第4話聖女投票?

 そして授業後のホームルームで先生がいつものように話を始める。

「え〜、それで来週はいよいよ聖女投票があります。みなさん、よく考えて投票を行うように。じゃ、今日は以上!」

そう言うと先生は教室を出ていった。

「あの、円香さん。聖女投票ってなんですか?」

「あ、そっか。葵ちゃんは編入生だから知らないんだっけ。この学園では1年に一度今の時期に私達最上級生の中から聖女様を選ぶ選挙が行われるの。聖女様はこの学園の代表というか象徴?みたいに扱われて、全校生徒から『お姉様』と慕われるようになるわ。下級生が上級生を呼ぶときには名前にお姉様をつけるんだけど、呼称のない『お姉様』は聖女様だけなの。」

「そうなんですかぁ。今年は誰が選ばれるか楽しみですね〜。最上級生なら誰に投票してもいいんですか?」

「うん、基本的に自由投票だから。でもたぶん今年は天音さんで決まりね。学生会長で、学園で一番の有名人だし。」

「そうですね。私も天音さんに投票します。」

すると天音さんがこちらにきた。

「私の名前が聞こえたのだけど何の話をしているの?」

「ええ、聖女投票には天音さんに投票しようというお話を。」

「そうなの。まぁ投票は自由なのだから私は何も言わないわ。でも私は葵がふさわしいと思うわ。」

すると円香さんが口を開く。

「あ〜っ!葵ちゃんって選択肢もあったわねっ。」

「いやいやいや、私なんてダメですよっ。しかも編入したばかりですし。」

(そもそも私男なんだし・・・。)

「編入したばかりとかは関係ないわ。みんなが聖女様にふさわしいと思ったのならその人が聖女様よ。」


 そして週末の休みになり、私は特にすることもないので寮内の掃除をしていた。

「あ〜、葵お姉様っ。お掃除してくれていたんですか?葵お姉様がそんなことしなくても共用スペースの掃除は平日の昼間に毎日掃除業者が入ってるのですよ?」

遥さんが買い物から帰ってきたようだ。

「ええ、わかってるんですが天音さんは勉強中ですし、特にすることもないですので。遥さんはお買いものですか?」

「はいっ。今日は新作の発売日でしたから。」

「新作?」

「ゲームなのですっ。モンスター狩人ってゲームなんですけど。」

そう言うと遥さんが袋からゲームソフトを取り出す。

「わー、モンカリですか〜っ。ちょっと拝見してもいいですか?新作がでたんですね〜。」

「え?葵お姉様ゲームとかされるのです!?」

私の言葉に遥さんの様子が一変した。

「ええ、まぁ。以前天音さんの家にいた頃は時々してましたね。」

(まぁ私も男の子なのでゲームは好きな方だ。)

「ホントなのですかっ!?あ、あのあのっ。良かったらはるかの部屋にきませんかっ?」

「よろしいんですか?まぁ私は暇なので構いませんよ。」

そして掃除道具を片付け、遥さんの部屋に向かった。


 部屋の中はさすが女の子って感じの部屋で、本棚には漫画やゲームソフトがたくさん並んでいた。

「葵お姉様、あのあのっ、良かったら一緒にこれ、やりませんかっ?」

遥さんが取り出したのは有名なパズルゲームだった。

しばらく遥さんと二人でゲームに熱中する。

「葵お姉様、さすがなのです!お強いです。」

「いえ、遥さんもなかなかの腕前ですよ。」

そしてゲームを終えると遥さんが口を開く。

「葵お姉様、はるかすごい嬉しいのです。まわりにゲームをしてくれる友人なんて今まで全くいなかったので感動なのですっ!葵お姉様が学園に編入してきてくれて、はるかのことを助けてくれて、一緒に遊んでくれて、ホントにありがとうなのです!」

「気になさらないでください。私も楽しいし、遥さんみたいな可愛い年下の友人ができたことホントに嬉しく思ってますよ。これからも仲良くしてくださいね。」

「はいっ、葵お姉様っ!」

編入して初めての休日を可愛らしい後輩と遊んでなかなか充実した一日だった。


 翌日、1時間目の授業が始まる。

「え〜、突然ですけど、今から小テストを行います。」

あちらこちらから不満の声があがる。

「ちゃんと毎日授業を聞いていれば解けるテストですから頑張ってください。はい、筆記用具以外はしまってください!」

そしてテストが始まる。

私はとりあえず黙々と問題を解いていき、解き終わるとかなり時間が余ってしまった。

何気なく隣をみると円香さんが頭を抱えていた。

テストが終わり、先生が採点する。

「はい、みなさんお疲れ様でした。満点は一条さんだけですか。それと、東雲さん。あなたは赤点なのでよく復習しておくこと。いいですね?」

先生が円香さんに向かって話しかける。

「は〜い。」

円香さんが落ち込んだ様子で返答する。


 そしてチャイムがなった。

隣をみるとまだ円香さんが落ち込んでいた。

「あの、円香さん。大丈夫ですか?もしよろしければ私が勉強をお教えいたしましょうか?」

すると円香さんの表情が明るくなった。

「ほへ?ホントに!?いいのっ?じゃあお願いしちゃおうかな。」

「はい、私で良ければ喜んで。私達の部屋で一緒にお勉強いたしましょう。」

そして今日からしばらく円香さんの勉強をみることになった。

放課後、私達の部屋に円香さんがやってきた。

「へぇ、ここが葵ちゃんと天音さんの部屋なんだぁ。すごい綺麗にしてあるのね。」

「きちんと片付けないと葵がうるさいのよ。私はそこらへんに取りたいものがあるほうが便利だと思うのだけど。」

天音さんが答える。

「だからってさすがに下着とかをその辺に放置するのはどうかと思いますよ?」

私が天音さんに話しかける。

「ははは・・・。相部屋も大変そうね・・・。」

そして勉強を始める。

「・・・それで、数列{Αn}と{Bn}が収束して・・・になるんです。」

「あ〜、そうか。なるほど〜。葵ちゃんったら教え方がすごいわかりやすいわっ。」

「いえ、円香さんも一度理解してしまえばこれだけできるんですね。この調子ならいい点が取れるようになると思いますよ。頭の回転は素晴らしいと思いますので自信持ってください。」

「う、うん。ありがとう。頑張るからねっ!」

円香さんが元気になってくれて嬉しくなるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る