第30話大暴露
ーー翌日のお昼休み。
「ククク、ソロモンよ。我は帰ってきたのですっ!」
机を寄せている途中で、遥さんがお弁当の包を手に教室に飛び込んできた。
「あれれ、遥さん?」
「なんか、久しぶり?今日はこっちで食べるの?」
「うむっ♪やっぱりお姉様と食べたくてきちゃったのです!」
ここ最近は、言いつけどおりご自分の教室で召しあがって頂いてたんだけど。
「自分の教室で食べるって、葵と約束していたでしょう?」
「問題ないのです。今朝お姉様からその許可をとったのです。」
「葵ちゃん、そうなの?」
「・・・葵?」
「え、えっと・・・許可、しちゃいました。」
断りきれくて・・・と言うべきか、本音では遥さんが言い出してくれるのを待っていた気がした。
「えへ・・・はるか、わがまま言っちゃった?」
「いえ、構わないですよ。私も、遥さんがいなくて寂しかったですから。」
「相変わらず、葵ちゃん、遥には激甘だね〜。」
確かに、甘いのだろうな。色々な意味で。
「むふー、ねぇねぇっ、あのねっ、お姉様♪」
「はい、何ですか?」
そして、遥さんはお弁当を机に置くと、何の脈絡もなくーー
「てやっ♪ごろごろにゃ〜ん♪」
遥さんが抱きついてきた。
「うわっ、いきなりなんですかっ?」
「ぎゅーって、したくなっちゃったの。ダメ?」
「だ、ダメでは・・・ないですけど。」
「えへへ、やたっ♪ぎゅっぎゅーっなのです♪やっぱり、お姉様っていい匂いがするのです♪」
「あ、ありがとうございます・・・。遥さんも、なんだかホットミルクみたいな香りが・・・。」
「それって、いい匂い・・・なのです?」
「はい、もちろんですよ。」
「牛乳拭いて放置した雑巾の香りじゃなくて?」
「結衣さんじゃないんですから、そんな匂いにくっつかれて喜ぶ趣味はありませんよ?」
「私、全く関係なくないですかっ!?」
結衣さんが叫ぶ。
「・・・てゆうか、何だろこれ?」
「いつも以上に、仲良し?」
・・・流石に、みんなの前じゃマズイかな。
でも、離したくないな。遥さん、温かくていい匂いで気持ちいい・・・。
「ねぇねぇ、お姉様?はるかのこともギューッてして?」
「は、はい・・・♪」
おずおずと、遥さんの背中に手を回そうとする。
「ふにゃぁ〜♪すりすり〜♪」
「ぁ、あは♪くすぐったいですってば♪」
抱きしめるより先に、ぴたっと身体をすりつけてくる遥さん。
お、おっぱいが・・・ムニュムニュって。
「葵・・・・・そろそろご飯にしたいのだけれど。」
「は・・・・・っ!?私は一体何を!?」
天音さんの声に我に返り、慌てて遥さんを引き剥がす。
「いいところだったのに・・・、お姉様ぁ〜!」
「み、皆さん見てますから!遥さん落ち着いて!」
「何を今さら。このくらい大丈夫なのです。」
「確かに今さらですね。さっきまで葵様も嬉しそうにしてましたからね。」
「てゆうかさぁ、これってーー」
「とにかく!お弁当食べましょうっ!」
円香さんが言い終わる前に私が遮った。
「むっ・・・わかったのです。お姉様にははるかが食べさせてあげるね。はい、あ〜ん♪」
「えっと・・・あのっ。」
「だめ?」
「駄目では・・・ないですけど・・・。」
「今までもこういうことあったけど、葵ちゃん拒否してたよね?」
「遥さんも、今まで以上に葵様を慕ってらっしゃいますよね?」
・・・・すっごく、外野の方でひそひそされている。
「お姉様、このくらいなら大丈夫だよね?」
駄目だろうと、理性は言っている。
だけど、私としても『まぁこれくらいは』というのが本音だったりして。
「・・・昨日の特訓、効果バツグンですね。」
「えへへ・・・だよね〜?」
遥さん自身も、ちょっと自覚があるらしい。
私達は二人とも、あきらかに昨日までよりも、恥じらいを軽く超えられるようになっている。
ハグとか、イチャイチャ食べさせ合う程度、もはや私達には大したことないわけで。
「本当にこの二人どういう関係なの!?」
「このくらいなら・・・って仰ってましたよね?ということは・・・。キャッキャウフフしてるだけではなく、もっとすごいことを・・・?」
「百合っ、ガチ百合ってことなのっ!?」
・・・照れながら遥さんと見つめ合っている間にも、外野の皆さんが真相に辿り着きつつあった。
ど、どうしよう・・・これ。
「ねぇ・・・、お姉様?もういいよね?」
「え・・・?い、いいって何がですか?」
「むしろ、既に隠すだけ無駄っていうか・・・。」
うん、と頷いて、一人で勝手に何かを納得する遥さん。
「あ、あのっ!みなの衆!ちょっとよろしいか!」
「な、何でしょう?」
「そ、そなたらの慧眼恐れ入る!じ、実は我とお姉様は愛し合う仲だったのです!」
「って!?ちょっ、遥さんっ!?」
この人、どうしていきなり自ら暴露にいくかな。
「だって、もう勝手に気づかれちゃったのです。」
「そうですけど!だからって認めなくても!」
「でもでも、ちゃんと言っておかないとお姉様にちょっかい出されたら困るのですっ!」
「いやいや、そんなの出さないからねっ!?」
「あ、あと我もお姉様の恋人だからちょっかいを出されても完璧に無駄なのです。」
「もっと出さないわ。」
「・・ククク、お姉様なら少しは可能性があったというわけか。やはり所有権を宣言しておいてよかったのです。」
「ん〜、まぁ葵ちゃんに魔性の女っぽいのがあるのは事実だし?」
「何ですかそれっ!?私にそんなのありませんよっ!」
「でも、実際遥が百合の道に堕ちたわ。」
「とゆうか、葵様本人も・・・ですよね?」
「うぐ・・・、それは・・・。」
なんだか反論が難しくなってきた。
「それより葵様、ちゃんと確認したいんですけど・・・。マジですか?」
「そう、それっ。葵ちゃん、マジなの?」
既に言い訳をしても手遅れとしか思えない。
「もぉヤケです・・・!そうですよ!遥さんの仰る通りお付き合いしています!」
「お、女の子同士で・・・?」
円香さんが尋ねてくる。
「・・・はい。女の子同士で。」
「えっと・・・それっていいのかなぁ?」
「いえ、こんな身近にいるとは思いませんでしたけど、他にも百合カップルはいますからね。」
「えっ?いるんですか!?」
「割といますよ?一クラスに1組か2組くらいは。」
・・・そうだったのか。女子校すごい。
「それで・・・あのさ、付き合ってるってことは、友達以上の関係なんだよね?」
「うむ、我らは特別な絆で結ばれているのですっ!」
「具体的には・・・?キス・・とかした?」
「ふへ・・・♪そのくらい余裕なのです!」
「えっ!つまり・・・それ以上のことも?」
「う、うむ・・・まぁ・・・。」
「あわわわわっ!遥さん、ストップ!」
「お、お姉様が恥ずかしがってるから内緒なのです。」
「ごくり・・・。すごいことしちゃってるみたいですね。」
「やっば、二人見てたら変な気分になりそう。」
慌てて遥さんの大暴露を止めたが、みなさん多分想像だけで正解まで辿り着いていた。
「うぅ・・・恥ずかしすぎます・・・。」
「んふ〜♪やっぱり恥ずかしがってるお姉様、最高に可愛いのです♪」
「困ったことに、そこは理解できるわね。」
「しなくていいですからぁっ!それより、あの、円香さん、結衣さん・・・っ。」
恥ずかしいのと怯えた気持ちをごちゃまぜにしながら、恐る恐る尋ねてみる。
「ドン引きしてないですか・・・?気持ち悪かったり・・・。」
「んー、どうだろ・・・女の子同士だからギリセーフ?」
「円香さんが、私のおっぱい触ってくるのと、やってることは変わりませんからね〜。」
・・・もっと大胆な場所も触ったけど、黙っておこう。
とにかく、気持ち悪いと思われていないのなら、そして今後もお友達でいてくれるのなら御の字だ。
だけど、まだ問題がもう一つ・・・。
・・・さっきから、天音さんがじいっと私を見つめつづけている。
明らかに責めるような視線。
「お姉様っ♪そろそろお弁当食べようなのですっ!」
「は、はい!そうですね。」
「ではでは、あ〜んっ♪」
「あ・・・やっぱりそれやるんですね?」
「当たり前なのですっ♪あ〜んっ♪」
「あは・・・・、いただきます・・・。」
「むぅ・・・・・。」
天音さんが睨みつけてくる。
今さら、遥さんを突き放すわけにはいかなくて。
じっと見られている私だけが気まずいお昼ご飯になりそうだった・・・。
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