第8話理事長代理
翌日、学園へ登校した私達を待ち受けていたのはとんでもない真実だった。
「学園前、すごいマスコミの数ですわ。」
「私も先程インタビューされましたわ。」
女生徒たちが騒いでいる。
「はぁ。大変なことになったわね・・・。」
円香さんがつぶやく。
「ホントね。アリエル祭をひかえたこんな時期にどうしてこんなことになっているのかしら。」
天音さんが言う。
「私達は信じて待ちましょう・・・・。」
今朝から、新聞やテレビでニュースが流れている。
聖アリエル女学園の理事長が逮捕されたと。
話によると、先日、電車の車内で痴漢を行なったというのだ。
しかし本人は容疑を否認しており、逮捕・勾留されたのだった。
「ねぇ、葵。放課後、お父様が私と葵に話があるから屋敷にきてほしいそうよ。」
「会長が!?わかりました・・・。」
その日1日は学園内はずっと理事長の話題だった。
放課後になり、私達は久しぶりに天童家の門をくぐった。
「おぉ、天音、葵くん、久しぶりだね。問題なく学生生活を送れているらしいな。」
「ごきげんよう、お父様。それで、わざわざ私達を呼び戻したのはどうしてですか?」
「ふむ。知ってはいるだろうが・・・。理事長のことだ。彼が痴漢などをする男じゃないことは私が1番よく知っている。しかし、逮捕されたからには裁判までもつれ込むのは間違いないだろう。」
「そうですね。本人が否認している以上、示談もしないでしょうし・・・。」
「そうなんだよ。彼には優秀な弁護士を私が手配したからまぁ無罪になるだろう。
しかし、長期間理事長不在というわけにもいかない。アリエル女学園の人事については、理事会会長である私に全権利が存在する。」
「はぁ、そうなんですね。」
「そこでだ。代理を立てるにしても私の息のかかっていない者にまかすわけないはいかないんだよ。葵くんの正体がバレてしまうからね。そんなわけで、理事長の冤罪が証明され、復帰するまでの間、天音。君が理事長代理をやるんだ。」
「えっ!?お、お父様!?・・・冗談を言っている、というわけではないのでしょうね。
わかりました。私に理事長代理がつとまるかはわからないけれど、葵のためだもの。頑張ります。」
「そうか!やってくれるか!いや、良かった。まずは明日の理事総会での話し合いになるがまぁ、私の娘ということなら反対するものはいないだろう。そして、葵くん。君には理事長補佐をお願いしたい。聖女という立場もあり、大変だろうが天音を助けてやってほしい。」
「かしこまりました会長。ボクもできる限りサポートさせていただきます。」
「うむ。よろしく頼む。」
寮に戻り、みんなに事情を説明する。
「天音さんが理事長!?」
「まぁ、代理なのだけれど。」
「それは大変なことになりましたねぇ。理事長のお仕事がおありになるんじゃアリエル祭の練習もできませんよね。」
「そうね。そうなるかしら。でもいいの。私、理事長としてみんなのためになるのなら。学園のみんなが『楽しく』学園生活を送れるように頑張ってみようと思うのよ。」
「天音お姉様、すごいのです。」
「まぁ、私が天音さんをできる限りサポートしますのでみなさんはご心配なさらずに。」
「そうね。葵ちゃんがいれば安心ね。」
円香さんが言う。
「明日、理事総会で決まるらしいから理事長としてのお仕事は明後日からになるわね。」
翌日、グラウンドに全校生徒が集められた。
これから選ばれた正規騎士たちと騎士候補生の練習試合があるらしい。
聖女である私は放送部の特別席に案内された。
「さぁ、ただいまより練習試合を始めますっ!実況はこの私、放送部部長の桐谷千里が行います!解説は我らがお姉様、一条葵様をお招きしております!」
「えっ!?解説って、きいてませんよ!?」
私が小声で桐谷さんに言う。
「そんなの適当でいいんだって!お姉様が言えば何でも様になるんだから。」
そして選手が紹介される。
「さぁまず紹介するのは優勝最有力候補、学生会長であり前年度優勝の『最強の白』天童天音様です!」
「ごきげんよう、天童天音です。今回は練習試合だけれど相手に遅れをとらないよう気を引き締めます。そして、我々選ばれた騎士は他の学生のよき模範となることができればと思います。最後に、候補生のみなさんは遠慮せず我々に挑んでちょうだい。」
白い鎧を胸につけた天音さんが挨拶する。
「続きましても前年度の騎士で優勝候補の『無敗の緋』東雲円香様!」
赤い鎧をつけた円香さんが挨拶する。
「さらにさらに、またもや優勝候補『無敵の黒』鳳凰院結衣様!」
黒い鎧の結衣さんが挨拶する。
そしてほかの騎士たちも紹介される。
「さぁ、まずは天童天音様と2年生騎士の練習試合です!それではまもなく試合開始です!」
天音さんが剣を抜いてたたずむ。
下級生騎士は緊張のせいか、なかなかスタートしそうにない?
「あら、怖じ気付いたのかしら?そう・・・それなら。私は剣を収めて戦うわ。」
チャキンっと剣を収めてしまった。
「おっと、なんということだー!天音様は剣を収めてしまったぞ!試合放棄かー?」
実況が続く。
「さぁ騎士の私を倒すチャンスよ?」
そして試合開始の合図がなる。
「剣さえなければ私だって!!」
下級生騎士が突進する。
すると天音さんはいつのまにか下級生騎士の体側面に移動していた。
「おっーと!?いったい何がおこったのか?」
実況の桐谷さんには何が起きたかわからないようだ。
「右足を軸に、身体を回転させてギリギリ剣を避けると同時に相手との距離をつめたみたいですね。」
私が見たまま解説する。
「ねぇあなた、体幹がずれているわ?」
天音さんはそう言うと伸ばしきった下級生の右上腕に触れると彼女は空中で一回転して地面に
叩きつけられた。
「当たらなければどうということないわ。攻撃のあと油断しているようではまだまだね。受け身はとれていたみたいだけれど、誰かこの子を保健室へ連れて行ってあげて。」
そう言うと先生が下級生を保健室へ連れて行った。
「すごい!天音様、素手でも一切ハンディキャップなし!なんだこの最強の白の実力は〜!」
桐谷さんが実況する。
「さぁ、お次は無敗の緋、東雲円香様だ!」
そして円香さんの試合が始まる。
「はぁ、んっ!やぁぁ!」
円香さんの戦いは堅実。その一言だ。
派手なことはせずピンポイントに攻めていく。
「ちゃんと脇をしめて?じゃないと胸がガラ空きよ?」
そう言うと相手騎士の鎧に一撃入れた。
「ふぅ、ありがとうございました!」
円香さんの勝利で終わった。
そして次々試合が行われる。
「さぁ、最後は無敵の黒、鳳凰院結衣様だー!」
「あの、私なんかが、この場に立てることを光栄に思います・・・。」
すると円香さんが話しかける。
「結衣、落ち着いて、あなたならやれるわ。リラックスよっ!」
そしてようやく緊張がとけたようだ。
「お待たせいたしました。鳳凰院結衣、全力でいかせていただきますね。」
そして試合が始まる。
数歩ゆっくり進み間合いをつめる。しかし結衣さんの右手は剣にかけたまま抜いていない。
そして姿勢を低くすると徐々に加速した。
相手の騎士が迎え撃つように構える。
あと少しで剣が届く間合い入ろうとしたときだった。
カンっという音がした。
「くっ・・・!・・・えっ?」
相手騎士も何が起きたかわからない顔をしている。
「すでに勝負がついている・・・?お姉様は見えましたか!?」
桐谷さんが不思議そうに言う。
「えっと、結衣さんが剣を起こして右足で踏み切ったとこまでは・・・。」
「カメラカメラ、リプレイお願い!」
するとモニタにリプレイ映像が流れる。
「なんと鳳凰院様、素早い動きで突進し素早く剣を抜いて一撃を決めていたー!!」
「低い姿勢からのあれは・・・抜刀術ですね。」
私が解説する。
「あの、ありがとうございました。」
結衣さんが挨拶する。
「え、あ、ありがとうございました・・・?」
相手でさえ状況が把握できてないようだった。そして本日の練習試合は終わった。
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