第7話聖女と騎士
そして学園に登校し、なぜか朝1番で先生に呼び出された。
「一条さんを呼んだのはこれを渡すためなの。」
先生がそう言うと銀のペンダントを差し出した。
「あの、これは?」
「これは『白薔薇のペンダント』。これが何なのかは・・・。秘密。そのほうが面白そうだし、ふふ。とにかくこれは肌見放さず持っていること。そして午後の全校集会まで決して首からは下げず、他言もしないように。」
「はぁ、そうですか。わかりました。」
私はそう言うとペンダントをしまった。
そして午後になり、体育館に全校生徒が集められた。
壇上に先生が立ち、話を始める。
「生徒の皆様ごきげんよう。本日皆様にお集まりいただいたのは他でもありません。ただいまより先日行われた聖女投票の集計結果を発表いたします。」
すると円香さんが小声で話しかける。
「いよいよだねっ。誰がなるんだろう。」
「そうですね。なんかドキドキしますね。」
そして次期聖女様の発表が行われる。
「有効票数438票。うち381票を獲得し本年度の聖女に選ばれたのは・・・『一条葵』さんです。」
「・・・・・・え〜〜っ!!??」
私は突然のことで大声をあげてしまった。
「それでは一条葵さん、壇上にあがってください。」
そして私は緊張しつつ壇上に上がる。
「一条さん、ペンダントは持っているわね?みんなに見えるように首から下げてください。」
そう言われ私はペンダントを下げた。
「ほらっ、あいさつ!」
先生が小声で私に言う。
「あの、皆様はじめまして。一条葵です。なぜ編入したばかりの私などが聖女に選ばれたのかはわかりませんが、皆様のお力になれるよう精一杯聖女としての役割を勤めさせていただきますのでよろしくお願い申し上げます。」
私が挨拶を終えると館内中から声があがる。
「きゃ〜、お姉様〜!」
「素敵ですお姉様〜!」
そして先生が代わる。
「皆様お静かに!!はしたないですよ。続いて学生会から話があるそうなので静かに聴くように!」
先生がそう言うと学生会長である天音さんが話を始める。
「皆様ごきげんよう。皆様もご存知の通り2ヶ月後にはアリエル祭が開催されます。明日から準備期間に入りますが、近隣住民にご迷惑をかけないよう、アリエル女学園の生徒としての自覚を持って行動してください。なお、私も含めてですが、正規騎士に選ばれた方々は精進し、しっかり練習に励んでください。私からは以上です。」
学生会長が話を終えると、全校集会は終わった。
今日に戻ると円香さんが話しかけてきた。
「葵ちゃん、聖女様就任おめでとうっ!お・ね・え・さ・まっ!」
「もう、円香さんやめてくださいっ!円香さんは普通に呼んでください。天音さんもですよ?」
「わかったわ。葵。」
天音さんが返事をする。
教室まで戻る間、すれ違う生徒たちみんなから「おめでとうございますお姉様。」と言われた。
「ところで円香さんに聞きたいことがあったんですけど、アリエル祭って何ですか?文化祭みたいものですか?でも騎士がどうって言ってましたね。」
私はさっき天音さんが言ってたことを円香さんに尋ねる。
「そうね、基本的には文化祭みたいなものね。でもアリエル祭は普通とは違うところもあって、聖女様をかけて『騎士』として選ばれた子同士が剣で戦うイベントなの。」
「えっ!?剣って危なくないんですか!?」
「剣っていっても模造だからね。ちゃんと防具もつけるし、防具以外は狙ってはいけないルールだし。今年の騎士の予選で勝って選ばれてるのは身近なとこだと、私と天音さんと結衣ね。私、これでも天音さんと結衣同様優勝候補って言われてるのよ?」
話によると、敷地内にある森の中で騎士同士が決闘をし、聖女様をつかまえたものはアリエル祭の最後に行われるダンスパーティで聖女様と踊る権利を得られるというものだった。
すると天音さんが口を開く。
「明日、早速練習試合があるから見てみるといいわ。私達の相手は騎士予選で負けた騎士候補生たちだけれど。」
「ちなみに去年の優勝は天音さんだったの。去年は私は天音さんに勝てなかったけど今年は負けないわ!葵ちゃん、アリエル祭は私が迎えに行くから待っててよね?」
「まぁ、私の立場上特定の誰かを応援するわけにはいきませんからお二人とも頑張ってくださいね。」
天音さんは私と一緒に小さな頃から武術を習っているから優勝候補なのもうなづける。
放課後、私はこのアリエル祭のことについて調べようと学園内の図書館に向かった。
中に入ると受付には遥さんがちょこんと座っていた。
「あ、お姉様っ!図書館に用事なのです?」
「ええ、アリエル祭のことについて調べたくて。遥さんは図書委員なんですね。」
「はい、そうなのです!アリエル祭ですね、だったら・・・」
遥さんがそう言うと本棚に向かい、本を取り出す。
「この資料に今までのことや詳細が書いてあるのです。」
そして資料を見るとどうやらかなり昔から騎士の戦いは行われてるようだった。
今は鎧も軽くて動きやすい強化プラスチックでできているが昔は金属だったらしい。
お互いが剣を抜いたときが決闘の合図。
一度剣を抜いたら決着がつくまで逃げることは許されない。
鎧に一撃いれたら勝利。
地面に手をついたら反則負け。
聖女は最初、聖域と呼ばれる場所からスタートし、騎士たちに見つからないように最後の一人になるまで逃げなければならない。
最後に残った騎士は聖女を見つけたら手の甲にキスをする。
といった内容が書かれていた。
資料を読み終わり、帰ろうと入口に向かう。
すると一部女学園に似つかわしくない書籍のコーナーがあった。
『月刊 銃の世界』
『ライフル銃のすべて』
など銃火器についての本が並んでいた。もともと男である私は興味があり手にとってしまう。
少し立ち読みしていると遥さんが話かけてきた。
「お姉様っ!!もしかして銃に興味があるのです?」
「あ、いえ。これは・・・。」
こんな本読んでたら怪しまれてしまう。
「あ、K98Kですかっ?いいですよね〜、この木の感じがたまりませんです!」
「たしかナチス時代のドイツ製のライフルですね 私はやっぱり定番どころですがAK-47が好きですかね。」
好きな話なのでつい乗ってしまった。
「お姉様・・・。はるか、嬉しいです。こんな話をしてくれたのはお姉様が生まれて初めてなのです!こんな、銃やゲームが好きな女の子なんて変な女の子ですよね?」
「そんなことはありませんよ。人の趣味は人それぞれですから。それにそうおっしゃるなら私だって変な女の子ですよ?だから私達変な女の子同士仲間ですっ!」
すると遥さんが私に抱きついてきた。
「お姉様・・・大好きなのですっ!」
やっぱり女の子にこれだけ近寄られるといい匂いにドキドキしてしまう。
(ダメダメ、今の私は女の子なんだから!!)
興奮を抑えながら帰路についた。
(遥)
(お姉様・・・。はるかもっとお姉様に触れていたいのです・・・。なんなのです?この気持ちは?女の子同士なのにこんな気持ちおかしいです・・・。)
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