第3話みんなでお買い物
授業を終えると待ち合わせの校門に向かう。
するとすでに遥さんが待っていた。
「あっ、お姉様方。お疲れ様なのです。葵お姉様、お弁当ありがとうございましたっ!すごい美味しかったのです。」
「喜んでいただけたら良かったです。さぁ、参りましょうか。」
私達は学園を出ると歩いて近くにあるアウトレットモールに到着した。
「これがショッピングモールというところなのね。葵、色んな店があるわっ!」
高級ブランド店やデパートにしか行ったことのない天音さんは初めてのアウトレットモールに大はしゃぎだ。こうして歩いてでかけることもまずない。
「それで、葵さんは何をお買い求めになるんですか?」
結衣が私に話しかける。
「はい、調理器具を少々。あとは洋服ですね。」
「そうなんですね。あまり大勢で回ってもご迷惑でしょうからしばらく別行動といたしましょうか。」
「はい、私は天音さんと見て回りますので、2時間後にまたここで待ち合わせでよろしいでしょうか?」
「わかりました。では私達もいきましょうか。」
そしてそれぞれ各自が見たい店をまわることにした。
調理器具を買い揃え、次は洋服店に向かう。
「ねぇ、葵。この洋服の値段は冗談かしら?コーヒー1杯の値段と変わらないわ。」
天音さんが手にとっているのは半額になっている1980円のワンピースだ。
「いえ、天音さん。ここではこれが普通なんですよ。アウトレットですから。」
「ふ〜ん、そうなのね。あ、このシャツあなたに似合いそうよ。」
「ダメです、今日は女物の服を買いにきたんですから。」
女物の服を制服しかもっていないので買いに来たのだ。
そしてしばらくまわり、食料品も買い込んだ。
「ねぇ、葵。」
「今度はどうしました?天音さん。」
「私にも荷物を持たせてちょうだい。あなた持ちすぎよ。」
確かに両手にはたくさんの袋が下がっていた。
「いえ、天音さんにもたせるわけには。」
「あなたが全部持っていたらみんなが変に思うわ。あなたは今は女の子なのだから。」
「わかりました。ではこの袋をお願いできますか?」
私はできるだけ軽い、服を買った袋を手渡す。
そして天音さんと二人で待ち合わせ場所に向かっている最中、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「あの、ですからはるかさっきから謝ってるのです。」
「いやいや、だからお詫びに俺達に付き合えって言ってるんだよ。」
見ると遥さんがいかにもガラの悪そうな二人組に絡まれていた。
「遥さん、何かあったんですか?」
私は遥さんに駆け寄り話を聞く。
「あの、はるか不注意でこの人たちにぶつかってしまって。」
「そうなんですか。私の友人がご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございませんでした。」
ここは穏便に私も頭を下げる。
「俺達ぶつかられてすげー痛かったんだよね。だから詫びに俺達と遊んでくれって話だよ!」
男が遥さんの腕をつかむ。
「やめてくださいなのっ!」
遥さんが男の手を払いのける。
「いいからこっちこいって言ってるだろ。」
すると男の手を天音さんが掴む。
「私の友人に汚い手で触れないでもらえるかしら。皆本さん、あなたはあちらへ。」
遥さんが駆け足で離れる。
「んだと、このアマ。女だと思って調子に乗ってんじゃねえぞ。」
そして男の拳が天音さんに向く。私は天音さんの前に割って入りその腕をとり、地面に崩し落とした。
「いた、いたたたた。お、折れるっ!悪かった!離してくれ!!」
男が必死に叫んだ。
そして手を離すともう一人の男が肩にかついで逃げていった。
すると遥さんが駆け寄り私に抱きついてくる。
「う〜〜っ。葵お姉様〜っ!はるか、、怖かったです!ホントにありがとうございます。天音お姉様もありがとうなのです!」
私は泣いている遥さんの頭を撫でながら話しかける。
「遥さんが無事で良かったです。もう大丈夫ですからね。私達がついてますから安心してください。」
「ふぇぇ、葵お姉様〜っ!」
少しすると遥が泣きやんだ。
「すみませんなのです。はるかったらみっともない姿を・・・。それにしても葵お姉様、さっきのすごかったのです!男の人を相手に。」
「あー、さっきのは合気道の技で、二教といいます。力はいらないので相手が男性でも関係ないですよ?それより天音さん!あんな危ない真似はやめてください。」
「だって、皆本さんが危なかったのだもの。同じ寮生の友人を助けるのは当たり前でしょう。素人二人くらいの相手なら私でも倒せるわよ。それにあなたもいるのだから大丈夫でしょう。」
「私だって万能じゃないんですから今後は控えてくださいね?」
「・・・わかったわ。ごめんなさい。」
そして待ち合わせ場所に行き、みんなで帰宅するのだった。
その日の夕食時、遥さんがみんなに今日のことを話していた。
「もう、ほんっとにカッコ良かったのです!葵お姉様があっという間に男の人を地面に落としてしまったのですよ。」
「ほへぇ、それは私も見たかったわね。」
円香さんが答える。
「もうその話はいいですから。恥ずかしいですから。」
私が話に割って入る。
「う〜、葵お姉様がそうおっしゃるなら。」
なんとか私の話から話題をそらした。
そして、次の日の朝。登校する私達に視線が集まり、みんなひそひそ話をしている。
「あの方ですわ。絡まれている後輩を助けるため殿方二人を相手に臆することなく立ち向かい見事撃退なさったという・・・。」
「ええ、一条葵様とおっしゃるらしいですわ。なんでも編入試験を満点で合格して、スポーツも万能で料理はプロ並みというお話です。」
どうやら私の噂が広まっていたようだ。
その後、教室で話をきくと昨日の場に同じ学園の生徒が居合わせていて一部始終を見られていたらしい。
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