★第八章★ 永遠の箒星(4)
「邪魔だぜ! どきなっ!」
「もう――これで終わりにするっ!」
群れる魔獣を刃が切り刻み、砲撃が爆散させる。
立ちはだかる障害以外には目もくれず、多少の負傷は構うことなく二人は進む。進み続ける――止まることは、全ての終わりだからだ。
そしてついに――二人は倒すべき目標を視界に捉える。
「ここまで来るとは、人形のくせに大したものよ……!! よかろう、最期に――最高のもてなしをしてくれる……!」
「ならわたしたちは最も望むものをもらう! 未来と――」
「お前の首だぜ――ハレイ!」
ミーティアが刃を構えると共に、シホが魔法陣を展開。砲撃を撃ち放つ――!
――――。
「えっ――」
放たれた砲弾が――呑まれて、消える。
高速で進むシホの目の前に現れた暗黒の球体。それは光をも逃さぬ、深淵――
シホの視界を黒く塗りつぶし――
「! 避けろ……シホーーーーっ!!」
そして――激しい衝撃。
それは一瞬のことだったが――シホにはスローモーションのように、永い――永い時に感じた。
眼前に迫っていた暗闇はそこにはなく――
隣には、ミーティアがいた。
「ミー……ティア、どう……して……」
もたれかかるようなミーティアの腰から先は――
「ははっ……。なんでだろうな……ほんっとガキの頃から、放っとけないんだよな……」
暗黒に喰われ――
「不思議なヤツだよ、お前ってさ……」
もう――無かった。
「い……嫌ぁぁぁぁッ……! ミーティアっ……!!」
シホが手を伸ばすが――ミーティアは強く、シホの背中を押した。
「――止まるな。行って――宇宙を救ってみせろ……シホ……!!」
そう言ってミーティアが笑い――闇に――消えた。
「おやおや……順番が狂ってしまいましたね。――まあ、道すがら手ごろな惑星で作ったモノですから制御が鈍いのは仕方なしですか」
ミーティアを呑みこみ、消滅していく小型ブラックホールを一瞥しながら、ハレイは感慨もなく言った。そこに――
「ハレイ……! よくも、よくもよくもよくもよくもミーティアをッ……!! 許さない許さない許さない――許さないッ……!!」
グリップを握りしめた手から血を垂らしながらシホが疾走し、ついにハレイの前へとたどり着く。慣性に身を任せシホが法器から飛び降り――
しばし――至近で視線が交差する。
「シホ……! 貴様――!」
ハレイの眉間に銃口を構え――全身の魔力を込める!
魔法陣が閃光を放ち、砲弾と化した魔力がハレイの頭蓋へと迫るが――
「……!!」
ハレイが上体を反らした。砲撃は額を掠め、僅かに血を散らし――
「――貴様の……負けだ」
ハレイが口を歪める。そして――
「! がっ……がは、あああっ…………!!」
ハレイと一体化した大地から白く鋭利な槍が伸び――シホの胸を貫いた。
衝撃で『失われし魔術書』が放り出され――上体を反らしたシホの口から鮮血が舞った。
それは赤い球体の雫となり、無重力を漂い――ハレイの頬に化粧を施す。
「ふふ――まだ少し息があるみたいね。いいわ、最期に――願いを叶えてあげる」
宙に舞った『失われし魔術書』を手に収め、ハレイは残酷に笑うと、シホの髪を掴んで吐息をかける。
シホの胸元に光が現れ――ハレイは手を離す。
蒼星の僅かな重力に引かれ、光を追従するようにシホが落ちていく。
「――さあ、あなたは最期にどんな夢を見せてくれるのかしら?」
…………
力なく堕ちていく光に、メテオラが叫ぶ。
「そんナ……!! シホ、ミーティア……!」
「……どうやら勝負あり、のようだネ。メテオラ。これでキミは――」
クエイザがメテオラに向き直るが――
メテオラは目の前で起こる光景を呆然と見つめている。
「――! それは一体……」
死闘を見守る最中、メテオラが握りしめていた金属。
一等星級の証、白金の階級章に――地表から湧き出した黒い魔力が集う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます