屋の主人は酒以外の味にも厳しいからな〜」

などと、口元を緩めながら酒場に向かう。すると、何やら酒場の前に珍しく人だかりが出来ている。

「なんだろう?」

近づくと、知った顔が人だかりの後方にいたので、フェイは声をかけてみた。

「どうしたんだい?人だかりとは珍しいね」

「なんだか美人の騎士様とダラク達酔っ払いの奴らが揉めてんだよ」

「女性の騎士?なるほど、それで物珍しさにこの状態というわけですか」

「こんな村に騎士が来るのも珍しいが、それが美人となれば見ない手はないだろう」

騎士云々と言うより、とにかく美人だったから見たかったのが真意だろうとは言わずに置いておいたフェイであった。

そんな思いは一旦置いておき、渦中の人物達を眺めてみる。

アウトローなメンバーの中には、騎士よりも実力が上の者がいるのはいる。自分は騎士なんかよりも強いなどと、自負する者もいる。今まさに騎士に絡んでいるダラクと呼ばれる男はその1人だ。ただし、フェイは明らかにこの女性騎士の方が実力が上だということにすぐ気づいた。しかもかなりの実力に差がある。女性騎士は落ち着き払い、相手を冷静に見つめている。

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