第2話一難去ってまた一難

 部屋に戻り、天音さんは疲れたのか早々と入浴を済ませ眠ってしまった。

そして時刻は午後11時30分。そろそろ入浴しても大丈夫だろう。

そして浴室に行き、服を脱ぐ。

「念の為タオルは巻いておこう。」

そしてバスタオルを体に巻きつけ浴室の戸を開く。

開けると今まさに出ようとしていた結衣さんが全裸で目の前にいた。

「ゆ、ゆ、結衣さんっ!?」

「あら葵さんも今からお風呂ですか?ならせっかくなので私ももう一度入りましょうか。」

「いえっ!お構いなくっ!わ、私ちょっと今日はおなかが痛くてシャワーだけなんですっ!」

「そうなんですか。でしたら浴槽には入れませんね。残念です。では私は上がりますね。おやすみなさい葵さん。」

そう言うと結衣さんが出ていった。

(あ、あぶなかった・・・。次からは中の様子を確かめてからにしないと。し、しかし初めて女性の裸をモロに見てしまった・・・。)

そしてそそくさと入浴を済ませ部屋に戻った。


 翌朝、私は全員分の朝食とお弁当を用意した。

「あれっ?なんかいいにおいがします!」

遙さんが起きてきたようだ。

「おはようございます遙さん。ちょうど良かったです。朝食の支度ができましたのでみなさんを呼んできていただけませんか?」

「はいっ!はるかに任せてください葵お姉様!」

遥がとてててと駆けて呼びに行った。

そして円香さんがやってくる。

「うわっ!ホントに朝ごはんができてる!いつもトーストだけなのにすごい!あ、おはよう葵ちゃん。まさか朝からわざわざみんなの朝ごはんを作ってくれたの?」

「おはよう御座います円香さん。はい、二人分も五人分もあまりかわりませんので。ご迷惑でしたでしょうか?」

「いやいや、とんでもないっ!すごい助かる!ありがとね葵ちゃん。」

そして結衣さんもやってきた。

「葵さん、おはようございます。朝早くからお料理ありがとうございます。とても嬉しいです。」

「喜んでいただけて何よりです。」

すると遥さんが戻ってきた。

「葵お姉様!天音お姉様が呼んでも返事がありませんなのですっ!」

「あ、私が行きますから大丈夫です。ありがとうございました遥さん。」

そして部屋に戻ると天音さんはまだ寝ていた。

「天音さんっ!起きてください!みなさん待ってるんですからっ!」

天音さんの布団をはぎ取る。

「う〜、葵寒いわ。布団を返してちょうだい。」

「ダメです!朝食食べる時間がなくなります!」

そしてしぶしぶ天音さんが起床した。いつものように私が天音さんの寝癖を直し髪をセットしリビングへ向かう。

「みなさん、ごきげんよう。待たせて悪かったわ。さぁいただきましょう。」

寝起きが悪い天音さんもみんなの前では立派なお嬢様だ。

そして朝食を終え、みんなにお弁当を手渡す。

「なに、お弁当まで作ってくれたのっ?ありがとう〜っ!葵ちゃん大好きっ!」

「まぁわざわざお弁当ありがとうございます。」

「葵お姉様ありがとうございますっ!大事に食べますなの。」

3人とも喜んでくれたみたいだ。

そして私がみんなに話しかける。

「あの、色々と買い揃えたいのですがこのあたりに大きなお店などありませんか?」

「あ〜、それなら近くにアウトレットモールがあるよっ!食料品から衣料品小物までなんでもござれだよ。放課後案内したげるよ〜。」

円香さんが答えると結衣さんが口を開く。

「でしたら私もご一緒してもよろしいでしょうか?」

「はいっ。全然大丈夫です!」

「はるかも葵お姉様と行きたいですっ。」

遥さんが叫んだ。

「もちろん構いませんよ。遥さんも一緒に行きましょうね。」

放課後に校門で待ち合わせをして私達は学園へ向かった。


 2時間目が終わった頃、ついに恐れていた事態に遭遇した。

(どうしよう、トイレに行きたくなった・・・。さすがに男子トイレに入るわけに行かないし、そもそも職員用しか男子トイレは存在しない。)

そわそわしていたら天音さんがやってきて小声で話しかけてきた。

「葵、もしかしてあなたお手洗いに行きたいんじゃない?」

「はい、実は・・・。でもなかなか勇気が出なくて。」

「しかたないわね。私が一緒に行ってあげるからいらっしゃい。」

「すみません・・・。」

そして二人でトイレに行き、隣通しの個室に入った。

「葵、いい?あなた今は女の子なのだから音にも気をつけて。立ったまましたら絶対ダメよ。必ず座って用を足すのよ。」

天音さんが壁越しに小声で話しかけてきた。

「は、はい。わかりました。」

そしてようやく用を足した。

「一応トイレットペーパーを使うようにしなさい。変に思われるから。」

緊張しっぱなしでやっとトイレを終え、教室に戻った。

授業が終わり昼休みになる。天音さんがお弁当を持ってやってきた。

「葵、一緒に食べましょう。」

すると円香さんも机をひっつけてお弁当を取り出す。

みんなでお弁当を開けると、近くの女子が話しかけてきた。

「あら、いつも学食の円香さんがお弁当なんて珍しいですわね。」

「うんっ!実は葵ちゃんが作ってくれたんだ。」

「まぁ、一条さんが!?だからみなさん同じおかずなんですのね。寮生の方が羨ましいですわ。」

「すごく美味しいんだよ。良かったら1つ食べてみて?」 

円香さんが女子におかずを渡す。

「まぁっ!まるで料亭の味ですわっ!一条さん素晴らしい腕前ですのね。」

あまりに褒められすぎて体がむず痒くなる感じだった。


 そして午後の授業の前に、次なる難関が待ち構えていた。次の授業は体育だ。体操服はジャージなので大丈夫だが問題なのは着替えだ。みんなと一緒に着替えるわけにはいかない。

すると天音さんが小声で話しかける。

「あなたはトイレにでもこもって時間ギリギリで更衣室にいきなさい。私がごまかしておくから。」

そう言うと天音さんは更衣室に向かった。私はトイレに入りしばらく時間をつぶした。

そして始業五分前になったところで更衣室に入る。さすがにもう誰もいないだろうと安心してドアを開けるとそこには下着姿の円香さんが着替えをしている最中だった。

「円香さんっ!?どうしてっ?」

「どうしてって、ちょっと委員会で遅くなっちゃって。葵ちゃんも早く着替えたほうがいいわよ?」

もう覚悟を決めて少し離れたロッカーを開ける。そして円香さんから見えない角度でさっとズボンを着替えた。

そしてブラウスを脱いだその時後ろから手が伸びてきて私の胸を揉んだ。

「わーっ、葵ちゃんってば結構あるんだね〜。」

「きゃっ!!」

思わず飛び退いた。

「ゴメンゴメンつい。」

そして慌てて体操服を着た。作り物だとはバレなかったようだ。

「さぁ、急ぐよっ!」

駆け足で体育館に向かった。


 体育館に到着するとすぐに授業が始まった。

「はい、じゃあ今日は先週の続きで試合形式でやるわよ。一条さんはて天童さんのチームに入って!」

先生が説明する。今日はバスケットボールの試合をするらしい。

相手は円香さんと結衣さんのチームだ。体育は2クラス合同で行う。

「負けないわよっ!葵ちゃん、本気でかかってきなさい!」

円香さんが叫ぶ。すると天音さんが話しかけてきた。

「葵、東雲さんたちにあなたの力見せてあげなさい。」

そして試合が始まる。

私は天音さんの言うとおり全力でボールを奪うと素早くドリブルしながら駆け抜けゴールめがけてレイアップシュートを決める。

「あれっ?」

館内が静まり返る。

数秒の沈黙ののち一気にみんなが騒ぎ出した。

「キャー!今の見ましたかっ!?目にも止まらぬ速さでしたわ!!」

すると円香さんが話しかけてきた。

「葵ちゃん、あなたすごいのね。私達とは次元が違うわ。バスケ経験でもあるの?」

「いえ、少し習った程度なんですが・・・。」

その後の試合は私達の圧勝だった。

体育が終わり、またトイレにこもって時間ギリギリで着替えを済ます。

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